夜が来たら必ず朝が来るもので、私はいつもどおり学校へ向かった。 いつもどおりに家を出たのだが、少し早く着いたみたいで、いつもなら先に着いて話しかけてくる友達がいなかった。 暇になった私は、カメラをいじり始めた。 すると斜め前にいるいわゆるイケイケなグループの人たちの会話が聞こえてきた。 「やっぱり黄瀬君マジでカッコイい!!」 「実物が見れるなんて私達も本当についてるよねー」 要するに、雑誌に載ってるモデルさんがカッコ良くて、悶絶してるわけか。 それでいて実物を見ることが出来たのかな、嬉しそうにしてる。 これが人の心底からの喜びなのかな。 それが少なくとも出来るそのモデルさんに少し嫉妬する。 私もそういう人の心の底からの喜んだ顔を撮りたいな。 小さな欲を考えていると昨日のあの目を思い出した。 「逆ギレっスか?」 昨日は気が少し動転してて気づくのに遅れたけど、彼はたぶん同学年だ。 背が高く少し大人びていたが、上履きの色が私と同じだった。 でも同学年までは分かっても、クラスまでは分からない。 (彼はいったい…誰なんだろうか?) 「なまえおはよー」 「…あ、うん。おはよー」 そんな小さな疑問は友人の挨拶によってかき消されて沈んでいった。 朝の疑問を思い出したのはお昼を食べ終わって友人が家から持ってきたという雑誌を開いた時だった。 「あ、また特集されてるよ、黄瀬君。」 今どきだの流行だのに疎い私は、何のことだかわからなくて、そのまま先ほど自販機で買ったパックの苺牛乳に手をのばす。 するとチラリと友人の雑誌の表紙が目についた。 「あっその人…」 「ん?何、なまえ、もしかしてこの表紙の人の事気になったの?!」 いつもはこの話題についてはあさっての方向な私が、つい言葉が発せられる程、雑誌に興味を持ったのかと驚いたのか、意外だとかありえないだといった言葉が私に告げられた。 当の私はただ単に表紙の人が昨日の彼にそっくりで驚いてしまっただけだったのだが… 「…この人誰だか分かる?」 とりあえず、このような眩しいくらいの笑顔で写真に写っているのは、昨日のあの人ではないことにして、今一番の疑問を投げかけると友人はあっさりとこう答えた。 "分かるも何もこの学校の生徒で同じ学年だよ" ――と。 運命は皮肉だ . |