俺としても驚いていた。なぜ昨日みよじを抱きしめてしまったのか。衝動的だったとはいえ健全な高校生がしていいわけ無い。呆れられてしまっただろうか。ただあのまま帰したくなかったとはいえ、何とも思ってない男からの抱擁なんて嫌に決まっているな。謝らなくては。 でもどう謝る? ここは高尾を使うか?いや、そういうのはきちんとしておきたい。だが、アイツはとりあってくれるだろうか? キモイ男とは関わりたくはないと思ってたりするのだろうか。しかし、せめて謝りたい。悪いのは俺だ。 朝、蟹座は一位だった。亀の置物を持ち歩くと運気上昇と言っていた。運も味方なのだ、これでダメだったら7月入ってからのことは全部忘れてしまおう。 そんな覚悟で学校に来てみれば誰もいなく、その代わり俺と同時くらいに高尾が来た。 「あれ、真ちゃん今日は早いねー。 で、どうだったのよ?みよじちゃんとは?」 「お前には関係ないのだよ。高尾。」 「あれれ?真ちゃんちょっとご機嫌ななめ?」 「うるさい黙るのだよ。」 「ふ〜ん、ま、いいけど。」 それだけ言うと高尾は荷物を置いて違うクラスに行くのかもう一度入口の方に向かった。 かと思ったらクルリと向きを変えて、 「真ちゃん、そんなに眉間にしわよってたら、もっと嫌われちゃうぜ?」 とだけ言ってまたクルリと向きを変えて別のクラスに行ってしまった。 「本当にムカつくやつだ」 それから数十分後にみよじが来て、俺はまだ亀の手入れをしていて、亀の甲羅の隅々まで終わったらにしようと考えていたので、みよじが来たときはちょっと焦った。亀の甲羅の隅々までやったら気持ちの整理がつくかと思ったけど、つかなかった。とりあえず、落ち着いた様子で昼休みに話が出来るかとみよじを誘った。相手は少し動揺して目がキョロキョロしていたが、OKがもらえたので、また亀に手をかける。緊張していたのか手には大量の汗をかいていた。 だめだ、昼休みまでに気持ちの整理をしなければならない。もともとあのことがきっかけでやっと友達といっていいのか分からんがそういう雰囲気にはなれたのだよ。 今更本当は好きなのだよ。って言ったら離れるだろう。 友達のまま、このままでいいのに、この七月の出来事が全部消えるのか?それは嫌だ。だったらいっそのこと… ふと外を眺めると空が真っ青で俺の心とは正反対に澄んでいた。 空の色、俺の心 (今しんちゃんなんか悟ってたでしょ?) (なんでもないのだよ) (ただ俺は意気地なしなだけなのだよ) |