外はにわか雨だったのか、帰る頃にはすっかり晴れて、お月様まで見える。 あのあと緑間君が私を家まで送ってくれるということになった。 別に一人で帰れるからいいのだが、せっかく緑間君に誘ってもらったので素直に甘えてみることにした。 しばらくは会話などなくて気まずい沈黙が私たちを包んだが、彼がちゃんと歩幅を合わせて歩いてくれていたり、自ら道路側にまわったりと意外と紳士的な対応で驚いた。 「緑間君って見た目、我が儘で唯我独尊って感じだよねー」 「いきなりなんなのだよ。」 「あぁ、別に貶そうとか思ってないよ。いや、ほら、そういうところ見ると我が儘とか唯我独尊ですとか考えられないなーってオモイマシテ…」 一瞬メガネ越しに鋭い眼差しを感じ今さっき思ったことを言う。 「そういう…ところとは…?」 「うん。私に歩幅合わせてくれたり、自分から道路側にまわったり…そんなところ。」 「それは男として当然なのだよ。」 「そう..だね。でもなんか嬉しくてさ、私そんなこと一度もなかったから。」 「お前は女か…?」 「女ですが?………クスッ」 緑間君としゃべっていると面白い。時がたつのも忘れるとはこの事だ。 「なぜ笑う。」 「なんでもないよ。」 でもそんな時間も終わりになる。いつもは長く退屈な帰り道なのに、こういう時だけ短く楽しい帰り道になる。 ましてや好きな男の子がそばにいる。って好きじゃないよ。何言ってんの私!きっとあの友人Aに感化されたんだわ、きっと。 それでも別れは寂しく、名残惜しい。 かと言って、いつまでもぐずっちゃダメだよね。夜遅いし…誕生日なのに、送ってもらっちゃって…あそうだった、緑間君、今日、誕生日なんだよね。 「ではでは、ここなので。」 「あぁ。」 「あと、ここまでありがとう。」 「まぁ、一応お前は女だからな。」 「クスッ…うん。あ、それと誕生日なのにごめんね。」 「大丈夫だ。」 「あ、えっと…その、じゃあね」 作り笑いをしてしまった。ただ家に帰るだけなのに緑間君との時間と別れるのが嫌になって。そんな幼稚な考えを悟られないように作ってしまった。 それから私は背を向けて家と向かい合わせになると同時に足音が聞こえた。即座に彼が帰ったのだと察する。そこで私も門に手を伸ばす。するといきなり後ろから抱きしめられた。 「今日は、俺の誕生日なのだよ…。年に一度の…誕生日、なのだよ……。」 そう言って私より頭何個分か分からないくらい大きい彼は今日年を重ねたせいか、いつもより少し変わっていた。 大人びた16歳 (私を包む彼の手が、) (熱いのは、) (どうして?) . |