みよじ なまえを初めて知ったのは高校入学式の日だった。 毎年、代表挨拶というものはその年の入試時の最優秀のやつがやるもので、今年もそうだったらしい。 「続きまして、新入生代表挨拶。新入生代表、みよじ なまえ。」 「はい。」 俺の7つ間を空けて右横からした声は非常に凛としていたのを今でも覚えている。7つというのも、俺は紫原くらいではないが他の連中と並ぶと高い方だったので数えるのには容易だったから的確な数が分かったのだ。 そうこうしているうちに、式が終わり教室に戻ると、席は決まったように出席番号順で全員が席に着く。俺はおは朝が一位ということもあり、一番後ろという良い席になった。こうなると隣の人達が誰か気になるもので見渡してみる。 右隣には知らない男が前にいる男とぺちゃくちゃ話してて、明るそうなヤツだった。 そして左隣を見ると、先ほど新入生代表挨拶をしていた、みよじが配られたプリントに目を通していた。 それからみよじという女は中学の時の友人ともう一人との三人でいることが多く、休み時間のほとんどはみよじの机や他の二人のどちらかの机の周りに固まっていた。 こう考えればみよじを気にし始めたのはいつか分からないが、それを決定打となったのは6月のある雨の日だった。 その日、部活が終わった俺は傘が盗まれた事に気付き、どうしたものかと悩んでいた。確かにビニル傘で名前を書くのを忘れていたが、おは朝ではまぁまぁな順位だった。しかもラッキーアイテムである、この羊のぬいぐるみで修正しているはずだ。なのに、傘を盗まれるとはまだ人事が尽くしきれていないとでもいうのか? そう困っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。 「えっと、緑間君…だよね?どうしたの?こんなところで突っ立って…」 声がした方に顔を向けると相手がみよじであることに気付いたのと、自分の名前を知ってる事に驚く。 「あ、もしかして傘盗まれたとか?」 驚いたのも束の間で、鋭いその言葉に頷くとどこから取り出したのか、みよじは折りたたみ傘を俺に差し出す。 「明日来たときに下駄箱にでも入れといてくれればいいからさ!あ、番号は君の7つ前ね!んじゃ」 そう嵐のようにさったみよじが最後、俺に笑った顔が心臓部の鼓動を速まらせた。 君と俺の心臓 (なんとなくから) (どうしようもなくに) (変わった瞬間だった。) . |