「あれ?俺のタオルがないんだけど…」


この物語は伊月のこの一言から始まった…。


「は?タオルなんざ、すでにバックにしまったんじゃねーの?」

「それが、バックにもないんだよ…ほら。」

そういって伊月は俺に自分のエナメルバックの中を見せてくる。
どうせ奥の方にでも…

あれ?本当だ…ない…


「マジかよ…あ、でも、間違えて誰かが持って行った可能性が…」

「それはないよ日向。」

?なんでそう言い切れるんだ?

「だって、俺が部室に日向と来たときは持ってきたし、それに、部室には日向と俺しかいなかったじゃん!」

…………おい!
その話の流れからして俺が盗んだみたいじゃねぇか!?

「俺じゃねぇぞ?しかも、俺とお前のロッカー遠いんだから、間違えるわけねぇだろ!」

「そんなことは分かってるんだけど、日向、エナメルの中見せて?」


おいおいまずいぞ…
まずいだろ…
何がまずいかっていうと、エナメルの中がまずい…

あ、いや、伊月のタオルが入ってるからまずいんじゃなくて、もっと別問題っていうかなんというか…


今日は日曜日で、このあとTSUTATAで借りた
"坂本龍馬シリーズ3"(5で完結)
のDVDを返しにいこうと、エナメルにそのDVDが入ってるんだが、

今朝その話をしたら、水戸部に頼まれて、
水戸部の妹が借りた、
"キャバ嬢の女 8巻"(9巻で完結)
を一緒に返してきて欲しいと言われ、珍しく水戸部に頼まれたから、しょうがなく受け入れたのだが……

DVDのパッケージがアウトだ……

ってか、なんで水戸部の妹はこれ借りてんだ?
しかも8巻まで見てるってことは面白いのか?
あ、でもこれ昼ドラだろ?
なんか女の人が………

って訳で、これを見た伊月は絶対、いろんな意味で勘違いする!?

ちょっまじでどうする?

逃げるか?
あ、でもそうすると、タオルの犯人は俺に……

あー!!
とにかく、逃げるが勝ちだ!

「あ、そういえば、俺TSUTATAに行かないと!?じゃあな!伊月!!」


俺はとにかく、一刻も早く、この場を立ち去りたくて、ドアの方へ向かった。


「―!?日向危ない!」


が、俺は足元にボールがあるとは知らず、そのまま転んでしまった。


「ったく、大丈夫か??」

「あぁ、わりぃ。大丈夫だ。」


ふぅ〜今のは危なかった…。
足ひねるとこだったな…
「試合近いんだからケガするなよ?」

「あぁ……」


っと、転んだときにエナメルがすっ飛んで、中身が全部出てしまったらしく、それを伊月が拾い集めている。

ん?伊月が?
やばい!!





「日向………これ………」


案の定、伊月が例のDVDを手に取り、俺に見せてきた……。

今だけ…水戸部の妹を呪っていいですか?

「これには海より深い事情が……」

「まあ、カントクには黙っておくからさ!で?これどうした?」

「だからっ!!」

「あ、もしかして…あのカントクキレさせたDVD……日向のだったのか?」

日向 「いい加減にしろよ?ダアホ!誰が自殺行為さなきゃならんのじゃ馬鹿野郎。」

「わかったわかった。これは俺の心の中にそっとしまっておこう。
にしても、タオルどこいったんだろうな?結構、気に入ってたのにな…
日向のエナメルにもなかったし…はあ〜」

「だから、誤解だっていってんだろ!
つか、俺疑ってたのかよ!?」

伊月は当たり前だろ?
日向と部室に来て、部室でなくなったんだから、日向を疑うだろ!
と辺りをキョロキョロしながら、言った。


と、そこに、ドアを叩く音が。

―トントン―
  あの〜伊月先輩いますか?


「あ、うんなに?みよじ?」

「はい!…あの〜タオル、ドアの前に落ちてますよ〜?」

「え?あ、マジ?あぁ着替えてないから、あけていいよ〜」


「失礼しまーす。はい、これ…っと主将もいたんですね!!お疲れ様でした〜」

「あ、あぁお疲れ。」

「じゃあ、私はこれで…!失礼しましたー!」

そういって、みよじは消えていった。


そして、長い沈黙が……
それをやぶったのは伊月で……


「いや〜これはこれは…」





泥棒つかまえたな!
(じゃあお先〜)
(おい待て伊月!!)


こうして、この物語もオチが不安定のまま終わりを告げたのであった。





――――――――――――
あれ?夢主の出番ねぇ。


なんだろう?この物語……
わけわかんないや…



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