それはいつものように過ごしたある日の放課後の体育館での事だった。
いつもと違ったとしたら、日直で部活に行くのが遅れてしまいそうになってる途中に担任に引き止められ、バスケ部のアイツにプリントを渡すよう頼まれた事だったかもしれない。
そんな担任は帰りに渡そうと思ってたらしいが忘れたとばつが悪そうに言っていた。
どうせ体育館に行っても遠回りじゃないからいいんだけど、怖いんだよなーあの人…と、渡すよう言われた本人を思い浮かべて、あまり会いたくはなかったがあそこまで言われると断れなかった。
こうして私は体育館へと向かった。
(にしても、火神君。アメリカに交換留学かー短期間だとしてもよく行こうと思ったなー。すごっ)
担任から渡された紙にはこの前から募集をしているアメリカへの短期留学の案内が書かれていた。
アメリカとか外国は嫌いではないが、しゃべれないし背が異様に高かったり飛行機が無理という理由から留学の件は眼中に入れていなかった。だから、このように同年代、しかも同じクラスの子がこう国際的なのを見ると特別に凄いと感じてしまうのだろうか。
そうこうしているうちに、体育館に着いた私は入り口から少し顔を出すと、バスケ部は案の定練習を始めていた。
それもそうだ。私は日直で残ってたわけで、頼まれたのもだいぶ遅くなってしまってからだったのだ。
とりあえず、中に入ってマネジャーっぽい女の人に話しかけるべく、近くに行こうと足を踏み入れる。
―――ガツッ
「うわっ」
その瞬間に目の前に大男がバスケのリングに向かってダンクしている絵図が広がる。その迫力が怖すぎて女子とは思えない声と同時に尻餅をついてしまった。
(怖い、怖すぎるっ)
「あ?大丈夫か?お前、」
尻餅をついたからか私の存在に気づいたのか駆け寄ってくる彼になぜか小動物的恐怖反応が駆り立てられ逃亡体制に入るが、ピクリとも動けず。
「?あ、確かお前、みよじだよな?」
「どうかしたか?」
私の名前知っていたのか、火神君。そんななか、いつまでも起き上がれない私に火神君は紳士ながら手を貸してくれた。
すると不思議とさっきまでの恐怖心がなくなる。
「あ、これ。」
そこで、言われたとおり紙を渡す。
「?お、サンキュー!」
不意打ちというように彼は私に笑顔を見せた。
(あれ、言われたとおりに渡しただけ…だよな?渡しただけ、なのに…なんでこんな心臓さんはうるさいのでしょうか?
なんで何かを盗まれた感覚がするのでしょうか?これは事件ですか?誘拐事件か何かですか?それとも、)
この事件に名前をつけるとしたら、
きっと、
通り魔的恋愛事件
(なんてね。)
―――――――――――
こんな恋の始まり方で火神はいいと思います。
これからじっくりと距離が縮めばいいのです。
なんてね。
とりあえず、誕生日遅れてごめんよー
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