元気だけが取り柄の私はこの日学校に行く……はずでした、
「あら、38度なんて数字、久しぶりに見たわね。学校には母さんから連絡しとくから今日は休みなさい。」
そう私、みよじ なまえは小学校以来の風邪を引きました。
照れ屋な彼と風邪
突然ですが、私には彼氏がいます。名前は日向 順平といい、彼はバスケ部の主将で眼鏡をかけています。眼鏡は今は関係ないか。
そんな彼との出会いは友達のリコを通してでした。最初は特に何も思わずバスケやるんだ〜みたいなノリで友達として付き合っていましたが、彼の一生懸命なところとか、バスケに対する熱いところにいつのまにか惹かれて、私の方から告白をし、晴れて付き合うことになり、今に至ります。
「(風邪で寝込むとか、もう何年ぶりだろ?)」
あれからお母さんは熱さまシートとおじや(たぶん朝ご飯の味噌汁とご飯をひと煮立ちさせたもの)と薬を持ってきて私に食べさせた。
熱さまシートはひんやりしてて良かったけど、おじやに関しては食欲もあまりなく半分も残してしまった。いつもなら風邪でも食欲があるせいか自分で思っているよりは重症ということに重いため息をつく。
起きてしまったことはしょうがないので薬を決められた数を飲み、大人しく寝ていると、先ほど部屋を出て行った母が学校に連絡をしているのか、いつもより1オクターブくらい高い声がうっすら聴こえる。
なぜだかその声を聴くと誰かに鼻で笑われてるような気がして、私は逃げるように布団をかぶった。
次に体温を計ったのはお昼頃だった。このときには少し寝たせいか熱はひきはじめていて、朝のが嘘のように食欲も出てきて与えられたお粥もすっかり食べ終わった。薬もきちんと飲んだ。
「(今頃、みんなは昼休みかな。)」
ふと時計を見るといつもなら順平とか他のバスケ部員達とかと楽しくお昼を食べている時間だった。
木吉君は順平のお弁当のおかずを盗んでて、伊月君はハンバーグあたりで駄洒落を言ってて、順平は木吉君の手を叩きながら伊月君の駄洒落に厳しい言葉を言ってて、私は順平のとなりでゆっくり食べてて、そんな私の隣でリコはジュースを飲みながらみんなのやりとりを呆れ顔で見てる。そんないつもの昼休み。
だけど今日は誰もいない。あんな想像をしたからか、シーンとなった部屋に一人でいると急に寂しくなる。
なんで風邪なんかひいちゃったんだろう?風邪なんかひかなきゃ今頃は順平達と…
会いたいよ。みんなに。一人は寂しいよ。会いたいよ、みんな…今すぐ。
ううん。今一番会いたいのは…
「……順平…」
「…ん?なんだ?」
「えっ」
予想外に返事が返ってきて尚且つその声はお母さんでもなくて私の好きな人の声で、夢でも見てるんじゃないかって思ったけど目の前にいるのはやっぱり彼で、とりあえず、なんでいるの?
「なんでいるの?って顔だな。プリンお前好きだろ。もらったから一緒に食べようと思ってな。」
「ぶっ部活は?」
「カントクがいきなり都合悪くなったらしい。」
私はあれから寝ていたらしい。先ほどまで12を指していた短針はもう4を指していて、電気を付けていない部屋には夕日の光が入ってうすオレンジ色だ。そこに順平が箱を持ってベットの近くに座っていた。
「おばさんちょっと買い物行ってくるって言ってた。」
「うん。」
「具合……どうだ?」
「うん、だいぶ良くなってきたよ。」
「そっか。あんまり無理すんなよ。」
「……うん。」
「喉渇いてないか?」
「うん。」
「プリン今食べるか?」
「うん。」
「起き上がれるか?」
「クスッ」
「なんだよ。」
「ううん、なんでもない。」
「なんでもなくなんかないだろ。」
なんか心配してる順平がいつもより優しくてこういうことって彼女である私だけの特権なのかな?なんて言ったらきっと、
ばか、そんなんじゃねーよ
(って言われそうだから)
(これは秘密にしておくことにする。)
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