「ぅ〜また負けた〜」




私はいつもこの病室に来ては、こうして、つい最近知り合った人こと……木吉鉄平さんと花札をやっている。


「へへへ。おじいちゃんに教えてもらったからには、簡単に負けるわけにはいかないよ。」

「もう一回!!」




木吉さんと会ったのは、今年の春。
ちょうど、私が屋上で身を投げ出そうとした日だった。
そして、



――生まれてこなければよかったのに。


そう告げられた日でもあった。







「なあ、花札って知ってるか?」



夜、父親の営んでいる病院で死んでやろうと屋上に来て、柵から身を乗り出し、風を全身に浴びたところで言われた一言。


一瞬頭が働かなくて、何を言われてるか分からなくて、は?と聞き返せば、彼はまた私に向かって、


「だから、花札だよ。こいこいとかよく言うだろ?」


花札について語り始めた。



「あの〜。」
「あ、知ってるのか!?
今度やろうぜ!」



「…無理です。私これから死にますから。」



ニカッって勝手に私の中で効果音をつけて笑う彼に、冷たく言ってしまった。




そうだ。

私はこれから死ぬんだ。

私なんか……

いてもいなくても同じなんだ……



「お前は今まで何をしてきたんだ!」

「あんたみたいな妹いらない。」

「お母さんなんて気安く呼ばないでよ。ゴミ。」



「あんたなんかね……あんたなんか……



――生まれてこなければよかったのに





「っ……」

思い出すだけで嫌になる。


私は透明人間。

いつもいないもの。

なれたと思ってた。

自分の部屋がないのも…

テーブルに椅子が3つしかないことも…

両親にぶたれることも…

姉に蹴られることも…


全部なれてたつもりだった。





「そっか、じゃあ、死んじゃえよ。」


「………!?」



この人も私なんかいない方がいいんだ…

私なんか、別にどうでもいいんだ…


なんでだろ?

分かんないけど、下をみると霞んでる。


足元は雨ように黒くシミを作っている。



「でも…さ…なんで君は泣いてるの?」


その言葉にはっとした。

袖で顔を覆うと袖が濡れた。

そのことで、ようやく、泣いていたことに気づく。


でも、自分がなぜ泣いているのか?という質問に答えることが出来なかった。

答えを見つけることが出来なかった。



「なあ…そんな思い詰めんなって。

……よっと

まだまだ人生はこれからだろ?
楽しんでこーぜ!!」



そう言った彼は私のところまできて、
私の中でまたニカッって笑った。




キスじゃ死ねません
(あ、俺ファーストキスだった!?)
(ちょっ私もなんですけど…)








――――――――――――――


あ、なんかお題とそれた気が……

とりあえず木吉先輩をイケメンにしたかっただけ。




end



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