―さささっ―


こんにちは!
あ、いや、この時間だと、今晩は…か…
えー、まもなく、
世間がよくいう逢魔が時です。

そんな時刻になぜ私がこんなこと――校門の影に隠れてこそこそしているのかというと、
そうです、待ち伏せを試みようとしているわけです!

しかし、最終下校時間はとっくに過ぎているのにいっこうに現れないターゲット……


30分以上待ってるのに……

渡そうって思ったのにな…


「あれ?まだ残ってたのか?早く帰れよ〜」


結局、最後まで待ったが、ターゲットは来ることはなく、綺麗に飾り付けた箱は無意味になってしまった。


全く……
やっぱ、神様が告白すんなって言ってるのか……な………?

あれは……?



無意味になってしまった箱を鞄にしまって、
ちょうど、ストリートコートに目を向けると、

自主練習をしているのか、真剣にシュート練習とかしてるターゲットを発見した。


神様!
ありがとう!!
こんなチャンスを下さいまして!!


と思って、ターゲットに近づこうと右足をあげたところに


「あの!!火神君!!今あいてる?」

と、私とは逆方向のフェンスから、私とは比べものにならないくらい可愛い子が、ターゲットのことを呼んでいた。


少し気になって…
あ、いや、正確には凄く気になって…
私は彼女達のあとを追った。
テツヤ君よりは影は薄く出来ないけど、人に気づかれないで、ついて行くのは得意な方だ。
今回も難なく、できた。

そのまま、話が気になって、耳を傾けてじっとしていた。


確か、
あの可愛い子、
隣のクラスの大山さんだ。




「………なんだよ?こんなところ呼び出して。」

「あ、あのね……」

「用がないなら練習戻りたいんだけど……?」

「…その……火神君……その…これ…受け取って下さい!」




―――!!




そう言って彼女が渡したのは赤い包装紙に包まれて、ピンクのリボンがついた箱だった…





今日……2月14日という日は、
女の子が好きな男の子にチョコレートを渡す日…

そう、

―バレンタインデー―

なのだ……




「…いい返事待ってます。じゃあ…」


彼女はチョコレートを大我君に渡して、
その場を去って言った。

私……
馬鹿だ……

大我君にチョコレートを渡す人いないって思ってた……


ここだけの話、目つき悪いし、バスケ馬鹿だし…
怒鳴ると怖いし…



だけど…
よりによって、大山さんだなんて…




勝てっこないよ…

それに、
大山さんって、女子バスケ部のエースで、
よく、男バスと一緒に練習してるって聞くし…

大我君と仲いいんだろうな〜…


それに比べて私は……

クラスが一緒なだけで、部活なんか軽音部で、体育館と音楽室離れてるし……
接点っていったら、幼なじみのテツヤ君に誘われてお昼食べるくらいだもんな……
って言ってもほとんど大我君と会話ないし……

こないだ名前で呼べ!!って言われて、ずにのってました。

……私の馬鹿………


大山さんと大我君って
凄くお似合いじゃん…


私凄く邪魔じゃん……


「お?なまえじゃねーか!どうしたんだ?こんなところで…」


「え?あ…あうん…たまたま通りかかってさ!!」


草むらに隠れていた私に気づいたのか、大我君が私に近づく。



「ふうん〜で、さっきのこそこそ隠れて見てたってわけか…」


「あ……うん…ごめん。それにしても良かったね!!チョコレートもらえて!!良かった良かった〜」

無理やり笑っちゃった。
今の私すっごくひきつってんだろうな……

でも、笑っとかないと…無理にでも笑っとかないとダメなんだよ……
泣きそうになっちゃうんだよ……

「あぁそうだな。今年でチョコレートもらうの初めてだ。良かった良かった。大山からだから、うまいんだろうな!!
ちょうど腹減ったし食べるか。」


そう言って大我君が大山さんからもらった箱をあけ出す。


なんで今あけんのさ!!

………。
やばい……
涙が……。

見てらんないよ…

私は大我君に背をむけ、一刻も早くこの場を立ち去りたくて…

「……じゃあ、私はこれで…」

なんて言って走り出そうとしたら…



―ガシッ―



「まだわかんねーのかよ…」

「………え?」

腕をつかまれ、引っ張られ、
気づいたら大我君の腕の中にいて……

持ってた鞄が落ちて中身が出ている。
たぶんちゃんとチャックをしめなかったからだと思うけど、

あの無意味に終わった箱も出てしまったみたいだ。

でも、今私はその箱を拾うよりも、凄く目の前の問題の方が大きくて…


頭の中が真っ白になって…





空っぽです
(嫌がんないとキスすんぞ?)
(え、ちょっ!!)




―――――――――――――


という夢をみたんだ。



ちょこっと裏話。

大山さんからもらった箱には、チョコと紙が入っていて、
"なまえ、校門にいたよ!
これあげるから、渡しておいで!
俗に言う逆チョコよ!逆チョコ!
いい知らせ待ってる!"



ってかんじで…
実は大山さんは火神の恋愛相談相手だったり…


そう思うと、大山さんが好きになれる。

そして、このあとなまえと火神がどうなったかは、皆様のご想像にお任せいたします。



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