「あのさ、俺が言うのもなんだけどさ、」


そう口をあけたのは賢吾だった。


「俺、あの時、綺羅がここから飛び降りようとしたとき、本当は怖かった。でも、俺、綺羅を失いたくなかった。いつも俺らの隣で笑っていて欲しいから。だから、生きててくれて、ありがとう。」


そういうと、賢吾は私に抱きついて、何度もありがとうと言ってくれた。


その後、賢吾は私から離れ、"ちょっと顔洗ってくる"って言ってどこかに行ってしまった。



「賢吾君、やりますね……」

『?白銀さん、何か言った?』

「いえ、あ、私からも一言だけ、」


白銀さんも私に何か言いたいらしく賢吾が出て行った方を見た後私の方に真剣な顔つきで向いた。

その行動に私は真剣に白銀さんを見つめ返す。


「あなたは以前自分は化け物だといいました。私はあなたを化け物だと思いません。あなたは…綺羅さんは綺羅さんなのですから。私を助けてくれました。手当てもしてくれました。
本当に綺羅さんにお会い出来て嬉しいです。ありがとうございます。」


人から感謝されるというのはこんなに涙が出るのだろうか。
私は私。と何度言って欲しいと願ったことか、
それが叶った。
私は化け物じゃない、それだけで嬉しくて、涙が頬を伝って嗚咽まじりに"私も白銀さんに会えて良かったです。"と言った。

その後は、白銀さんがいきなりどこかへ行ってしまった。
たぶん泣いているのを隠したかったのかもしれない。




「何泣いてんだよ。」


声がしたほうを向くとそこには、もちろん昶がいた。
昶は泣いている私を見て、いたたまれないのか手を伸ばして頬に伝う雫を拭った。

でもその手を離したくなくて、私は手をつかんだ。それからはただ流れにそっていって……


気付いたら私から昶にキスしていた。


『あ、え、と、その、あ、え、』


「ぷぁははははははは。なんだよその顔!!」


『もう、そんな笑わなくてもいいじゃんか!!』


「でもよ、あれは笑うだろ、顔真っ赤にして、」



『拗ねるっプー』


「でも、なんでお前はそうなんだろうな、」


 ?


「俺の邪魔ばかりする。
んで、一人で暴走する。
ったく、あーめんどくせー

一回しか言わねぇからな」



まだ真っ赤の私にはお構いなしに昶は次々と話を進めていく。


「俺はお前が生きてて安心した。お前が誰よりも大切だったから。賢吾から聞いたとき自分が情けなかった。
お前を守りたい、そう思ってた。だけどいつも俺らは守られてばかりだった。
もうあんな心配させんなよ。
ずっと俺のそばにいろ……綺羅。」



いつの間にか距離が縮まって唇に暖かいそれがぶつかってさっきとは比べものにならないくらいの優しいそれは私の涙を止めさせた





「……で、返事は?」


『……はい。』






季節は私たちを乗せて変わっていく、


私たちもまた季節を乗せて変わっていける、


いろんな日々を乗せて、


いろんな人たちとともに、



私たちは歩みを止めない。






モノクロ少女――end.






次はあとがき。




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