――あの日
「ケリをつけるって何?」
『そのままの意味だよ』
「意味分かんないや」
そう言う彼の目は死んでいて私をさげすんでいた。
『私小さい頃一度だけ西条君に会った事あったよね。覚えてないかな?』
「?」
『まぁ覚えてるわけな「覚えてるに決まってるじゃないか!?」 え?』
私の言葉を遮ったのは西条君で、彼は何故か目に涙をためていた。
「忘れるわけないじゃないか…僕が…僕はずっと待っていたんだ。君を。あの日からずっとあの公園で。」
私達が初めてあったのは彼の言う公園だった。
あまり遊具などなくてあるとしたらブランコが2つくらいしかない小さな公園。
でもその公園ならではの雰囲気が好きだった。
やっぱり雰囲気も大事だったけど私はブランコを独り占めできることが何よりも好きだったのはたぶん私が小さかったからだと思う。
だから結構な距離を走って通っていたんだ。
でもそんなある日だった。
いつものように靴をはき、いつものように玄関をでていつもの道を走ってたどり着いたときにはいつも2つあいてるブランコに先客がいた。
なぜかその客は素足のままで頬をぬらしていた。
私はなんて声をかけていいか分からなくてとにかく毎日の楽しみだったブランコに座った。
――…キイー
「ねぇ、君は自分のお父さんに殴られたことある?」
静かに隣でブランコをこいでいたら、突然少年に聞かれた。
もちろん私はパパにそんなことはされたことはない。
だから、
『ないよ。でも友達ならある。』
と視点を変えずに答えてみた。
ないという返事に反応したのか、その後の友達ならあるというのに反応したのか分からなかったけど私より少し背が低い少年は目を開いた。
『人はそれぞれでしょ?だからたくさんの意見ってやつがあるんだって…それも一人一人違う。だから、けんかをする。そんで私達も人とけんかして学ぶ。確かに人を打ったりするのはいけないことだけど、それで学ぶことだってあると思うよ。それに相手だって学んでくれるよ。』
ねって前にパパが言っていたことをそのまま言えば少年は泣きながら、本当は自分も悪かったんだと嘆いていた。
『あ、そうだ。』
「?」
私は何かを思い出したかのようにブランコから降りてあるところに向かった。
少年は私の行動の意味がわからなくてただブランコに置いてけぼりをくらっていた。
しばらくしてから、私が戻ると彼は下を向いて泣いていた。
本当は彼の顔が見えないから泣いているのかは分からないけど肩が不規則に揺れていたりしてたから泣いてるのかなって思っただけ。
でも予想は当たってて、
そんな彼に何も言わずに濡れたハンカチを目の前に出すと、彼は少し驚いて私の方に顔をあげた。
「帰ったんじゃなかったの…?」
か細く今にも消え入りそうな声だった。
『これ使って、ほっぺ赤くはれちゃうよ。』
そう差し出したハンカチはこの前ママが買ってくれたクマさんの刺繍が入ったもので、結構お気に入りだったりもした。
「あ、でも…」
『いいから!』
「ありがとう」
それから私たちはブランコで色んな話に花を咲かせた。
だけど、時間は過ぎていって帰る時間になった。
「また…会えるよね…?」
『………うん。じゃあまた明日。』
それから私たちは別々の道を進んでいった。
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