あれから私は寝ていたみたいで目が覚めると部屋は暗かった。

暗さからいって夜なのは分かるけど、何時なのかははっきりと分からない。
時計の音はどこからか聞こえるがそれがどこにあるのかやはり分からない。

このシンプルな部屋が真っ暗。それだけで心は寂しいのに、今誰もいないという事実が私の心を一段と寂しくさせる。

でもこれらの感情は小さい頃に慣れていた。浅村君が言うには慣れなくて良かったこと。
別に父親や母親が仕事で忙しく夕食を一緒に食べれなかったワケでもない。でも小さい頃の私は両親に嘘をついでまで一緒にいたくなかった。
理由は自分が虐められているのを感づかれたくなかったからだ。
夜はいらない。そう少し強く言えば、母は分かってくれた。

もしかしたら母は私がいじめを受けていると分かっていたのかもしれない…だから、私が引っ越したいと言った時に反対しなかったのだろう。

今はあの頃と同じ、このまま全校生徒から化け物と呼ばれ続ける。そんな生活は本当は嫌だ。


――またあの頃にもどるの?



いや、私自体が化け物。
仕方ないとはわかっていても、普通に戻りたい。


――普通ってなんだっけ?



そんな願望は願うだけ無駄だとは分かっている。
だけど少しは期待してみたい。



――期待したら普通になるの?





もう悲しいのは嫌だ。
もう誰も悲しませたくない。
もう………




失いたくないんだ……










昶side


「あいつどこ行った?」


夕食を済ませ部屋であいつの看病をしていると賢吾に呼ばれて少しの間外に出た。
ちょっとなら今グッスリ眠ってるこいつはいなくならないだろうと推測したが、はずした。
もう部屋にはいなくなっていた。

怪我はさすがに治っていないはずなのに二階の窓は開いていて風が俺と白銀の間を通り過ぎていく。

「逃亡ですかね?」

白銀が面白おかしくいうが俺はそんな余裕なくなった。

あの怪我じゃあそんなん遠くへ行ってないはずだ。兎に角急いで探しに出かけた。

「世話かけんなよ。馬鹿か!アイツは!!」

「本当ですよ。私からも叱らなくてはね!」

八つ当たりにちかい独り言は白銀によって独り言じゃなくなり、俺は玄関に向かった。



昶side 終




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