目が覚めると自分の部屋じゃなく、どこか懐かしい部屋だった。
机と椅子、本棚やテレビ。
シンプルで見たことない部屋だったけど雰囲気が懐かしかった。
自分の部屋でないと分かったのでこのまま居座るのは失礼だと思い起きあがろうとした。
しかし、なぜかゆうことをきいてくれない手足。なんとか上半身をあげることが出来た。
そっか私階段から落ちたんだった。
記憶は曖昧だけど落ちたんだと思う。それで右手を庇って……
そう考えたら不思議と痛みは増してきた。
「おい、大丈夫かよっ」
あまりの痛みにうずくまっているとこの部屋の主だろう人が近寄ってきた。
『大っ丈夫……です。これっくら…い』
「んなわけねーだろ!!
いいから寝てろ!!」
その声は何故か安心できて、それでいて逆らえない声だった。
私はその声に聞き覚えがあって、俯いていた顔を声の主に向けて驚いた。
『……な……んで…二海堂君が………?』
「話はあとだ。とにかく手当てするからおとなしく寝てろ。」
その声は、イラついているように聞こえたのだが何故か私には嬉しかった。
それと同時に悲しくもあった。
理由?そんなの、私は彼を…彼らを傷つけた危険物だから。
そう。危険物だから。
彼らの近くにいたら傷つけてしまう。
私は自然とこみ上げてくる涙を声が出ないように唇を噛みながら我慢した。
たぶん鼻をすすったらバレる。なるべく見られないように彼がいる反対方向に顔を向け、まだ痛みが治まっていない手で布団を頭まで被ろうと裾を持ったら、その腕を掴まれた。
つまりは、二海堂君がその、ベッドで寝てる私の隣に腰掛けて私の顔を覗き込む状態で……
なぜか顔が近かった。
もちろん反対方向に顔を向けた時に涙は頬を伝っていて、完全に泣いていることを彼に知られてしまった。
涙を拭おうにも手は二海堂君に捕まられていて、とにかく泣き顔を見られたくないので出来るだけ彼から顔をそらす。
それからは沈黙が続いた。たぶん二分くらいだと思うけど私は一時間くらいに感じた。その沈黙を破ったのは彼のある行動だった。
――……ぎゅぅぅぅううう
彼は痛いくらいに私に抱きついた。
『えっ……あ、その、あのっ……』
「一人で抱え込むんじゃねぇ。自分を責めるな。俺がいる。俺がいるから。」
消え入りそうな声だった。彼らしくない言葉に最初は驚いた。
けど、私は自由が利かない両手を彼に負けないくらいの力で背中に回して
『…ありがとう』
そうつぶやいた。
君へ伝われ。
今の言葉にどれだけ救われたか。
助けられてばっかだけど。
君がいてくれただけで
本当にっ
『あっりが……とぅ…』
それから私は大泣きした。
怪我の手当てなんかすっぽかして、私は二海堂君に抱きついて離れなかった。
―― 涙の影 end――
次はあとがき。
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