―綺羅side―

浅村君から逃げて、
教室からも逃げ出した私に行くあてなどない。

どこに行こうか迷っていたら、目の前に先ほど見かけた白髪の若い男の人がいた……。

一瞬目が合ってそらしてしまった。
でも、近くでみると、本当に綺麗な方で、
女の私からみても、羨ましいくらいだった。

「田代 綺羅さんですね?」

なんで私の名前を?

『はっはいそうですけど……』

ちょっと怪しい…いや、凄く怪しい笑顔をしながら私に近づいてくる。

『あっあの!わっ私になにっ何か用でも…あるんですか?』

慌てて聞くと、

「私は白銀といいます。あなたに用というか…話があります。」



『は?はあ〜』


そういって来たのが、屋上……
てかさっき浅村君がいたから、今もいるだろうな〜と考えていたら、
「彼はもういませんよ」

なんて白銀さんが確認してくれて、少しホッとした。



『それで、話ってなんですか?』

「あ、はい。話というのは、あなたは、影の因子があり、影を惹きつけてしまう体質なんです。だから、今から影人になってもらいたくて…」

『影の因子……?はあ?』

「あ、話が急、すぎましたね。話すと長くなるんですが、簡単にいうと、今のままだと、周りのみなさんを傷つけることになります。」

『………要するに、私は危険人物ってことですよね?』

「そこまでいうのはなんとなく違いますが、力を持ってない人にとっては危ないし、『やっぱり、私は危険人物だったんですね……。』
「だから、そこまででは…」

『……いいです。分かりました。さよなら。』

「はい?ちょっと待ってください!?話は最後まで!!」



遠くの方で白銀さんの声がした。

でも、私は振り向きもしないで、行こうとする。
が……

「人の話はちゃんと聞いて下さい。」

いつの間にか、追い付かれていて、右手首を捕まれた。

……っ………。

痛さで顔が歪む。

「やはり、あなた怪我しているでしょう?昨日から……いや、昨日の前の日あたりから…」

なんでこの人知ってんだ?
なんでこの人は?

『このくらい大丈夫です。』

白銀さんの手を払おうとしたが、手に力が入らない。

「大丈夫なわけありませんよ!真っ青じゃないですか!?これは湿布じゃ駄目ですよ!?あと、お腹も!」


そう…。
昨日の前の日、私は、呼び出しをくらった。
それも、先生じゃなくて、男の先輩に……
そこで、暴行を受け、その時に右手首をやられた。やられたというか、自分でやった。

まあ、最初は腹に蹴りを入れられていたが、徐々に楽しくなくなったのか、私の体に手を伸ばしてきた。
それが気持ち悪くて、ひざげりを食らわすと、相手が、苛立ったのか、ナイフを振りかぶった。
それがちょうど、腹に…
痛みに耐えながらいたら、両手首を掴まれた。
そこからは、気持ち悪くて、気持ち悪くて…
だから、逃げるために右手を……
骨がすごい音したんで、男もビビってたよ…
その隙に逃げることができた。


そんなこんなで、今の私は、シャーペンを持つことは出来るけど、それで、字を書くことは出来ないのです。


『なんで分かったんですか?』

「さすがに分かります。とにかく、マスターのところに一緒に行きましょう!」

『マスター?』
「はい。」

これって…………

『誘拐!?』

おちゃらける。
さっきまでのシビアな空気では、帰れない気がして……

「違います。」

白銀さんは即答で答える。

『幽霊が誘拐!?』

「だから、違います。あとダジャレしても、無駄です。いい加減キレますよ?」


『すみません。でも……みなさんに迷惑をかけられないので、遠慮します。』

こんどは真剣に。
そうだ。私は誰とも接点を作らない。
それがいいんだ。
それで……


「じゃあ、俺と一緒に行かない?」

…………!?
その声は忘れはしない。


洸さん………?



「あ、これ、一応、ナンパじゃないよ?綺羅ちゃん!!」



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