―昶side―

昨日から、白銀の姿が見えない。
正確に言えば昨日のあの事件からだ。
まあ、いないのなら、いない方がいいのだが…
なんとなくどこか行っているのなら一言声をかけてからにしてほしい。

っつか眠い。考えたら眠くなってきた。
白銀のことはあいつが来てから聞くか。

よし、今日は寝よう………。

だんだん意識が途切れていく…―。
次の瞬間には、
廃虚にいて……

「ごめんっ………」

あいつが泣いていた…

あいつが……………
あの誰にも泣き顔を見せないあいつが……





「―きら――。あ―き―ら―。」

「ぅ?………ぁ…賢吾か…」


変な夢を見て、
まだ眠たい中、目を開けてみると賢吾が俺の顔を覗き込んだ。


「昶、今日屋上いねーんだもん。探すの大変だったんだぜ?」

そうそう。俺は今日は屋上じゃなくて体育館裏の木陰で寝ていた…
まあ、あの事件が気になって来た訳だ。

「あ…別にいいだろ…。で、何?つか今何限??」

「もう昼休み。はいコレ…。」


あぁもうこんな時間か…。つかなんだよこれ。
"キムチカレーパン"?
毎度思うが、このパン作ってるやつチャレンジャーだろ…。
………。
あっうめぇー。
なんだこれ……。


「なぁ昶……。」

俺が"キムチカレーパン"に気を取られている隙に、賢吾は俺に話しかけてきた。

「昶は……あの噂…、信じる?」


は…?あの噂?あぁ、あいつのことか。

「噂じゃなくて、事実だろ?」

いつも話しているときより、ちょっと低い声で言う。
すると賢吾は驚いた顔をする。

「……。昶は信じるんだ。あのうわ「信じるもなにも、俺は……!」

賢吾の言葉を遮っておきながら、俺はなにも、いえなくなっちまった…。

本当は信じたくねー。
あいつがあんな事するはずねーって思い込みたい。
でも俺は見たんだ、萌子が血を流してるとこを…
あいつが血のついたナイフを持っていたのを……

次にどのような言葉を発したらいいのか悩んでると賢吾が先に口を開いた。

「綺羅は……俺だけが信じても…駄目なんだよ………」

途切れ途切れだった。

「俺だけじゃ…駄目なんだよ……昶!!」

なんなんだよ。
なんでお前だけじゃ駄目なんだよ?

「っ意味わかんねー。」


「俺と昶で、助けないといけないんだよ!?あの時は力なんてなかったけど…今なら………」


今なら……?
今更だろ……!

今更戻らねーよ。
あの頃には………



―昶side終了―





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