そのあとはもうなにもきかなかった。
でも、俺が見たのは夢じゃない。
本物の綺羅だ。
あれは綺羅なんだ。
見逃すわけない。
だって俺見たんだ。
あの時…。
俺が地面とこんにちはをして、起きあがろうと足に力を入れてるとき―。
地面にポツポツと雨の雫がシミを作っていた。
やがて俺の頬に当たって冷たいと思って顔をあげると、
"モノ"が拳をつくりながら泣いていた…。
なんでか知らないけど泣いていた。
人前でなんて泣かないくせに、あれほどもう泣かないって言ってたくせに。
顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
そして、俺に言ったんだよ―――。
―ごめんね…。ごめん…。―。
なんであの時俺は立てなかった?
なんであの時俺は抱きしめてやらなかった?
なんであの時俺は助けられなかったんだ?
今は後悔だけが、
残っているだよ。
―過去の影―end。
次はあとがき。
.
←→