声の主は私の幼なじみで、元気いっぱいな奴。
浅村賢吾―。馬鹿だけど、私の大切な二人のうちの一人。

「……事情は聞かないよ、けど今度あんなことしたら、俺綺羅のこと許さないからな。」

彼の目は真剣で、
今の私では見ることは出来なくて、下を向いたまま、頷いていた。

「それより、こんなとこでなにしてんの?今授業中だろ?」

『あぁ…。サボリです。賢…。浅村君は?』

浅村君と言い直したのは単なる距離を取りたかっただけ。
というか、私には賢吾と呼ぶ資格なんかもうないから浅村君と呼んで正しいのだ。


「あ…そうなんだ…。俺もサボリ……。」

たぶん浅村君と呼ばれるのが嫌いってわけではなくて、今まで賢吾とよばれていたから変だって思ったかもと思い、私は気にしないで、また浅村君に話しかけることにした。


『浅村君はいつもサボってますよね。いけない方ですね。』

敬語。別に敬ってなどないが、さっきから敬語。

ちょっと嫌みぽくいった。
そしたら、この方は…。

「そんなこというなよ〜。」

なんてあの頃みたいに泣くから、

『ぷっふふふふ』

笑ってしまった。





「?そんな笑うとこなくねぇ?」

『いや、おかしくなんかねぇーけど、なんか賢吾がおかしくて。』

「結局おかしいんじゃねーか!」


「あ……。今…。」


……。あっ、素に戻って賢吾って呼んでしまった。


『いや、おかしいわけではないんですがね、なんか浅村君が変だったので…。』

言い直してみたが、

「つーか、なんで言い直すんだよ…賢吾でいいじゃん。素に戻っていいじゃん。もしかして、まだ俺たちのことさけてんのかよ?」

さける…。あのときから…。


「俺たちはもう怒ってないし、昔みたいに戻りたいんだよ?綺羅…それに一人だと…だよ…」

最後の方がどもって聞こえなかった…


『……。でも、傷つけたのは事実だよ………私は、自分を許せないんだ……だから、浅村君も私を許さないでください。』

「綺羅……」

『私帰るね……』

「待ってよ綺羅!!」


私は浅村君にもう話しかけて欲しくなくて逃げた。






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