缶ビール片手に名無しはつまみのコーナーを指差した。


「元就さん、おつまみはどうする?」

「昨日と同じ物で良いだろう」

「ん、そうだね」


レジへ向かおうとする名無しの手から缶ビールを取り、元就が店員に差し出した。


「相変わらずお暑いですね」

「無駄口を叩いていないで早くしろ」


そんな店員の冷やかしに元就は持ち前の冷ややかな眼差しで対抗する。これは毎回の事なので名無しも止めず、双方も気にしていなかった。レジ袋を提げた元就と名無しが店員の声を背に店を出る。数歩歩くか歩かないかの内に元就はふと、気付いてしまった。物陰から此方を伺う人物に。


「名無し、走るぞ」

「え、元就さん?」


視線を反らし名無しに囁く。当然彼女は不思議そうに首を傾げるだけで、元就の望む行動を取ってはくれない。名無しを置いて逃げては漸く見付けた小さな幸せがぶち壊しになる。否、今もその危機に晒されているのだが。


「よう、元就クン!奇遇だな」

「こんばんはでござる」


わざとらしく片手を上げてやって来た元親を筆頭に1組のメンバーがやって来る。知らないふりをしようにも元親がわざわざ名前を強調して言ってくれたので不可能になってしまった。


「あら、毛利さんこんばんは。可愛い方と一緒なのね」

「許せ毛利」


濃姫が口を開くと伊達は少し離れた所から彼に向かって手を合わせた。


「こんばんは、皆さん」

「いいねいいねぇ!恋してるってのはさ」


いつの間にか利家の代わりに慶次が参加している。そんな事には誰も突っ込まず、軽く頭を下げた名無しをじっと見ていた。自分を見たまま動かない見知らぬ人達に名無しは困った様に元就を見る。最初に動いたのは元親だった。



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