待ち合わせはファママ。終わる少し前にメールが来るのでそれを合図に名無しは家を出る。すっかり顔馴染みになった店員に挨拶をして、待ち人が来るまで見て回っていようかと考えていると丁度良く彼が入って来た。
「あ、元就さん」
「待ったか?」
「ううん、今来たとこ」
元就は安心した様に息を吐くと素早く振り向いた。外には誰も居ないが、つい先程まで元親達が覗いていたりする。
「どうしたの?」
「いや、何でも無い。それより、何か買って行こう」
「じゃあ昨日元就さんに飲み尽くされたお酒を」
「す、すまぬ」
少しだけ棘を含ませて言えば眉尻を下げて謝る。名無しはそんな様子が可笑しくて笑った。
「良いよ。それに元就さんの為に用意してあるお酒だし」
そう言ってにっこり笑う彼女を見ると、人生捨てたもんじゃないと思う元就だった。名無しは同じ職場で働いているが出会いはファママだった。しかもいつきちゃん弁当を吟味している所を見られた。
慌てて言い訳をしようとする元就を見て、それまで呆然としていた名無しは笑顔を浮かべ自分もいつきちゃん弁当を手にレジへ向かった。それからも度々ファママや職場で彼女を見掛け、元就は勇気を出して声を掛けた。
『いつきちゃんカードは何枚持っている?』
それから暫くして付き合うようになったのだが、元就は未だにこの咄嗟に出てしまった言葉を後悔している。ちなみに、彼女の持っていたいつきちゃんカードは全て元就の物となった。
今では学校が終わった後ファママの側にある名無しの家で共に酒を飲みながらたまにいちゃつくのが日課であった。会社では既に周知の仲だが学校はそうでは無い。名無しにも定時制の学校に通っている事だけを教えていた。
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