ギリギリと腕で元就の首を絞めかけていた元親を伊達が止めた。ほっとしたのも束の間、名無しが濃姫と慶次にに完全に絡まれている。出会いの話やらを聞き出されているのだ。
「sorry、元就」
「伊達よ、生徒を止めるのは教師の役目ではないのか?」
地を這う様な声。伊達は助けてくれたと言うのに完全な八つ当たりである。今回は少しばかり元就に同情した伊達は甘んじてその言葉を受ける事にした。
「元就さん、」
ふと、名無しがスーツの裾を引いた。少し離れた所で濃姫と慶次がニヤニヤと笑いながら此方を見ている。
「どうした?」
「濃姫さん達帰るんだって。私達ももう行こう?時間無くなっちゃうよ」
「そうだな」
濃姫と慶次が親指を立てている。元親は親指を下に向けていた。明日の学校では奴に嫌がらせをしよう。そう考えた元就は伊達を一睨みして名無しへ行こう、と低く言った。
「お似合いだよ、お二人さん!」
慶次の冷やかしに当然だ、と小さく呟いて元就は名無しの手を握った。後ろから聞こえてくる歓声に明日からの小さな幸せの時間は短縮されるのだろうと悟りながら。
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