しかしよく考えれば、確かに元親も生徒会役員に誘われるような要素を持っている。容姿もそこそこ良いし、おおらかな性格をしているので男女共に好かれていた。

「まぁ結局は断られちゃってね。だから、慶次くんを誘ったんだけど」

「え、なにもしかして俺って代役ってこと?」

「はっきり言えばそういうこと」

半兵衛の一ミリも容赦のない言葉に、慶次は力なく項垂れた。

半兵衛と慶次は幼馴染みのようなもので、昔から付き合いがある。あまり体の強くない半兵衛の面倒を慶次が見る代わりに、勉強面では半兵衛が面倒を見るというような関係だった。

仲が良いと言えば良いのだが、幼馴染みの性格を熟知している半兵衛は慶次をよくからかっているのだ。ただ慶次は少々鈍い性格をしているので、遠回しな皮肉は通じなかったりするが。

意気消沈する慶次を無視して、半兵衛は説明を続ける。

「本人に断られたのもあるけど、元就くんの妨害もあってね」

「Ah?どうして毛利が妨害なんかするんだ?」

「彼にしてみれば、お気に入りの玩具を取られたくない、って感じだったんじゃないかな」

半兵衛の言葉に、成る程と政宗は納得した。

元親は比較的交遊関係が広く、どんな人間であろうとすぐ仲良くなるタイプであったが、元就はそうではなかった。いわゆる人見知りで、積極的に他者と交流を持とうとする性格ではない。

仲が良い者と言えば唯一幼馴染みの元親ぐらいである。その元親を誰かに取られるのが元就は嫌らしい。普段の彼の元親に対する態度から言えば、玩具という表現はまさにその通りだろう。

「ま、元親が来るんだったら俺は歓迎するぜ?賑やかになるしな」

悪友が来るならば今以上に楽しくなる。政宗にしてみれば都合の良い条件だ。

「そうなると、前田の慶ちゃんは用済みってコトになるんじゃないの?」

「ええぇぇ!?用済みって嘘だろ?なぁ、半兵衛!」

佐助の何気ない一言に慶次は慌て始めた。いくら鈍いとは言っても直接的に用済みという言葉を言われれば、その意味に気付かないわけがない。

一人で恐慌状態に陥っている慶次を見て、半兵衛はクスクスと笑い始めた。

「まぁ用済みってことはないよ。他にも仕事はあるからね。例えば生徒会室清掃係長とか物品買出し部長とか……」

「そっかぁ、良かったー!」

「えぇ、それで納得しちゃうの?」

さり気なく酷い扱いをされていることに気付かない慶次に、佐助が思わず突っ込む。

その時、生徒会室の奥の方からやけに威勢の良い声が聞こえてきた。

「お茶が入りましたぞ!日本人なら緑茶でござる!」

人数分の湯飲みを載せた盆を頭に乗せながら、幸村は皆の方へと向かってきた。会長である政宗から配り始める。一応礼儀というものを考えてのことらしい。

「だからね、僕らが勝ったら茶道部は認めない。そして元親くんを生徒会にもらうという条件にするのさ」

「あちらにしてみれば、この勝負受けないワケにはいかないってことね」

茶道部を公認してもらうには、半兵衛の提案する勝負を受けなければならない。受けた時点で茶道部の敗北は見えている。

ある意味で完璧な作戦ではあるが、如何せん茶道部には尋常ではない面々が揃っている。いわば、トランプのジョーカーがいくつもある状態だ。そんな彼らが半兵衛の作戦通りに動くかどうか。どこかでどんでん返しがあるかもしれない。しかし、それはそれで面白そうだなどと考えながら、政宗は真田の入れた緑茶を口に運んだ。

と同時に、その緑茶を吹き出してしまった。げほげほと咳き込む。口元を押さえながら、政宗は幸村を睨み付けた。

「お、お前!こん中に何入れやがった!?」

「苦味と渋味を抑えるために砂糖を少々……」

「アホかあぁぁぁ!green teaに砂糖なんて入れんな、このアホが!アホの最終形態が!」

しれっと言い放った真田の首を、政宗はギリギリと腕で締め付ける。真田の顔がみるみる内に青くなっていった。

「なーんか不安になってきちゃったんだけど」

「取り敢えず、一から茶道を学ぶしかないね」

「なんかよく分かんねぇけど、大変なんだなぁ」

馬鹿2名のやり取りを眺めて溜息を吐く常識派2名と、全く話の分かっていない馬鹿1名。

校内でも有名で高い人気を誇る生徒会の約半分は、実は馬鹿で構成されていた。





恐るべき計画が生徒会室で進められている時、茶道部の部員たちは。

「卿らに教えてあげよう。茶の湯に必要となるのは、まず茶釜と茶杓と火薬と……」

「火薬は必要ねぇだろ、松永さんよぉぉ!」

「喧しいぞ、長曾我部!茶道具ならばザビー様より直々に遣わされたものがある。見ろ、セットで税込価格五万円という良心的お値段で頂いたのだ!」

「おや、同じようなものを先日、百円均一の店で見かけましたよ」

「皆がまとまらないのも、全部市のせい……」

「…………」

勝負以前の問題のようである。



―続―


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