「この作戦はね、上手く出来れば生徒会に利を与えることが出来る。だけど、失敗すれば大損。いわゆる博打のようなものさ」

半兵衛の説明に政宗はいよいよ乗り気になってきた。このようなリスクのある賭け事に対する政宗の食い付きは凄まじいものがある。半兵衛もそれを知っていて、けしかけているのだろう。

しかし、リスクを負うとは言っても、これまで半兵衛はこのような賭けに負けたことがない。用意周到な計画を立てて、相手が気付かない間に形勢をこちらに有利な方へと運んでいるからだ。負ける戦はしない主義だよ、というのはかつて半兵衛が口にした言葉である。

このパターンから考えれば、生徒会が必ず勝利する計画を半兵衛は既に描いている筈である。相変わらず抜け目がないね、と佐助は無言で肩を竦めた。

そんな佐助に半兵衛が何か言おうと口を開いた時、ドカンというけたたましい音が生徒会室に響いた。

音がした方――扉に3人が目をやると、床に慶次と幸村が倒れている。勢いよく扉を開けて、そのまま2人揃って転倒したらしい。

「よっしゃ、今日は俺の勝ちだな!」

「いや、某の勝ちでござろう!」

2人同時にむくりと起き上がって、唐突に言い争いを始めた。生徒会室にどちらが早く着くかを競って来たらしい。

このような遣り取りは毎度のことなので、敢えて彼らに突っ込む者はいない。

「なぁ、半兵衛!今の見てたろ?俺の方が早かったよなぁ?」

「そうだね、君が一番だね、良かったね」

半兵衛は投げ遣りな口調で、慶次の問いに答える。その声音は南極の氷よりも冷たいものだった。

しかし、半兵衛の適当な受け答えに何ら疑問を抱くことなく、慶次は喜んでいた。幸村はその隣で悔しそうな表情しながら、拳を床に叩きつけている。

こんな光景も生徒会室では日常茶飯事となっているのだ。だから、生徒会の中の突っ込み係として校内で知られている佐助でさえ、突っ込むことはない。

「結局、何をやるのさ?」

幸村と慶次のことはさておき、中断されてしまった話の続きをしようと佐助が半兵衛に尋ねた。

佐助の問いに、半兵衛は勿体ぶったような調子で腕を組み直す。

「茶の湯対決だよ。僕ら生徒会と元就くんたち茶道部で茶の湯の勝負をするんだ」

茶道部と茶道で対決する。そんな半兵衛の言葉に政宗と佐助は互いに目を合わせた。幸村と慶次に関しては、最初から話に参加してないものと見なされている。

敢えて相手の土俵で勝負する。そうすれば、自分たちに有利と考えて相手は油断するだろう。そんな心理的効果を利用した作戦を行うつもりなのだ。

ただ、あの変人茶道部が茶道を真面目にやっているかと言えば、そうとも思えないのは確かである。彼らが真剣に茶を立てている姿は想像できない。どちらに転んでも、勝機は十分あると言える。

このような半兵衛の説明を聞き終え、政宗はヒュウと短く口笛を吹いた。

「はんべちゃんは悪どいねぇ」

「お褒めの言葉をありがとう」

半兵衛は佐助の茶化しをサラリと受け流す。軽口を叩きながらも、佐助は佐助で一応感心しているのだ。

「なにやら難しい話をしておられるな。むぅ……某、お茶を入れてきまする」

考えることの苦手な幸村は、この場から逃げるように奥へと向かっていった。この生徒会室には紅茶、珈琲、緑茶、炭酸飲料など様々な飲み物が常備されている。勿論、役員たちの趣味によるものだ。それに伴い、ポットや冷蔵庫という家電も揃っていたりする。

奥の方でガタガタと茶を入れてるとは思えない音を発生させている真田を気にしながらも、政宗たちは話を進めていく。

「俺らが勝てば茶道部は許可しない。万が一、億が一にも奴ら勝ったならば茶道部を許可する、ってコトか」

椅子の背にもたれかかるように伸びをして政宗は呟いた。そして、ふとあることに気付いた。

「それじゃ、俺たちにメリットなんかなくねぇか?」

「そう、だからもう1つ条件をつけるんだ」

政宗の疑問を待っていたと言わんばかりに、半兵衛は答える。その質問は想定の範囲内だった、というよりそのように訊かれるように誘導していたようだ。

半兵衛の言葉に、今度は佐助が質問する。

「もう1つ条件をつける?」

「そう。僕らが勝ったら元親くんを貰う、って条件さ」

唐突過ぎる半兵衛の言葉に、政宗たちは驚きの声を上げた。どこから突然元親が出てきたのか。これまでの話と繋がりが見えてこない。

考え込んでいる政宗と佐助に、半兵衛は種明かしをし始めた。

「君たちに生徒会役員をやらないかって声をかけてた時にね、僕は元親くんも誘ったんだよ」

元親と仲の良い政宗も初耳であった。よく一緒にいるのに、生徒会に誘われたなんて聞いたこともなかったのだ。



3/4
*prev  next#

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -