バイトの愚痴など他愛もない話をしながら、政宗と元親はバーベキューセットを広げていた。2人でやっていたので、準備は思っていたより早く出来た。元親が古新聞に火をつけ、炭の入ったグリルの中に放り入れる。

あとは材料を待つだけだ。毛利もいるので大丈夫だろう、と政宗は思いかけたが一瞬で思い直した。毛利が何かを手伝うようには見えない。早くしろ、と急かしている姿が容易に想像出来る。

そんなことを考えていると、誰かが坂を猛烈な勢いで駆け上ってくるのが見えた。トウモロコシを追っていった真田だ。

「政宗殿、元親殿、申し訳ありませぬ!して、某は一体何をすれば良いのでござろうか?」

すっかり正気を取り戻したようである。転がっていったトウモロコシを食べて、腹の虫も息を潜めたのだろう。手にトウモロコシの成れの果てが握られていた。

正気に戻ったならばやることは一つ、とばかりに政宗と元親は視線を交わして微笑み合った。そして、2人同時に拳を握り締める。

「ぬぎゃああぁぁぁっ!?」

右からは政宗、左からは元親に、真田は頭をどつかれたのだ。こういう時には、抜群のコンビネーションを発揮する。

元親は飛びかかられたのだし、政宗に至っては手をかじられたのだから、これぐらいの仕返しは当然だ。うぐぐ、と真田は殴られた頭を押さえてしゃがみ込んだ。

「おっ、なんかコントでもしてんの?」

真田に仕返しをして満足していると、少し離れた場所から軽快な声が聞こえてきた。慶次がやってきたのだ。片手を上げて、政宗たちに挨拶をする。

コント呼ばわりするのは、真田をどついている光景を見たからに違いない。

「ちげーよ。てか、迷わず来れたんだな」

「ちょっと迷いかけてたけどね。その赤い鉢巻きくんの後ついてきたんだ」

真田の方を指差して、慶次は答えた。海にいた時にやたら目立っていたから分かった、と続けて説明する。

慶次が件の客人であると気付いた幸村は、勢いよく立ち上がって挨拶と自己紹介を始めた。素晴らしい立ち直りの早さだと政宗は思う。

「おぉ、そなたが噂のお客様でござったか!某は真田幸村と申す!職業は高校生!尊敬するのはお館様でござる!好きな食べ物は団子と甘いものとあと何でもいいでござる!」

「俺は慶次ってんだ、よろしくな!職業はフリーターかな?尊敬するのは男はつらいよの寅さんで、好きな食べ物は姉ちゃんが作ったものなら何でもだな!」

真田のマシンガンのような自己紹介に合わせて、慶次も続けた。なかなかノリの良い男だ。内容はともかくとして。

「……っと、忘れない内にこれ渡しとくか」

慶次は手に持っていたビニール袋を政宗に差し出した。中には魚や貝が入っていた。この時間だと夕食の準備でもしているだろうと思って、手土産に持ってきたのだという。

「おぉ、すっげーな!早速焼くか?焼こうぜ!」

妙に興奮している元親はビニール袋から魚や貝を取り出して、網の上に並べ出した。

「むぅ、その猿はぺっとでござるか?」

慶次の肩に乗っていた小猿に興味を持ったらしい真田が尋ねた。政宗も実は気になっていた。

真田に指差された猿は、キキッと小さく鳴いた。そんな猿の頭を撫でながら、慶次は答える。

「ペットじゃなくて、相棒みたいなもんかな?昔からずっと一緒にいるんでね。名前は夢吉ってんだ」

「夢吉殿でござるか!これから宜しくお頼み申す!」

夢吉に向かって真田は手を差し出した。握手を求めているらしい。相手が人であろうとなかろうと、礼儀を尽くす。真田らしい行動だ。

差し出された真田の手に、夢吉もゆっくりとその手を伸ばした。随分と人慣れしている。早速友達が出来て良かったな、と慶次は喜んでいた。

そんな心暖まる交流を、政宗と元親はニヤニヤと眺めていた。

「英語で言うと、dream luckyだな」

「通称どりらき、か。なかなかカッコいいんじゃねぇの?」

「ひっでー!勝手に変なアダ名つけないでくれよ」

盛り上がる2人に、慶次は抗議の声を上げる。当の夢吉もキィキィと文句を言うように鳴いた。

パチパチと炭がはぜる。食欲をそそるような良い匂いが漂ってきた。網に置かれた魚や貝が大分焼けてきたようだ。

「おっまたせー!って、お客さん来たんだ?グッドタイミングだねぇ」

佐助と毛利が材料を持って家の中から出てきた。毛利も一緒に運んでいるということは、佐助を手伝っていたのかもしれない。

2人は持ってきた材料を元親に渡した。焼き係は自然と元親に決定してしまったようである。元親自身も乗り気らしい。

佐助と毛利は、初対面の慶次に挨拶と自己紹介をしようと近付いていった。日輪に関する話で暴走し出した毛利を佐助が抑える。

「やっぱ面白いねぇ、あんたら」

「それに俺様を含めないで欲しいんだけどな」

笑いながら言う慶次に、佐助が口を尖らせて抗議した。羽交い締めにしていた毛利を解放した後、ケイジ……ケイジねぇ、と佐助は顎に手を当て何かを思い出すように呟いていた。



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