結局奴らにぎゃいぎゃい言われ剥がす機会を逃してしまったので、仕方なくこっそり夜中の内に一斉駆除を行った。アイツらがぴーすか寝てる隙に全部ひっぺがしてやったぜ!気分は爽快refreshだ。
そして「貼り紙禁止。貼った奴にはHell Dragon!」と書いた紙を壁の真ん中にドドンと貼っておいた。これでどうだ。こうしておけば大丈夫だろう。無視して貼った奴には問答無用で鉄拳制裁だ。
しかし、周到な俺の対策も奴らの非常識さの前に打ち砕かれることとなった。
翌日、バイトがなかったので講義を終えて直帰してきた俺は再度頭を抱えて叫ぶ羽目になった。
俺の貼った紙の隣に「英語禁止。喋った奴は日輪に捧げ奉る」と書かれた紙が貼られていたのである。
「毛利いぃぃぃ!」
「なんだ?」
「だから気配を消し……いや、何貼ってやがんだっ!?」
取り敢えず突っ込むべきは貼り紙のことだ。これ以上他のことに突っ込みを入れていたら胃と血管が持たない。
俺の問いに、毛利はしれっとした口調で説明し始めた。
「貴様が貼ったこれは貼り紙であろう。貼り紙禁止という旨の貼り紙を貼るなど自己矛盾の塊ではないか」
「なっ!?ち、違ぇよ!こっ、こいつは貼り紙じゃなくてっ!……禁止、禁則事項だ!貼り紙じゃ……」
そこまで言って後悔した。毛利がいやーな笑みを浮かべている。Shit!コイツの策にハマっちまった。焦った俺がこう言うのを予想してたんだろう。だから、俺の貼り紙と同じようなことを書いて貼ったに違いない。
「Goddamn!」
「ふん、知略で我に勝てる筈がなかろう」
心の底からご満悦という感じの毛利の言葉に、俺は完膚無きまでに打ちのめされた。昨日の夜中の苦労は一体何だったんだ!
ガクリと項垂れた俺の耳に、隣からバタバタと騒がしい音が聞こえてきた。
「某の新作、とくとご覧あれい!」
真田が壁の穴から飛び出してきたのだ。手には「団子かくし禁止。見える所におくべし」と書かれた紙を持って。
俺は更に肩を落とした。
「旦那、これも頼んだよ〜」
続いて、佐助の腕がにゅっと出てきた。その手には「偏食禁止。好き嫌い言う奴はご飯抜き」と書かれた紙が握られていたのである。
俺は更に脱力した。
「ただいま!って何面白そうなことやってんだァ?」
元親も帰ってきた。壁に貼られた紙と俺たちとを交互に見比べた奴は、自分も参加しようと紙に何かを書き始めたのだった。
俺は深い深い溜め息を吐いた。
もういいや。何だかもうどうでも良くなってきた。こんなinteriorだって思い込んでしまえばno problemだ。
ただ俺の部屋なのに、俺以外の奴が書いた貼り紙に占領されるのは癪だった。だから、元親が書いてた紙とpenを奪って俺も書き始めた。良いよな、俺の部屋なんだから。好きなようにやってやる!
――結局。
「摘み食い禁止。食べたら夕飯抜きね」「長曾我部禁止。塵と消えよ」「俺の夕飯勝手に食うの禁止。食った奴は海に沈める!」「おやかた様をうやまわぬ禁止。おやかた様は世界一!」「家主虐待禁止。俺の部屋だ!」などと書かれた紙が毎日少しずつ壁に増えていったのである。
この果てしないposter合戦は皆が飽きるまでしばらく続くこととなった。
ここに住んでる奴は馬鹿しかいない気がする。勿論俺も含めてな!
―終―
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