家の中は広く、案外綺麗だった。元親に聞くと、定期的に掃除されているらしい。

しかし、部屋に置かれている家具や電化製品が歴史を感じさせていた。ガチャガチャとチャンネルを回す様式の茶色いテレビ。金属部分が酸化して錆びている青い扇風機。写真などで見たことはあったが、実物は初めて見る黒電話。まるで20ぐらい前の時代で時が止まっているようだった。

「この炊飯器使えるのー?」

「おうよ!綺麗に洗ってから使えって言われたぜ」

台所から聞こえてきた佐助の声に、元親が答える。どうやら台所にある物も古いらしく、使えるかどうか元親は親に聞いてきたらしい。

政宗は気になって台所に行ってみた。冷蔵庫も炊飯器もあるが、随分古い。政宗の部屋に備え付けられているものよりも年代を感じる。

佐助は冷蔵庫を開け、持ってきた食材を入れていた。肉やら野菜やらをきちんと分けて仕舞っている。今日は焼き肉か、と政宗はメニューを予想した。

「こんなんでもちゃんと使えるんだよ。伊達の旦那んトコのとは違うねぇ」

「悪かったな、古くてボロくて使えねぇ冷蔵庫で」

そこまで言ってないじゃん、と佐助は笑う。言ってはいなくても、そこまで考えていることは手にとるように分かる。

政宗はやることもなく、行くあてもなく一人台所をうろうろと歩き回っていた。佐助を手伝おうにも、手伝うほど量はないようだ。だから、ちょうど手持無沙汰といった状態なのである。

真田はバタバタと忙しなく部屋を行き来している。落ち着きがないのは政宗と同じだが、真田は自分から進んで落ち着きをなくしていると言って良い。見知らぬ場所を探検している気分なのだろう。

毛利は居間でぐったりと横たわっていた。先ほどよりも顔色はよくなっているが、それでも目に生気がない。そして、何故か2枚ほど座布団が被せられていた。元親のちょっとした悪戯か、はたまた真田の余計な親切か。分かるのは、毛利が怒る気力も体力もないということである。

元親は押し入れから引っ張り出していた布団を部屋の隅に積んでいた。いつの間にそんな作業をやっていたのか。手伝おうと申し出たが、これでやることは終わりだと元親は笑って言った。

ちょうど、荷物を片付け終えた佐助が台所から戻ってきた。

「昼ごはんどうするよ?今から作れって言われたら、いくら俺でも怒るよ」

「Ah、そうだな。昼メシは海の家かなんかで食うか。良いだろ、元親、真田!」

流石に佐助も長い船旅を終え、長い坂を登って疲れたようだ。そんな佐助に食事を作ってくれと頼むわけにはいかない。

政宗の案に元親は文句もないようである。ちょろちょろと走り回っていた真田を捕まえて聞くと、彼もそれで良いと納得した。毛利に訊く必要はないだろう。

「よっしゃ、じゃあ準備だ準備!海に行く準備しようぜ」

「早速参りましょうぞ!」

そう言って元親は荷物を漁り始めた。真田も待ちきれないとばかりに服を脱ぎ出した。豪快な脱ぎっぷりである。

「毛利さんよ、アンタ行けるかい?ここに残って寝てた方がいいんじゃねぇのか」

「……平気だ。日輪に当たれば我は復活する」

「アンタは植物か」

政宗に声をかけられ、毛利はよろよろと起き上がって準備を始めた。もしかしたら、一人だけ残るのは嫌なのかもしれない。

いつの間にか政宗と毛利以外みな準備を終えていた。元親は真田を連れ立って納屋に向かったようである。佐助は財布やタオルといった必要な物を小さな鞄に詰め込んでいる。やっぱりmamだな、と政宗は密かに思って笑った。

青い水着に着替えた政宗は、サンダルを履いて外に出た。元親と真田が納屋から何かを持ってきているのが見えた。

「浮き輪とかいるだろ?」

ニッと笑って元親が言う。彼らが持ってきたのは、鮫を模したビニールボートや花柄の浮き輪、ビーチパラソルなどの道具だった。昔使っていたものらしい。

元親の隣で、真田はやたら大きい浮き輪に空気を入れていた。道具を使わず、己の口と肺を頼りに。流石にキツいのか、顔を真っ赤にしている。

「おい、真田。行く前に空気入れると荷物になるぞ」

政宗の言葉に、ぷうぷうと浮き輪に空気を入れていた真田の動きが止まった。頬をリスのように膨らせたまま、政宗の方を見る。愕然とした表情だ。

「……ま、自分で持ってくってんなら、文句はねぇけど」

「ふんむーむむーむー!」

「人間の言葉で話せ」

真田は空気注入口に口をつけたまま話そうとする。何が言いたいのかは分からないが、恐らく自分で持っていくとかなんとか言っているのだろう。

そんなやり取りをしていると、佐助と毛利が玄関から出てきた。

「お待たせー!」

「うっし、全員準備できたな!じゃあ行こうぜ!」

元親の一声で、早速出発することとなった。



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