政宗は原付からすっ飛んでいった時限爆弾を急いで拾い上げた。なんだかとても嫌な予感がする。いや、予感ではなく実際聞こえてきているのだ、ピッピッという機械的な音が。

震えそうになる手で、スーパーの袋からそれを取り出す。時計の部分を確認して、政宗は卒倒しそうになった。

「やっぱ思った通りいぃぃ!」

爆弾が作動していた。元親の不幸がここぞとばかりに炸裂した結果に違いない。『09:12』と表示されているのを見て、更に目眩がした。残り10分を切っているのだ。

政宗の異変に気付いた佐助たちが駆け寄ってきた。時限爆弾がカウントダウンを始めたことを知って、皆に動揺が走る。普段から落ち着き払っている佐助も流石に冷静さを失っていた。

「ちょっ、どうすんのどうすんの?こっから警察署まで10分以上かかるよ!マジでヤバくないヤバくない?」

「こっ、この中に爆弾処理班の方はおられぬかぁぁ!?」

相当混乱している真田は、大声をあげながらウロウロと周囲を歩き回っている。こんなところに爆弾処理班がいるわけもないし、そもそも自分たち以外の人間すらいないのだ。元親も頭を抱えて狼狽えている。

この時、坂の下から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「何をしておるのだ?」

毛利だ。ちょうど通りがかったらしい。その姿を見た元親は、泣きそうな表情で毛利に近付いた。

「元就いぃぃ!頼むからドッキリだって言ってくれよおぉぉぉ!」

「意味が分からぬ。散れ!」

己に向かって勢いよく飛び付いてきた元親に、元就はアッパーパンチを加える。そして、一体どうしたのだ、と尋ねてきた。

顎を押さえている元親は放っておき、政宗は今までの経緯を毛利に話した。鼻で笑われるかもしれないと思いながら。

「よもや、ドッキリ大作戦などと言って我をからかうつもりなのではあるまいな」

「あぁぁもう、どいつもこいつもドッキリ大好きだな!違う、全くもって違うっつーの!」

訝しげに言う毛利に、政宗は頭を掻きむしりながら叫んだ。今までドッキリだと言われ続けたのが鬱積していたのだ。

ごちゃごちゃ言うより現物を見せた方が早いと、佐助が時限爆弾を差し出す。それを見た毛利は一瞬ポカンとした後、物凄い剣幕で怒鳴り始めた。

「阿呆か、貴様らあぁぁ!我を巻き込むでない!近付くな!」

「一つ屋根の下に暮らしてんだから一蓮托生だろ、毛利さんよ!」

「一人だけ逃げようなんてズルくない?」

慌ててこの場から立ち去ろうとする毛利を、政宗と佐助が取り押さえる。最早自暴自棄の域に達している2人だった。

どうにかして逃げようと毛利は暴れる。しかし、佐助が腰にしがみつき、政宗が肩を羽交い締めにしているので身動きが上手く取れない。毛利が鋭く叫んだ。

「えぇい、離せ!この先にある川に投げ捨てれば良かろう!」

その言葉を聞いて、政宗と佐助は動きを止める。何故そんな簡単なことを思い付かなかったのだろうか。

「そっか、川だ!川に捨てりゃいいんだよ!」

「それだっ!アンタ変人だけど、頭は良いんだな!」

つい失礼なことを口走ってしまった政宗は毛利に脛を蹴られた。痛む脛を押さえて蹲る。

「旦那、川に行くよ!」

佐助は未だに混乱してうろつき回っていた真田を取っ捕まえて、時限爆弾を渡した。ローラースケートは自転車や原付よりも自由がきく。だから、先陣を切って行ってもらうつもりなのだ。

真田の後を追って道を案内するために佐助は自転車に乗った。その後ろに乗ろうと、政宗はステップに足を掛ける。

元親は倒れていた原付を起こしてそれに跨がる。その後ろに乗るよう政宗は元就に奨めた。しかし、それを元就は頑なに拒否する。

「我に死ねと申すのか」

「いや、日輪同好会の会長なんだから、一番乗り心地の良い特等席を譲ってやろうと思ってな」

会長という言葉に反応した毛利は、さも当然という面持ちで原付の後ろに乗った。元親から受け取ったヘルメットを被る。事故を起こすでないぞ、と彼に念を押しながら。

ふと佐助が真田に残り時間を尋ねた。

「旦那、残り何分!?」

「の、残り5分だぞ!」

真田の悲壮な叫びを皮切りに、彼らは慌てて川に向かって出発した。



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