歩いていた。伊達は、暗い道をトボトボと歩いていた。

結局あの講義が終わった後、切長の目をした男は雲隠れしたのか、何処を探してもいなかった。

そのまま、本日の講義を終えて、あの男の事が気掛かりではあったが、バイトの面接へと向かった。今は、その面接を終えて部屋へと帰っている途中である。

俺は騙されたのか?てか、『日輪同好会』って何なんだァ?あの男は一体何がしたいんだよ?

モヤモヤと尽きない疑問を抱えたまま、伊達は『201』と書かれた扉の前に立つ。

そして鍵を差し込み、カチャリと扉を開いて、中へと入っていった。

――ら。

「政宗殿、おかえりなさいでござるぅぅぅっ!」

「遅かったではないか」

いた。

「な、な、な!?何でアンタがいるんだよおぉぉぉ!?」

例の男が、真田と共にちゃぶ台を囲んで座っているのに驚いた伊達は、思い切り叫んでしまった。

そんな伊達の様子に構わず、男はノンビリと茶を啜っている。

「大声を出すでない。我が日輪同好会の会員らしい行動をだな」

「一体何なんだよ、その日輪同好会って!?」

騒がしく怒鳴る伊達を半眼で見遣った男は、湯飲みを置いて、両手を宙に掲げた。

「日輪同好会とは、その名の通り、この世で一番気高く輝かしい日輪を崇め奉る会だ!その活動内容は、只ひたすら日輪の出没を拝むのみ!」

「どんな会だよ!?てか、俺は会員になった覚えはねぇ!あんなの詐欺だろ!」

恍惚とした表情で説明する男に、伊達は詰め寄る。

会員になりたくて、あの紙に名前を書いた訳ではない。大学側に提出するための書類かと思っていたのだ。

その事を男に告げると。

「詐欺だと?我は学校に出す物とは一言も言ってはおらぬぞ。我が共に出すと言ったのは、入会申請書を我が我に出すという意味でな」

「そんな言い方勘違いするに決まってんだろーがああぁぁぁ!とにかく、俺は会員にはならねぇ!」

何故か勝ち誇ったように答える男に、伊達は会員になる事を全力で否定する。そんな伊達を見た男は、真田の方に視線を向けて、困ったような声音で話し掛けた。

「此奴はああ言っておるが、どうする?会員第2号よ」

「政宗殿ぉぉっ!共ににちりんに身を捧げたてまつむぺぺっ!?」

「何で会員になってやがんだああぁぁぁ!?」

いつの間にか会員になり果てていた真田の額に右ストレートをお見舞いしながら、伊達は声も掠れる程叫んだ。

そんな伊達と真田の遣り取りを見つめていた男が、ポンと手を叩いて呟いた。

「自己紹介がまだであったな。我は日輪の申し子毛利元就!そなたと同じ学科の2年だ」

誰も聞いていないのに、勝手に奇妙な自己紹介を始めた男――毛利は伊達の先輩に当たるらしい。

そんな毛利の自己紹介に応える馬鹿が、ここに一人。

「某は熱・血・高校生!真田幸村でござるぅぅぅ!これから宜しくお願い致しまする、会長!!共ににちりんの為に尽しましょうぞ!」

元気ハツラツに自己紹介した真田に、日輪同好会会長・毛利は満足そうに頷いている。
何故か意気投合しているようだ。

「そなたの日輪に対する情熱は素晴らしい。やはり、日輪は至高の存在であろう?」

「まさしく!やはりサンマを焼くには、にちりんが一番でござぁるうぅぅぅ!」

『それは七輪だぁぁぁぁっ!』

同時に放たれた、伊達と毛利の突っ込みパンチが、真田の頭に炸裂する。

そう言えば、何でこの男が俺の部屋にいるんだ!?真田の馬鹿が勝手に上げやがったのか?いや、この馬鹿が上げようとしても猿飛が止める筈だろうし。

ようやくその事を思い出した伊達が、殴られた頭を押さえている真田に尋ねてみようとした。

その時、202号室から。

「夕御飯出来たよー!そっちに持ってってー!」

という母……ではなくて、佐助の声が聞こえてきたのだった。



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