旅立つ君へ

「ねぇレイク、本当に行ってしまうの?」

そう言いながらボクの腕を細い指で、壊れ物のようにそっと触っている女の子

「うん。母さんにも許可はもらえたし、ソルを探しに行かないと」
「…そう…だよね」

今にも消えそうな音量でそういう彼女は先ほどからずっと下を向いている
ボクの方が少し背が高いから、どんな顔をしているのかわからない
心なしか肩が震えているような気もする

「ナナ?」
「わた、しね……ソルも大切だけど…レイクに怪我、してほしくないよ」

そういう彼女の言葉に、なんて返したらいいのかわからず、言葉に詰まってしまった
どういったらいいのかと悩んでいると、悲しそうな、辛そうな顔でぼくを見上げた

「ごめんね、旅をするんだから、そんなの無理な話だよね…」
「…うん」
「レイクも心配だけど、ソルも心配で」
「うん、ボクも」
「旅に慣れてる人が一緒に行ってくれるって言っても…保障は、ないじゃない…?」

保障、ボクが生きて帰ってこれるのかという保証は、確かに無い
一緒に行ってくれる二人だって、ボクの目的に付き合ってくれるだけでもありがたいのに
命を落とす危険だってある

「うん…でも、ボクが言い出したことだから、ボクがやらないと」
「……うん」
「ねぇナナ」

よく話に聞く、生きるか死ぬかわからない、そんな場面の直前に
将来の夢を語る人は必ずと言って死んでいく。そういうジンクスがあるらしい

「何?」
「すぐ戻るつもりではあるけど…いつになるかわからないけど…」

ボクの腕をそっと握っていた彼女の手を取り、痛くないように握る

「帰ってきたら、次会う時にその…話したいことがあるんだ」
「今じゃダメなの?」

不安そうに見上げてくる彼女を安心させるように微笑む

「うん、ボクのけじめみたいなもの…ダメかな?」

いつになるかもわからない約束なんて迷惑、じゃないだろうか
そう思い彼女に尋ねると、ゆるゆると頭を左右に振る

「ダメ、じゃないよ……絶対に話してね?」
「もちろん」
「約束だよ?」
「うん、約束だ!」

そう笑うと、安心したのか彼女はふんわりとした笑みを浮かべる
その表情に頬が熱くなるのがわかる。

「じゃあ、行ってきます」
「うん…いってらっしゃい、レイク」


旅立つ君へ

(行かないで、なんて言えない)





ポポラマール直後あたりの気持ちです。
 

[ 4/4 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -