ロスアル

 

アルバがもしも
「な〜んちゃって☆」
と言えてたらって言う分岐ルート
前回のお話を読んでいただいた前提の話となってますが、
アルバが「1000年前に彼女とか居たんだろ貴様ぁ!!」
って言ったらロスが怒ったみたい!どうしよう!
とりあえずふざけた事言って場を和ませよう!
ってだけの話なので上の三行を読んでいただければ大丈夫です。多分。











思わず重たい空気に耐え切れずふざけてしまった
でもこれでロスもさっきのことを軽く流してくれたらと思うと安いものだ
この場に似合わない(ひきつっている)笑顔で少しでもよくなってくれるなら

かすかな期待を胸に目を開けると
先ほどより不機嫌になったロスが目に入る

しまった…!

そう思うのと同時に
いつもではありえないくらい強い力で腕をつかまれる
苦痛を訴えるより先に暗がりの路地へとひっぱられていく

「ちょっとロス、痛い」
「当たり前でしょう、痛くしてるんですから」

突き飛ばされるように民家の壁へと放り出される
流石に我慢できない痛みではないが
ボクが次の行動へ移るより早くロスの手が顔のすぐ横を通っての背後にある壁に置かれる
いわゆる壁ドン呼ばれる行為だ

「え、ロス近いんだけど」
「えぇ、そうですね」

軽口すら叩かれないとなると本格的に怒っているらしい
同じ男のボクですらドキドキしてしまうほど顔が整っているロスの顔が
お互いの吐息が感じられるほど近くにある

(好きな相手にこんなことされて冷静でいられるはずないのに)

相手は焦っている様子もないところから
自分の想いはかなうことないものなのだと再認識させられているようで

(なんだか苦しい…)
「ねぇ勇者さん」
「な、何?」
「なんであんなこと言ったんですか」

彼女が居たかと聞いたことなのか、ごまかそうとしたことに対してなのか

「もしかしてオレがモテないとか、思ってるんです?
 勇者さんと違ってそれなりに言い寄られるんですよ、オレ」

そんなことは百も承知だ
実際に1年前に旅していた時だって街によるたびに女の子からの視線を浴びていたのだから


「1000年前のオレの事なんて関係ないでしょ、貴方には」


拒絶にも似たその言葉は的確にボクの気持ちをえぐっていく
苦しさで涙を流すのにはそれだけで十分だった

「…なんで泣いてるんですか、1年たっても泣き虫ですね」
「うる、さい…っ」
「あぁでも勇者さんの泣き顔結構そそられます」

不敵な笑みを浮かべたロスは
さっき腕をつかんできた時と同じ腕とは思えないほどそっとボクの顎をつかんできた
相手が何を考えているのかわからないままでいるとすっとロスの顔が近づいてくる
顎を固定されているせいで顔をそらすこともかなわず思わず目をつぶると
頬にざらざとした何かが触れる

「勇者さんの涙もしょっぱいんですね」
「え?は!?な、何っして」
「何って、勇者さんのほっぺペロペロしました」
「はぁ!?」

さっきまでと雰囲気に変わりはないものの
軽口を言い出したということは少しでも機嫌が直ったのだろうか
そう思い少しほっとすると、ロスの目には全く別のものに移ったようだ

「なんですか、キスでもされると思いました?」

ボクの顎に添えられてた手の人差し指で軽く唇を抑えられる
ロスの形のいい口から

破廉恥

そう紡がれた瞬間、自分の持てる全力の力でロスの肩を押した
 


――――――――――



先ほどより幾分か冷静になった頭で
いきなり予想外の力で肩を押され、文句の一つでも言ってやろうと思い
勇者さんの方を見るとうつむいていて顔色がうかがえない

「…何するんですか勇者さん」

声をかけるが顔を上げる気配がない

「あーあーいきなり力強く押されちゃったんで肩痛いです
 あなたのアバラよりは痛くないですけど」

自信のアバラネタを持ち出しても反応を示さないとなるといったいどうしたのか
そう思い再び勇者さんの方を見ると
本人には変化はないようだが彼の足元が少し黒ずんでいることに気が付いた

なんだこの人男のくせに生理でも来たのかと思ったが
そんなことあるわけもなく。

ポタリ―――ポタッ
「…何ガチ泣きしてるんですか」
「お、おま……お前のっせい、だろ」

年甲斐もなくボロ泣きした勇者さんの涙が地面の色を変えていたらしい

「あーもうめんどくさいですね」
「めっどぐさいって、なんだ…っ」
「はいはい、泣き止んでください、目赤いですよ。それに



 あなたにガチ泣きされると調子が狂う」


今まで幾度と彼を泣かせてきたが、これほどボロボロと泣いている勇者さんは初めてで
正直少しだけ戸惑う
泣かせるつもりはなかったのに、なんて言ったら
それこそ見放されてしまいそうな気さえした








はじめはただ
自分の子孫だとかいうよくわからない集まりに興味を示して城に向かった
そしたらなぜか王宮戦士とやらに間違われ
とっさに昔友人が考えたと誇らしげに教えてきた名前を言ってしまい

そこで勇者さんと出会った

なりゆきではじまった旅だったが、彼のツッコミのキレと
許容範囲の広さにたびたび驚かされ
いつまで続くのかわからない緩やかな日々を永遠にと望んでしまいそうになった
彼の隣に居れる自分が居るこの日々を

伝説の勇者クレアシオンではなく
昔の暗い過去を背負ったシオンでもなく
今この時を生きてるただのロスを

必要としてくれる貴方のそばに居れる日々


それでもオレは貴方と友人を天秤にかけて
友人 を選んでしまった

貴方だけはたとえ伝説の勇者だとしても
変わらず接してくれるのではないかと勝手に期待して
オレが、クレアシオンだとしって、いきなり敬語で話しかけてくるあなたに勝手に失望した

その時に必要以上に心が傷ついた理由は今ならわかるし、はっきりと言葉にもできるが
当時のオレは検討違いな理由を勝手につけて納得した




そして再会した日
視界が貴方を認識した瞬間に、少しだけ世界の色が濃くなった錯覚がした
しかもオレの過去を知った上で、貴方曰く一年前と変わらず接してくれる勇者さんに
心が惹かれない方がおかしかったのだ


無意識なのか意識してやっていることなのか
彼は人の踏み込んでほしくないラインを目に見えているかのように正確に把握しているようだ
ルキの家の事も
ヒメさんの事情も
フォイフォイの家族のことも
オレの ことも
知らなかったと一言で片づけるのは簡単だが
オレには意識的に気にしないようにしているようにも見える
特にルキなんて、10歳の少女が親の後を継いだなんて、だれでも家族のことが気になるはずだ
だからこそオレも、ルキも勇者さんのそばが心地よかったのかもしれない


「勇者さんは」


オレが考え事をしている間に少し落ち着いたのか
もう彼の大きな目から涙はこぼれていなかった

「そんなふうに泣いているより、笑っていた方が似合いますよ」
「…なん、だよ。急に」

言わない方が彼の為だとは分かっている
置いて行かれるものの気持ちもわかっているのに

「オレ、今からガラにもない事言いますけど、笑わないでくださいね」
「は?」

少しでも彼の中に残るなら傷でもいいなんて加虐的な発想ではないけど
どうしてもあなたに伝えたい

「勇者さんの、笑ってる顔が好きです」
「っ…?」
「ツッコミしてる時の声も好きです
 モンスターに襲われたあと肩で息をしながらするツッコミも好きです」
「え?ツッコ、み?」
「黙って聞いててください」

目を細めて睨むと短い悲鳴を上げて泣きそうな顔をしながら必死にうなずく

「あぁ、その顔たまんないですね。
 一緒に旅していた時のシャツからちら見してた鎖骨も好きでした
 ベルト外した時の勇者さんの腰も好きです。」

突き飛ばされた距離を埋めると
真っ赤に染まった勇者さんの耳が見える

「オレと違ってやわらかい髪質も
 触るともちみたいにやわらかい頬も
 見開くと落ちてしまうんじゃないかっていうぐらい大きな瞳も好きです」

耳元でそうつぶやくとこんなに近くに居るのオレですら聞こえないんじゃないかと思うくらいの音量で

「いきなり、なん…で」
「なんでって」

ちょうどいい位置にある腰を抱き寄せると
自分より少し高い心地の良い体温が伝わってくる

「なんとなく、ただ好きって言っても貴方信じないでしょう?」
「…?だって好き…って」
「勇者さんオレは

 あなたの髪の先からつま先まで
 あなたの声から息まで
 あなたを構成しているすべてが好きです

 1000年前、生まれた時からいままでの間、貴方以上に好きな人になんて出会ってません」

そう勇者さんの目を見ながら伝えると
頭の上でもちでも膨らませられるんじゃないかというぐらい真っ赤になると
やはりこの距離のオレですら聞こえるかどうかわからないぐらいの音量で
ボク、も
その言葉がうれしくて、遠くでオレ達を呼ぶ声を聴きながら
勇者さんの体温が完全にオレを包むんじゃないかというぐらい抱きしめあった







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