ロスアル♀

■←この記号で視点を変えてあります。
アルバさん、ロスさんアルバさんで、ロスさん視点オンリーです。

大丈夫だというかたのみどうぞ↓







今日は朝からお腹が重かった
腹痛の時に感じる痛みとは違う痛みと辛さが襲ってきている感じがする

昨日なにか変な物でも口にしただろうか?

そう思い昨日の自分の行動を振り返ってみるものの、当てはまるものはない。
うんうんとうなっていると突然後頭部を鈍い痛みが襲う

「何トイレの真ん前でつったってるんですか。邪魔ですよ、早くどいてください」
「わ、わかってるよ、いきなり殴ることないだろ!!」
「オレの膀胱が破裂したら勇者さんのせいですからね」
「もっと余裕をもってトイレ利用したらいいじゃないか!」

論点はそこじゃないんですが
そういい残しトイレのドアが閉まる

仕方ない、お腹が痛いだなんて言おうものなら全力の腹パンを食らうに違いない
想像しただけなのに悪寒が走る
冗談じゃない、ただでさえお腹が痛くなくても威力がはんぱないのに今の状態で食らったら死ぬんじゃないだろうか
そこまでひどく痛いわけでもないからと、時間がたてば治るだろうと思っていた



支度が出来、廊下にでると、いいタイミングでルキも隣の部屋から出てきた
戦士が前、ボクとルキが少し後ろを並んで歩いていると
ルキが心配そうに眉を寄せて顔を覗き込んできた

「アルバさん、顔色悪いけど大丈夫?」
「え?…大丈夫だよ」

へらりと笑ってみせると、納得はしてないようだけど、追及もしてこない。
たまたま今つらいだけなんだから、わざわざ心配かけることはない。

部屋の鍵を受け付けに渡し宿を出る。
次の街まで、少し距離があるのでいつもよりペースを上げる、と昨晩話していたのだが


(きつ、い…)


お腹の調子は良くなるどころかどんどん悪化している気さえする。
気のせいだと思いたいが、嫌な汗まで掻いてきてる自覚はある

幸い、ルキも戦士もボクより少し先を歩いているので、ボクの状態にはまだ気づいていないようだ
ただでさえ戦闘では戦士に助けられ、普段の戦士からのいびりはルキに助けられているのに、これ以上お荷物になりたくない

そんな気持ちとは裏腹にどんどん呼吸は乱れ、まっすぐに立つことすら困難なぐらいお腹が痛い、お腹というか下っ腹が痛い
前かがみに歩いていると、そんな様子に気づいた戦士がいぶかしげにこちらを見ている

「何してるんですか勇者さん、まだアバラネタひきづってるんですか?」
「ち、がう」
「受けたからって何度も何度も同じ事してたら飽きられますよ?大体あなたはツッコミなんですから無理して笑いを取りに来なくても――」


痛い、いた、い気持ち、悪い
戦士が話しているのにこんな態度だなんて、蹴り飛ばされてしまうというのに思うように体が動かない
脳がぐらりと揺れるような感覚に、踏ん張ろうにも抑えが利かない体は吸い込まれるように目の前の人物の元に倒れていく











朝から何か調子が悪いのかと思っていた勇者さんが倒れた
正確に言うと近寄って行ったオレにもたれかかるように倒れてきた。
いつものように鋭いツッコミが帰ってくると思っていた矢先の出来事で、思わず固まる

その様子にそれまで見守っていたルキがあわててこちらに駆け寄ってきた

「ロスさん!アルバさんは大丈夫!?」
「っ…あぁ…大丈夫ですか、勇者さん?」

ルキに言われて勇者さんの方を見ると、腹部を抱えてうずくまっている。
アバラ…にしてはその位置を抑えるのはおかしい
そんなところを抑えるだなんてまるで――――

「ねぇロスさん」
「……なんだ?」

思考を邪魔され、少しだけ反応が遅れてしまったが、気にしていないのか気にする余裕がないのか
深刻そうな顔でルキが
血の臭いがする
というので自分でもあたりのにおいを嗅ぐと、確かに臭う
近くでモンスター討伐のクエストをやってる勇者でもいるのだろうか
小さな声で勇者さんが吐きそうというので、少しでもこの臭いから遠ざけた方がいいだろう

「ルキ、ゲートを出してくれ、さっきの街に戻るぞ」
「う、うんいいけど、そんな状態のアルバさんを通らせるの?」

やはり無謀だろうか?このあたりはまだ数が少ないが、モンスターがいないわけではない
そんな中けが人を担いで無事に街まで辿りつけるのも同等に無謀な気もする

仕方ないと一着しかないスーツを勇者さんに着せようと足元に座ると、血の臭いが濃くなった
思わず周囲を警戒するが、さきほどまでと変わったところは見受けられない
ふと視線を勇者さんの方へと滑らすと彼のズボンに違和感を覚える
いまだに腹部が痛いのか、つらそうにさすっている

「……勇者さん」
「っ…な、に」
「失礼しますね」

返事も聞かずに勇者さんの腰のベルトをはぎ取るとズボンをずりおろすと信じられない光景が広がる

「まっ何…!」
「あの、勇者さんって」

ズボンをずり下した先にあったのは予想していた男性用下着ではなく
赤い血が染みた女性用下着だった





「女性、だったんですか?」












痛みと吐き気で朦朧としている意識の中で、いきなりロスに謝られたかと思うと、勢いよくズボンを脱がされる
羞恥よりなによりその事に驚きを隠せずにお腹の痛みも忘れて固まってしまった

戦士の目の前に何が広がっているのかなんてボクには見当もつかないことなのだが、
内またに何かが伝っていく感覚だけは鮮明に伝わってくる
戦士
そう彼に呼びかけると大げさだろというぐらいに肩が…というか体が揺れた

「なん、ですか」
「…この、体制……お腹痛い」

羞恥よりなにより、お腹が痛いことの方が切実なのだ

なんとか今朝までいた街までたどり着いたときにはすでに日もくれていた
宿に行くと丁度良くシングルとダブルが1部屋ずつ開いているらしいので、鍵を受け取ると1つは戦士が
もう1つはルキが持つ
戦士にささえてもらいながら廊下を進み、あてがわれた部屋の前に来たところで、ルキが疑問の声を上げる

「ロスさん、なんで私の鍵、二人部屋の鍵なの?」
「なんでってお前…勇者さんとルキで」
「?アルバさんはロスさんと一緒の部屋でしょ?」

なんでもいいから早く座らせてもらえないかなと思っていると、珍しく戦士が折れたみたいで、結局いつも通り
ボクと戦士、ルキという部屋割りになった

入り口近くのベッドの前に来て腰を下ろ、したかったのに戦士はそのままベッドをスルーして洗面所の方へと向かう

「戦、士…座りたい…」
「ダメです、今のまま座ると、シーツが真っ赤になりますよ」

それは嫌だなぁと回らない頭で必死に考える
洗面所に押し込められて、戦士の方を見ていると、ごそごそと宿に着くまでにルキが買いに言った袋を漁っている
お目当てのものを見つけたのか
はい。
と手渡ししてきた

「さすがにそこまでオレも面倒見切れませんから…使い方わからないとかいいませんよね?」
「っ…書いて、あるしたぶん…大丈夫」

そう伝えると不安そうな顔をしているものの、どこかそわそわとしながら
下着変えないと床に座るのも禁止ですからね
と言い残して洗面所から出て行きドアを閉めた

お腹が痛いのを必死で我慢しながら、今まで身に着けていた
下着を脱ぐと、思ったよりぐちょぐちょになっていた
今までこれを付けていたのかと思うと、少し気が滅いる。



下着も変え、ナプキンも付けて洗面所を出ようとすると
今までで一番強い痛みを感じて思わず倒れこんだ
大きな音がしたせいか、戦士が飛び込んできた

「勇者さん!?」
「ご…めっ」
「平気です、痛いんですか?立てますか?」

立てないと顔を横に振ると突如浮遊感に襲われる
かと思うとすぐにぽすりとやわらかい何かの上におろされる
なんだか今日の戦士優しいな
そう思っていると顔に出ていたのか
病人を殴るほどおちぶれてませんから
と独り言のようにつぶやく

「何か食べますか?貴方朝も食べなかったでしょう」
「う…お腹すいて、ない」
「食べないとだめですよ…無理に食べさせて吐かれても困りますから今回は多めに見ますけど」

戦士の声が心地よくて気持ちよくて、聞いてるとだんだんうとうとしてきた
それに気づいたのか、戦士が小さく笑った気がした

「眠いんですか?じゃあさっさと寝て体力温存してください、話によるとその痛み、1週間続くらしいですから」
「えぇ…いやだなぁ…」


ははっと笑うと、戦士の手が額に置かれる

「貴方がそういう調子だと、こっちまでおかしくなるので、バカはバカらしくバカなことしててください」
「ば、バカバカいうなよ…でも、その…今日はごめんなさい」

足手まといどころか、引き返す羽目になってしまって
そう伝えると
子供はそんな事考えなくていいんです。
そういって頭をなでられる
戦士はまるですべてわかっているかのように、ボクが弱るとこうやって甘やかしてくる
子供なんだからと、子供だからと
そのたびに戦士との歳の差を実感して胸が締め付けられるように痛いのだ











勇者さんが手を握っていてくれないかとうので手を握ると
安心したのか比較的早く夢の世界へと旅立ったようだった
薄く口を開いて息をしている彼女の顔をそっと覗き込む

いつも健康的な色をしている勇者さんの肌が今は青白い
あんな風になるまで我慢するなんて、ドMなんですか
そう聞きたくとも相手は今夢の中である
そして明日からもこの痛みは続くらしい。











次の日の朝、昨日とは打って変わって一昨日のように元気になっている勇者さん

「…勇者さん?」
「あ、おはよう!戦士」

あ、おはようございます。
と思わず返事をすると満足したのかスキップ(できてない)をしながら洗面所へと消えていく

勇者さんが女性だなんて、思いもしなかった
髪も短くて、言葉遣いも男のようで
女顔だなとか声高いなとは思っていたが、そういう顔つきの奴だっているし声変わりがまだなだけだと思っていた

勇者さん自身だって自分を女だといわなかった…
いや普通私は女ですとか言わないか
言わないとしても異性と同じ部屋での寝泊まりなんて拒否するのが普通のはずなのに
ルキが旅に加わってからも、加わる前も、一度もいやだと言われたことはない
もしかして旅費の事を心配して…とも思うが勇者さんだし、たぶんそれもないだろう。

体の方も女だなんてまったく思えないぐらい平らだ。いやよく見たことはないが
野郎の体を隅々までみる趣味なんて持ち合わせていない。
普段は服の上から鎧を付けているから確認できないにしても風呂上りとか、そこまで気にするほどではなかった

1人悶々と悩んでいると顔を洗ってすっきりした勇者さんが現れた
戦士は身支度しないの?
なんて陽気に聞いてくるので思わず

「ったいな!何するんだよ!!」
「すみませんつい。」

背中を思いっきりはたいてしまった
身支度より何より

「聞きたいことがあるんですが、勇者さん」
「へ、何?」

いままでなんで女性だってこと、隠してたんですか
こういう時回りくどいやり方は好きじゃない。
直球で聞くと目の前にある顔がぽかんとしたアホ面になった

「隠して…ってなんのこと?」
「………は?」

何言ってんだこの人。
じと目で勇者さんを見ると少し頬を紅潮させてしどろもどろに話し出した

「だ、だって、戦士だってボクとおなじ、でしょ?昨日はたまたまボクが変な物食べちゃってたってだけだしっ
 血がいっぱい出てきたのにはびっくりしたけど、そういう食べ物だったのかなぁ…」
「…よく意味がわからないですが何言ってるんですが勇者さん、食べたらケツから血が垂れるなんて食べ物この世に存在しませんよ
 貴方…オレの質問の意図理解してないですよね?」

念の為に確認すると気まずそうに体を揺らす
こいつ……

「何聞いてるかわかってますか」
「わか……らないですすみませんお願いなのでぐりぐりしないでいだだだだだだだ!!!!」
「いったい何が理解できてないんですか?空っぽの勇者さんの頭でもわかるように説明するので教えてください」
「か、からっぽじゃない、よ!何って言われると困るんだけど…」

拳でぐりぐりしたところを涙目でさすりながらうんうんうなっている。
…そろそろ朝食の時間か

「あ、あのね戦士!」
「はいなんですか、お腹空きましたね」
「人が頑張って考えてたのにお前そんなこと考えてたの!?」
「はいはいすみませんね、で?なんですか」
「あの、ね…女性って何?」



「なん、え?何言ってんですか本当に脳みそ入ってないんですか?」
「入ってるよ失礼だな!!だってわからないんだよ!」

わからないって、そんなことありえないだろ、生きていくうちに自然と理解する問題のはずだ
それとも家族以外誰もいない状況で育った、とか?いまどきそんな辺境なんてあるのか?

「うちの周り山ばっかりで、母さん以外動物たちしかいなかったし…人に会うのもお城に行ったのが久しぶりだったし…」
「勇者さん、それどこの世界の話ですか?」
「この世界だよ!?」

「はぁ…とりあえず、オレと勇者さんは違うので」
「え、戦士人じゃないの!?」
「いや人ですけど…そういうんじゃなくて勇者さんは女で、オレは男なんですよ」
「なんで?」
「なんでって…」

なんだこいつ幼稚園児か何かか?
今なら子供に「赤ちゃんってどこからくるの?」って聞かれた親の気持ちがわかる…
流石に何も知らないこの人に下ネタ言っても通じないだろう
また何それと純粋に返されてリターンエースを決められるのがオチだ
つまりこれは…

「勇者さん」
「何?」

勇者さんの手をとり、何も言わずに引き寄せるとなんの抵抗もなくベッドに倒れこむ
状況を理解していない勇者さんに追いかぶさると、警戒心のない、大きい目に自分が写りこんでいるのが見える

「どうしたの、戦士」
「教えてあげますよ、なんでオレが男で貴方が女なのか、たっぷりと」

身体に、と言いかけるとオレの横顔に強烈な膝蹴りが炸裂した

「もーロスさん!!何やってるの!」
「ルキ、お前なんで…」
「いつまでたっても二人が出てこないからゲート使って入ってきたの」

ぷりぷりとしながら怒っているルキに
ごめんね、待たせちゃって
と言いながら勇者さんは頭をなでているが、そいつ今人の顔面に何の躊躇もなく膝蹴りしてきたぞ…

「アルバさん!今日の夜からは私と一緒に寝ようね!」
「え?いいけど、ルキは嫌なんじゃ…」
「いやじゃないよ!お風呂も一緒に入ろうね!」

なんだかんだで可愛いモノに弱い勇者さんは嬉しそうにうんと笑うので口がはさめない。
じんじんと痛む頬を抑えていると、勇者さんと一緒にドアに向かっていたルキがこちらを振り返り走り寄ってくる

「ロスさん!」
「…なんだ」
「うぅ怖い顔…ロスさんがあんなに見境ないとはおもわなかったよ、女の人ならだれでもいいの?」
「は?何言って」
「そうじゃないんならアルバさんを泣かせるような事、しないでね?」

にっこりと笑った彼女に思わず鳥肌が立つ
普段は(主に勇者さんが)可愛いかわいいと言っている彼女の笑顔がこんなに怖く見えたことはない
何も言い返せずにいると、ルキがいないことに気付いたのか、廊下からルキを呼ぶ勇者さんの声が聞こえる。
はぁーいと返事をして遠のいていく彼女のピンクの髪がドアの向こうに消えて、ようやく体が動いた

女の人ならだれでもいいの?

先ほどの状態をいつからみていたがわからないが、そうとっても不思議ではないということと
どれだけ自分は手が早いんだという後悔が押し寄せる
今まであの人をそういう目で見たことはもちろんなかったし
そういう目で見る予定もなかった、男同士だと、そう思っていたのだから






 

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