さびしい

 


私には、幼い頃からずっと一緒にいた幼馴染兄妹が居た

同い年の子供がなかなかいないこの村では自然といつも一緒に居ることが多かった私たち
すごく幸せだった
毎日が楽しくて、彼が居て彼女が居て、私たち三人とも、早くに両親を亡くしていたので
それもあって、同じ家に住んでいたし、朝から晩まで、それこそずっと一緒に居た。

彼と私が働いて、家に帰ると彼女がご飯を作って笑顔でお迎えしてくれる
本当に本当に幸せだった。






それなのに、突然そんな日常が終わってしまった。
私の方が早く仕事が終わったみたいで、先に家に帰るといつものように笑顔で迎えてくれる彼女がいなかった
不審に思い、家の中を探すと台所で倒れている彼女を見つけた
血の気が一気に引いていくのがわかる
振るえる手でリビングのドアを開けると、ちょうどそこに帰宅したばかりの彼が立っていた
青ざめた私にどうした?と話かけてくる彼にはまだ彼女は見えていないみたいだった

「アウラ?なにかあったのか」
「フォイ、フォイ…ま、マルーが…」

そういうと彼も妹の姿が見えない事に気が付いて、部屋の中を見渡した
倒れている彼女を視界にとらえたのか息をのむ音が聞こえる

「医者、医者呼んでくっから、あいつのそばに居てくれ!!」

それだけいうと家を飛び出して行ってしまった
こんな時間だ、診療所だっておそらくもう締まってるだろう

飛び出していった彼の背中を見送って、私はのろのろと彼女のそばによる
微かだが息はしているようで、それだけの事なのに少しだけ安心した






医者でも彼女、マルーの病気が何かわからないということだった
前例がないだのなんだの言っていたが、とにかくよくわからない病気ということなんだろう
マルーの部屋にごてごてとした機会が搬入され、今それが彼女の命をつないでいるということだった
彼女の寝ているベッドの横に座っていると、先生の話を聞き終えたフォイフォイが部屋に入ってきた

「治療法とやらがわかるまでは、このままにすることしか手はないそうだ」

フォイフォイの方がつらいはずなのに、私に気を利かせてくれているみたいだ
彼にとっては唯一の肉親なのに

「なぁアウラ、オレ、勇者になってこようと思う」
「…は?いきなり何言って…」

突然おかしなことをいいだした彼の方に顔を向けると、一枚のビラが目の前に差し出される

「”魔王復活の兆し、集まれ若き勇者の末裔たちよ!今こそ立ち上がる時!!”……何これ
 しかも月給とか書いてあるけど…」
「結構いい額だろ」
「確かにそうだけど…フォイフォイが勇者?」

確かに器用だし、ある程度のモンスターだったら素手でもやっつけてしまえるだろう
それぐらいの実力があるのは知っている

「治療法とやらが見つかっても、それを受ける金がいるだろ?
 マルーを今の状態に保ってるこの機械だって無償じゃないんだ」
「それは、そうだけど…危ないよ!ただでさえ城下町に行くのだって大変なのに
 その上魔王討伐なんて…」

心配、だよ
すると頭に手を置かれる、小さい子を安心させるようにぽんぽんと

「大丈夫だ、金の事はオレが何とかするから、その間マルーの事頼む」







そういって彼が勇者になるべく旅立った日から1年たったぐらいだった。
いきなり手紙が来たかと思うと

勇者より給料がいいから執事になったぜ

という謎の1文だけだった。

「何これ…マルー…お兄ちゃん何してるんだろうねいったい」

毎月お金が入ってきてはいるので、元気に働いているんだろうとは思う。
頻繁にとは無理だろうが、たまには帰ってきてくれないだろうかという気持ちもある。

きっと、一目ぼれだった、幼いながらに一目見た時から彼の事が好き、だったんだと思う
それでも今のままの関係の方が
変に壊れるぐらいならこのままの方がいいってずっと思ってた
けど

(そういえば、今の王様って一人娘が居るんだよね…)

いやいやそんなことはないだろう。たぶん…きっと
マルーが寝込んでから、住民が1人減ったこの家は、少し広くてさみしい
わがままなんて言ってはいけないことだってわかってるけど

「会いたい、な」

手紙だけじゃなくて帰ってきてくれた方が何倍もうれしいのに、私も、マルーも














毎月の日課、いや毎日というわけではないから日課とは言わないかもしれないが
オレは故郷の家族の元に手紙を出している。
もちろんふつうに。決して毎日書いている日記みたいな文章ではなく。

正しくは家族、と大切な人に向けて手紙を書いている。

毎月会いたいと思ってはいるのだが、オレの上司にあたる人物がなぜか今城にいないみたいで帰る暇すらもらえずにいる状態だ

会いたい会いたい
妹はもちろんあいつにだって会いたい
久々に会って声を聴いて、はにかむように笑うあいつの顔が見たい

年がら年中一緒に居た時は気付きもしなかったが、こうやって離れてみると
情けないことながら、どれだけあいつの存在が出かかったのかを思い知らされる

でももう少しだ
もう少しで帰れる、もうこの茶番に付き合わされることもなく
大切な家族の元に変えれる

昔みたいに、また3人で仲睦まじく
長い時間離れ離れになってさびしい思いなんてしなくて済む
あいつに、好きな男が現れるまでは、一緒にいられる

それだけを励みになんていったら誰かに怒られるかもしれないが
今のオレにはそれだけがすべてだった

ここ1年世話になったやつらをだますのに心が痛まないわけじゃないが
家族の為なら、どんなに汚れたってかまわない


こんなオレでも、彼女は共に笑い合ってくれるだろうか


君にそばにいて欲しかったこと




 

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