青年と

 

戦士と勇者と魔王がのんきに話をしていたところ
近くの岩場で、こちらを覗き見している二人組が居た

「あれが魔王か…よし、殺るぞ」

異様に目つきの悪い金髪の青年と

「ちょっ、ちょっとまって下さい勇者様!!」

ひげを蓄えた小さな老戦士

「解ってるよ、話しは聞いてた、確かに魔王はそんなに悪いヤツじゃなさそうだ
 でもよ、そんなのないんだよカンケー
 魔王を殺れば金が入る、それだけさ」
「そんなコトさせませんぞ!」

老戦士は自身の腰に携えている剣に手を伸ばす

「さからうのか?オレに?勇者のオレに?」
「誰であろうと!ひきません!許しません!!







 幼女をキズつけるヤツはワシが許さんのじゃー!!!」

ズバーン!ぎゃー!!!

「うあー!殺っちまった!!キモくて!!」

堂々とロリコン宣言をした老戦士を思わず自分の得物で切ってしまった彼を
恐らく誰も責められはしないだろう…たぶん。

「…魔王との戦いで散ったことにしよう」

この勇者最悪である。
その時岩の影から黄緑の生物か顔をのぞかせていた

「何か声が…」
「!ちっもうメンドロくせぇ!!」

振り向いた勢いで黄緑の生物に自分の右腕に装着している武器で切りかかる

「テメェもぶっ殺れてろっ!!」
「え!戦士!!」

岩場から少し離れているニゲルからは金髪の勇者の姿は見えないが
戦士に何か危機が迫っていることだけはわかった

だがこの距離では今からは知っても間に合わない

ガキィィン!!

土と岩しかないこの辺一帯に金属がぶつかる音が響き渡った

「お前…生きてたか…」
「この程度のキズでくたばるものか!」

戦士と金髪の間に割り入ったのは、先ほど切りつけられていた老戦士だった

「年寄のしぶとさ、なめるなよ小僧!」

だが、生憎、老戦士の身長は小さく、金髪の腰から胸あたりまでの高さしかない。
そして恐らく戦士と金髪は同じくらいの身長だろう
つまり

「届いてねええ!!」

被り物ごと切られた戦士は額から血を吹出しながら倒れる

「戦士!!」
「まぁテーメが生きてろーと死んでろーと
 オレはもう覚悟している




 テメェら全員ぶっ殺とばすっ!!」
「させんよ…幼女はワシが守る!!」
「……あのさ、魔王って数百歳だと思うんだ、実際は
 祖父が1000歳以上だろ?」

そう金髪の青年に指摘され、驚きを隠せない老戦士は
いっきにやる気がそがれたのか

「すいませんおじいさん!もう少しだけ足止めを…」
(あれ?目から闘志が消えてる…!?)
「すまん若いの…」
「え?はい」
「背中かゆいから帰る」
「そんな理由で!!?」

すっかり闘志が消えた老戦士が青年の前から退くと、再び青年が武器を構える

「うわっ!魔王!魔王っ!!」

間一髪のところで魔王が開いてくれたゲートに戦士ごと飛び込む
あ、アバラが…痛い…メキメキ言ってる

「ちくしょう…二回も…」
「だっ大丈夫?」
「君魔王でしょ!?何か必殺技ないの!!?」
「ゲートしか…50mしか移動できないし…」
「1000年以上生きてるくせにー!!」
「ひどい!!わたしがルキメデスと魔王の名をついだのは最近だから―――



 まだ10歳だもん!!」

魔王と話しているといつの間にか青年がすぐそばまで来ていた

「ちょこまか逃げんなよ」
「「!?」」
「じゃあな」

再び武器を掲げた彼の頭上から、踵落としが繰り出され、金髪の青年は地面に伏せる

「させんよ!」

そうかっこつけて現れたのは先ほど背中がかゆいからと帰ろうとした老戦士だった

「クソッ!おいぼれが…!」
「まって!なんで勇者同士で戦わないといけないの!」
「?勇者同士…?
 テメェの格好のどこが勇者だってんだ!」
(たしかにー!!)
(そういえばまだ囚人服だったね…)
(そうだね…すっかり忘れてたよ…しかもなんか…)

ふと自分の同行者を見渡すと違和感。
囚人服を着ている自分と
三代目ルキメデス(魔王)と
謎の生物in戦士

(なんだこのパーティー…思ってたのと違う…)
「正直テメェらが誰モンだろうと、オレは魔王の首が取れればそれでいいんだよ!」
「そんな…」

正直ぼくは関係ないんじゃないかとか
すごく人でなしな事言ってるとかいろいろとあるけど
荷物の中から手さぐりで自分の剣を探し当て青年にむかって構える

「しかたない!行くよ!二人とも!…って」

話しに飽きたのかなんなのか。老戦士と魔王が団らんしている





なんとか共に戦ってくれるようにお願いすると
幼女を戦わすなんて…!と言ってきたので貴方だけでもお願いします。
と頼んだところ
別にいっすよー
とかえってきた。

「ニゲルさんと言ったかな?」
「はい?」
「実は結構腹のキズがヤバイ」
「えっ!?」
「だからワシがオトリになるからその隙をつけ」
「そんな…っ」
「ふふ…ワシの首のイレズミを見てくれ…」

そう促されて自分より少し低い位置にある彼の首筋を見ると


ロリ魂


「どう思った?」
「恐怖すら感じました」
「ワシは12歳以下の女の子しか愛せない恋のシンデレラなんじゃ」
「別にかっこよくないですよ、そのフレーズ」
「けどな…世間から後ろ指さされるそんな愛じゃがな…
 この愛は本物だという誇りはある」

カッコいい。かっこいいけど恋のシンデレラ
かっこいいけどロリコン

「惚れた女のためになら死んでもいい」
「えっ」
「いくぞ!ニゲルさん!」
「待って!おじいさん!!」

意を決して青年へと向っていくおじいさん
のはずだった
ドーン
という効果音と共に有ろうことかいつのまにかスーツ?を脱いでいた戦士が
おじいさんを蹴り倒した

「なにしてんだー!!」
「別に恋はしてないですよ。
 死に急ぐなよジーさん、君のためなら死ねるなんて弱いヤツのセリフですよ
 惚れた女がいるなら、そいつのために生きてろよ」

そういうと戦士はぼくと青年の間に立つ

「おい、茶番は終わったか?」
「何?茶番が終わるのを待っててくれたんですか?ショッピーですか?」

人を見下すようなその笑顔…似合いすぎててぼくの戦士が怖いです

「テメェ!」
「茶番は終りだし、お前の出番も終わりですよ。
 危ないんで下がっててくださいね勇者さん」

戦士の言葉にうなずき一歩後ろに下がると左腕に装着している機械のとってらしき場所を
思いっきり引くと、方の部分にある筒状のところからけたたましい音と共に煙が上がる
…ちょくちょく気になってはいたけど、その機械はいったいなんなんだろうか…

「なるほどな、それがテメェの奥の手ってやつか?
 いいぜ理解ったぜ…じゃあオレも見せてやるぜ、奥の手をよぉ…」

そういうと青年も右腕の装備をガチャッと鳴らす

「残忍な刃-グラオザームクリンゲ-」

技名らしきものをつぶやいた途端、戦士の剣が青年の顎をかち割るように振り上げられる
カキーン
きれいな音を立てて青年は星になった。
…ことはなくすぐそばの地面にめり込んでいる

「うむ。コレはワシが責任をもって王のところへ連れて行く、いろいろと事情を話しておこう」
「すいません…よろしくお願いします」
「ハッハッハ気にするな」
「じゃあオレ達は町に戻りましょう。魔王に被害届取り消させてちゃんと釈放しますから」
「え!?」
「いやなんですか?マゾですか?」
「違うよ!!嫌じゃないよ!取り消してくれるならなんで最初からそうしてくれなかったんだって驚きだよ!」
「あぁ…オレ、人の絶望に染まった顔見るの好きなんですよ…」

理由を聞くと頬を赤く染めて恐ろしいことを告げられる

「しみじみ言うな!」
「特に勇者さんの顔が最近お気に入りです」
「聞きたくなかった!!」
「とりあえず町に戻る前に着替えてください。それじゃ町中歩けないですよ。」
「あっそうか…」
「一応勇者さんの分も装備買ってあるんですよ。
 昔の偉大な冒険家が着ていたといわれている装備です」

ごそごそと袋をあさり戦士が取り出した服は青のミニスカに白と赤のヨコシマ模様

「ウォーピー!?ってえ、なんでスカート?」
「スカートはオレの趣味です」
「趣味!?」
「着てくれますよね勇者さん。着てくれないと今着てる服脱がしますよ」
「笑顔で脅迫しないでくれる!?ぼくがもともと着ていた服はどこさ!」
「あぁ、オレがねこばばしました」
「なんで!?あ、いややっぱり聞きたくない…」

絶対こいつしょうもないことしか言わないだろ…!
かといえこのままいるわけにもいかずどうしようかと迷っているといきなり戦士がよりかかってきた

「えっ!ななななななに!?」
「…あーすみません。血を流しすぎたみたいで」
「え!?大丈夫?」
「あー…大丈夫じゃないんで、ちょっとひざまくらしてもらっていいですか?」
「なん、で?」
「勘違いしないでくださいよ、地面とか岩よりはぶっにぶにの勇者さんの太腿の方が幾分がマシなだけです」
「わ、解ってるよ!もう!」

寄りかかっている戦士を倒さないように注意しながら座ると仰向けに寝転ぶ

「静かにしててくださいね、起こしたら殴りますよ」
「解ってるって」

寝息を立て始めた戦士の寝顔を魔王と一緒に覗き込む。

「…寝ちゃったね」
「うん、そうだね…ねぇ……あー」
「ルキでいいよ」
「じゃあルキ、ぼくの服どこにあるか知ってる?」
「うん知ってるよ。でも…」
「着替えれないけど荷物から出しててくれると嬉しいんだけど」
「うん!わかった!」

小さな魔王にお願いをすると嬉しそうに荷物のところへと駆けていく

(ニゲル)
(アルバ?どうしたの)
(足、しびれるだろうけどがんばってね)
(え゛……あぁ…うんそうだね…)

起きた戦士につつかれないといいなと思い、怖いくらいにきれいな赤い目を閉じている戦士の寝顔をじっと見つめる
やっぱりセクハラしなかったら人をからかったりしなければかっこいい

少し熱くなる顔に気づかないふりをして、いまだ戻らない小さな魔王へと視線を移した





その時とある町の宿
ガシャガシャと金属が当たる音とそれに少し反響したような高い声が響く

「勇者様勇者様ー!」
「なんだよぉうるさいなぁ…寝てたんだぞ」

けだるそうに肩ひもをずらして起き上がる水色髪の女性

「王様からの速達ですよ!」
「あぁ?」

鎧を身にまとった少女から受け取った紙を凝視する女性

「手配書?」

その紙には

元勇者
ニゲル
王国を裏切り魔王に協力した疑い
生死は問わず。

そう書かれていた






(あぁ、ちょっとずつ違いはあるけど…進んでいくな)
(何一人で納得してるの?)

 

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