こい

 

「ピキャー!!」

そう鳴きながらたいあたりしてくるスライムを装備している剣で切る
といっても切断されずに少し前方に飛んでいったのでどちらかというと殴る。
が正解のような気もする。

初めてのモンスターとの戦闘で、いまだに心臓が鳴りやまない
話しに聞いてはいたが今のが、モンスター
緊張から出てきた汗と、鼓動の乱れによって呼吸も乱れている

肩で息をしていると背後で見守っていた戦士が失礼な言葉を投げかけてきた

「何ハァハァ言ってるんですか勇者さん?変態ですか?」
「えっ!?」

戦士の発言に驚いた、今この人は何を見てたんだろう

「何って見てなかった?ぼく今スライムと戦ってたよね!?」
「あぁ、スライムフェチですか」
「ちがうよ!!第一なんでぼくばっか戦ってるのさ!
 お前戦士だろ!?」
「なんでって


 スライムってベトベトするじゃないですか」
「ベトベトするから何っ!?」

潔癖症化この人!!

「それに…」
「…それに?」
「スライムでベトベトになった勇者さんが見たかったので」
「正直ぃ!?それ言っちゃいけないよね?普通言わずに思っておくことだよね!?」
「やだな勇者さん、それじゃあオレむっつりじゃないですか」
「どっちでも最悪だよ!!」
「ったく…しかたないですねー次は戦ってあげますよ」
「絶対だよ!約束だからねっ!!」

次の街までまだ少し道のりがある。
すると街道脇から黄色い首の長い生き物が現れた

[ニセパンダが現れた!]

意気込んで腰のホルダーから剣を抜き取ると、その剣を戦士に叩き落される

「へ!?なんで!」
「なんでって、危ないですから」
「敵を目の前にして武器を持ってない方が危ないよ!?
 そしてさりげなく胸に手を持ってくるな!!」
「チッ…」
「最低だなお前」
「いやーそれほどでも」
「褒めてない!!」

そして目の前のモンスターよりやっかいな敵が背後にいるのだと思い知ったのである。
このセクハラ魔人が…!

そう恨めしそうに睨みつけると

テレテレッテーン

と戦士から音が聞こえた

「え!?なんで!?なんで今レベルアップしたの!?」
「いやーなんか…真っ赤な顔しながら睨まれるの萌えって思ってたら」
「なんのレベルが上がったの!?」

戦士がわからなさすぎて怖い

(萌えレベルでも上がったのかな)
(冷静に解説しなくていいからね…アルバ)

内なる親友も戦士に出会ってからはこんな調子である。

「さて、勇者さんもうすぐ次の街です」
「え、あ本当だ」
「二人部屋空いてるといいですね」
「え!?」
「二人部屋空いてるといいですね」
「なんで二回言ったの!?」
「大事な事なので」
「宿の部屋は別々だからね!一緒とか断固拒否だから!!」
「…え?」

なんでそんなショックを受けた顔をしているのか。
…そりゃあほかに部屋が空いてないなら、仕方ないけど

そうニゲルが思っている時点でフラグが立ってしまっている事を
アルバしか知らない。










宿に着くとアルバの不安が的中した
しかも…

「すみませんねぇ今シングルが1部屋しか空いて無くて」
「え…」
「あぁ、それで平気です」
「は!?」

それだけいうと戦士は受け付けのおばさんから鍵を受け取りぼくの腕をひっぱっていく
背後から
若い子はいいわね〜
なんていうおばさんの言葉が聞こえるがそれどころじゃない。

「え、ちょ…戦士!?」
「なんですか」
「ひ、一人用で二人も寝れるわけないだろ!」
「大丈夫ですよ。勇者さんがオレに抱き着けばいけます」
「なにその前提!?しないよ!そうなるならぼく外で寝るから!」

あてがわれた部屋の前に着ていたが、この人と密室で二人っきりとか耐えらるわけがない!
外で寝ると伝えた瞬間視線だけで人が殺せるんじゃないかという眼光で睨まれた
小さい悲鳴が自分の意思とは関係なく口から発せられる
それが聞こえたのかどうかはわからないが、やや乱暴めにドアを開けると
部屋の中にぼくを押し込み、背後からはドアと、鍵が閉められる音がした

「勇者さん」
「な、なに」
「貴方が今まで住んでたところがどんなところか知りませんが」

いつものふざけたような物言いではなく、真剣な声、顔
性格に多少難があるが、きれいな顔をしている戦士にそんな風に見られたら
世の中の女性の大半は落ちてしまうんじゃないだろうか
何にってそれは――

「城下町から近いので、ここもそこそこ人が多いです。
 そんなところに貴方みたいな生娘が野宿でもしたら回されますよ」
「回…される?」
「わからないならいいです。とにかく危ないってことだけわかってください」
「う、ん。わかった」

「仕方ない、オレと寝るのが嫌なら勇者さんは」
「…床で寝ろって?」
「いくらオレでも女性にそんなことはいいませんよ
 オレは野宿も慣れてるので床でいいですから勇者さんベット使ってください」
「え、でも」
「じゃあ一緒に寝ます?」
「嫌です!」
「チッ…じゃあそういうことで、早く寝ましょう」

先にお風呂に入れと言われ脱衣所に入り床に座り込む

(ニゲル?どうしたの)
「…アルバ」

ぽつりとそうつぶやけば彼がやさしく微笑んでくれてるような気がする

「イケメンって、みんなあーなのかな」
(あー…って、ロスみたいなってこと?)

ロス、そういえばそんな名前だった気がする。
アルバは物覚えがいいなといつも感心してしまう

「うん…なんていうか、女の子の扱いが慣れてる。っていうのかな」
(うーん…まぁ要領はいいけど…)

だいたいがふざけている言動や行動なのに、ここぞというときだけ
さっきみたいに真剣なふりをしてくる。
ふりなのかどうか、ぼくには判断できないのだけど

(…ねぇニゲル、なんでそんなにロス…戦士のことが気になってるの?)
「気になってるって…べ、別に何かあるとかじゃなくて!」
(ボクに隠し事できないのわかってるくせに…さっき戦士に見つめられて、)
「ちょっと!何の話!?」

ひそひそと話していたのに思わず大声を出してしまった。

「勇者さん?何大きな独り言言ってるんですか」
「な、なんでもない!ごめんなさい!」
「別にかまいませんが…もしかして一人ではいるのが寂しいんですか?
 なら一緒に入りましょうか」
「いえ、結構です。大丈夫です。なのでドアを開けようとしないで!!」

おもむろに周り出したドアノブを必死につかんで止めると
ドアの向こうから舌打ちが聞こえてきた
…この戦士いったい何回舌打ちしたら気がすむんだろうか

(認めた方が楽だと思うけど?)
「…認めるも何も心当たりがないよ」

誰があんなセクハラ魔人でボケでバリサンでドSでセクハラしかしてこない奴なんか!
確かにちょっと顔はかっこいいし、気遣いだってできるんだろうけど
どれだけそこがプラスでもセクハラですべてを台無しにしてる!本当に!!

(ニゲルがそれでいいならいいけど)
「…珍しく端切れ悪くない?」
(そう?でもボクは早く認めた方がいいと思うけどな…いつまでこのままじゃないんだし)

何、そう聞こうとすると、なんでもないよ
とアルバが先に反してきたものだから、それ以上は聞けなかった。


世の中の女性の大半は落ちてしまうんじゃないだろうか
何にってそれは――



(恋、か)
「何か言った?」
(何も言ってないから早くお風呂上りなよ)




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