魂の



「あれは…ギルティ・ジャスティス…?魔界最強といわれているあいつがなぜここに…」

ギルティさんの登場に動揺するディツェンバー
そんな彼を知ってか知らずかぼくを手放したギルティさんは一瞬で彼との距離を詰める
それに驚いたのか自身の技を繰り出すが、何事もなかったようにギルティさんに抱き着かれていた

「一目ぼれしましたダーリーーン!」

えーーーーーーーーーー!!!!!!???????

「一目ぼれ!一目ぼれです!!」

ディツェンバーに抱き着いているギルティさん
唖然としてうるディツェンバー
どうしたらいいのかわからず傍観するしかないぼくたち。
そんなぼくたちの背後では追ってきていた看守がなぞの解釈をしてきた道を戻っていった。
助かったんだけどなんだか納得いかない…

正気に戻り、叫びながらギルティさんに連続パンチを繰り出すディツェンバーだがすべてよけられている
挙句左腕をつかまれてしまった

「もうダーリンやんちゃさん!」
「うぉおお!はなせぇ!」
「もうシャイねー」

ギルティさんの腕を振りほどくとルキメデスに一度引くべきと声をかけるが
すでにルキメデスは紙一枚置いてどこかに逃げてしまっている。
頭を抱えて何かを悩んでいるのかと思っていると

「なんか疲れた…もう…帰る……」

それだけ言い残しギルティさんを背負ったままどこぞへワープしてしまっていた。

「えっと…」

ルキと顔を見合わせてから周りをぐるりと見回す。
ぼくたち以外全員倒れてしまっているわけで。

「ルキ、何があったの?」
「えっと…鮫島さんなら投獄されたニゲルさんを助けられるかな?って話になって
 ヤヌアさんに鮫島さんのところに連れてきてもらったらおじいちゃんがいて、鮫島さんぼろぼろで
 それにヤヌアさんが怒っておじいちゃんを攻撃したらディツェンバーがやってきて
 一度はヤヌアさんが勝ったかと思ったんだけど、気が付いたらロスさんと二人で倒れてたの」
「そう…か、なんだかわからないけどいろんなことがあったんだね」

説明してくれたルキに礼をいい、とりあえずロスの元へと歩み寄る。
意識はあるようだが体を起こすのは少しだるいようだ

「ロス、大丈夫?」
「勇者、さん?……自力で帰ってくるとか生意気ですね」
「ひどい言われよう!!!…いや、うん、自力ではないんだけど…そんなことより大丈夫?」

そう聞きつつ彼の体に触れようとすると
大丈夫です
とだけいい自力で起き上がってしまった
それに少しだけさみしさを覚えるが、自分で動ける程度ならよかったと思うことにする。
他にも地面に突っ伏していた面々がのろのろと起き上がり、今一度状況の確認をする

「なるほど、それで魂をぬきとれる魔法を探しているわけか」
「そうなんです、鮫島さんの友達にいませんか?」
「ふむ…そうだな…一人、いたな。魂をぬきとったりできるヤツ」
「ほんとですか!」

その言葉に希望が見えてきた。隣にたっているロスの顔を見ると
あまり大体的に出しているわけではないが、嬉しそうだ

「しかし、残念なことにそいつがどこにいるかはわからない
 魂操作なんて強力な魔法だ、利用しよとするヤツがたくさんいた
 だからあいつ自身はその魔法をあまりつかいたくなかった、だからある日姿を消した
 あいつの魔法は能力が強力な分、副作用もすごかった」

真剣に語る鮫島さんに無意識につばを飲み込む

「すごく









 肩がこるんだ」








「その魔法を使うとすごく肩がこるんだ」
「肩が…」
「そうだ。すごく、こる
 だからそいつはよく整体にいっていたんだが、そいつを利用していた組織に
 整体の領収書をもっていったら医療じゃないから経費じゃ落ちないといわれ
 利用されるのはもう嫌だ!といってどこかに消えてしまった」

思ったより話のスケールが小さい…!
このような展開には慣れてきたと思っていたのだが、全然まったく。そんなことはなかった。

「な、なにか手がかりだけでもないんですか?」
「うーんそうだな…」

ほんの少しでも何かあれば、やっと見つけた方法なのに!

「手がかりか…あいつは…ほかの友人たちに



 悪魔

 そう呼ばれていたな」
「あく、ま?」
「あぁ、何語かは忘れたがな、悪魔って意味の名前なんだよ」

ようやく手に入れた有力な手がかりだが
まさかあだ名だなんて…
どうしたものかと思っていると思い出したようにルキが声をかけてくる

「それはそうとニゲルさん、そろそろ魔界からでないとマズイよ」
「え?なんで?」
「魔界って普通の人の体にはあんまよくないんだよ、魔力があちこちにあるから
 このままだとニゲルさん、ヤヌアさんの魔力にミーちゃんが影響されちゃったみたいに
 人間じゃなくなっちゃうかもよ」
「え!」

それはゆゆしき事態だ!一刻も早く人間界に戻らないと!!

「大丈夫ですよ!勇者さんが人間じゃなくても愛しますから!」
「今言われてもうれしくないよ!!」
「じゃあ一回魔界から出ますか」
「あ…魂の魔法使い、どこにいるかわからないし、魔王のことも……いいの?」
「大丈夫ですよ、魔王も魔力失ってますし、すぐには魔力取り戻しませんよ」

そういうロスの言葉にそれもそうなのだろうか。と納得して、とりあえず人間界に戻ることになった

「じゃあ拙者たちはここでお別れでござるね」
「いろいろ有難うございます、じゃあルキちゃん、ゲートだして」
「うん」

そこで一つ、そういえばと思い出す

「そういえば、魔界だとゲートパワーアップしてぼく肉片になるんじゃなかったっけ…」

そういえばそんな設定があったと思いルキに確かめると明るい声で
大丈夫だよーと告げられる。

「片方が人間界にでてればパワーは半減するから、肉片にはならないよ!」
「よかった」
「まぁ、死ぬことは死ぬけどね。」
「全然よくなかった!!!!!!!じゃ、じゃあヤヌアさんの魔法で一回次元のはざまに行ってそこから…」
「拙者の忍術では無理です。魔界から入ったら魔界にしか出れないでござるし
 そもそも人を探知して飛ぶ術なので基本知り合いがいるとこしかいけないでござるよ」
「え……あ……」

つんだ…!
唐突もない事実に頭を抱えたくなる。するとぽんとぼくの肩を叩く手が…

「勇者さん、これはマジで魔物化するしか方法がないですね。」
「え、や、やだよ!そんな…」

目頭が熱くなってきた、こんな情けない事で泣きそうになるなんて!
するとそれを見かねたのか鮫島さんが

「まったく、しょうがねーな」

そういうや否や、少しだけ重力が重くなったかと思うと、先ほどまで居た森の中とは違う荒野に居た。
しかも目の前には城がある

「え?あれ!?お城!もどった!?鮫島さん!?どうやって…」
「ふっ…困ってるダチ助けるのに理屈が必要か?」

正直必要だと思うが、助かったので今回はそういうことにしておこうと思う。

「鮫島、拙者達がこちにいるとマズイでござるよ」
「そうだな、もどるか」

魔力の影響云々があるので戻ろうとするヤヌアさんたちだったが、ふと何かに気づいたように振り返る

「あれ?この感じ…」
「ヤヌアさん?」
「魔王…?魔王が…こっちの世界に来てる…」
「魔王!?」
「お前ら!急いだ方がいいぞ!」

いきなりそれまではじめてきた人間界にほえーっとしていたなんか全身肌色の人物が焦りだした

「知ってのとおりオレの魔法は千里眼と未来視!」
「初耳!意外とカッコいい魔法!正直ドリルだと思ってました…」
「ドリルはウチの長男が作ってくれたんだ!」
「子もち!?」
「そんなことより急げ!いま未来を見たが!もうすぐ、一人死ぬぞ!」
「誰か…一人…死ぬ?」
「オレは外見しか見えないから、名前はわからないが…




 なんか黒くて歯茎剥き出しで、どろどろしてそうな奴が…」
「誰!?なんでそいつをボクの仲間だと思ったの!?」
「いや、それが誰でも、とにかく魔王のところに行こう」

誰であろうと、助けられるなら助けたい、そう思い足を進めようとするとロスから制しがかかる

「勇者さん、わかってると思いますが…今オレたちが行っても何もできないかもしれませんよ
 一人魔王より強いかもなヤツもいますが、基本ヘタレなので戦力になりませんし。」
「そう、だね…でも、それでもいかなきゃ」
「…そこまでの意気込みならとめはしませんが…」

一歩近づいてきたかと思うと、左手をそっとつかまれる

「けがだけはしないでくださいね、もう嫌ですよ、あなたのあんな姿見るのは」

ロスのいうあんな姿、がどれをさしているのか、すぐに思い当たる。

「大丈夫、だよ。ぼくだってあれから強くなったんだもん。だから、大丈夫」

ニッ!と笑ってみせると、ロスも軽く笑い返してくれた

「よし、行こう!魔王のところへ!」







そう意気込んできたわけなのだが
ジュージューという食力をそそる音
おいしそうなにおいを漂わせる煙
金網の上では食べごろに焼けている肉
そのまわりに集まる人々

「バーベキューしてる!」

率先して肉を焼いていたアレスさんがこちらに気づき声をかけてきた

「ん?おう久しぶりー」
「なんで!?なんでBBQしてるの!?」
「なんでって、そりゃフォイフォイ妹のお祝いだよ」
「妹?」

フォイフォイさんに妹なんていたんだ…と思っていると

「おっ!妹って単語に食いついたね!」
「違うよ!!」
「妹といってももう12歳以上ですよ!」
「だから違うって!」
「妹さんが病気だったんですけど、一命を取り留めたんですよ」
「え!ホント!?それはよかった!ヒメちゃんもブジだったんだ!」
「ニゲルさんも、戦士さんとも無事会えたんですね、よかった」

そういえば彼女は自分の恋路もあるのに、ぼくのことをいろいろと気遣ってくれたんだった
一応、その…報告するべきだろうかと悩んでいると、さらなる情報が追加されていく

「しかも妹が弟になっちゃったと思ってたんだけど、実は身体取り替えた奴が女の子だったから
 妹のままだったんだって」
「ん!?」

どういうこと?

「でもフォイフォイさんが喜んでるのはそれより、たとえ身体が変っても
 また妹さんと一緒にすごせるのがうれしいって言ってましたよ」
「へぇ…ほぉ……んん???」
「ほら見ろよ、あいつのあの顔」

そういってアレスさんが指さす方向には笑顔に満ちたフォイフォイさんがいた

「ほんと…あいつのあんな笑顔初めて見たな…」

確かに………

「ちょっとまって!結局どういうこと!?」

今一度詳細説明を求めると、きちんと話してくれた
フォイフォイさんは長年寝たきりだった妹さんのために、ぼくたちを裏切ったこと
それなのに魔族にもいいように使われていたようでモンスター化されかけた妹さんと
魂の魔法使いがなんとか救い出したこと。
全身肌色の人が見たどろどろはどうやらそのモンスターのことのようだ
そして妹さんをモンスターにした魔族が男の子だと思ったら女の子だったということらしい。

「そんなことが…そして彼が…魂を移せる魔法使い…」

頭に包帯を巻いて民家の壁に寄りかかっている執事服の人をちらりと見やり
再びアレスさんに視線を戻す

「そういえばその元妹さんの身体にうつった魔族は?」
「あぁ…





 なんか魔王が連れてっちゃった」
「!?」

ぼくとアレスさんがその会話をしている時、
魂の魔法使い、トイフェルさんにロスが歩み寄っていた

「なぁ、頼みがあるんだ」

何も返事もせずにじっとロスを見つめ返すトイフェルさん。
彼がぼくたちの願いをかなえてくれるように祈って









 

[ 23/24 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -