爺さんと昔話

 

気が付いたら見知らぬ墓場にいた。
何が起こっているのかわからず呆然としていると、背後から声がかかる

(どこなのここは?何が起きた?なんだコイツは!?)

そう考えていた時、脇の辺りに鈍い痛みが走る、これは…

(この痛みかた…ゲートで飛ばされた時の痛みかた…どこかに飛ばされたの?
 このアバラの痛み具合…30アバラ―はいってる…ッ!/1アバラ―で50M計算
 ほかのみんなは無事なのかな…)
「オマエ大丈夫カ?ポンポン痛ムカ?」

謎の牛が話かけてくる。
すると牛の後ろからもう1人やってきたようだった
白髪に脳天がつるっぱげの、某海賊剣士みたいな恰好しているおじいさんだった

「どうしたそんなところで、何か見つけたのか?
 金か?金目のものでも見つけたか!?」

なんだこのじーさん最低か

「金目違ウケド、客カモヨ」
「客?なんか痛がってるようだが」
「ポンポン痛イミタイ」
「大丈夫か若者?死ぬのか?死ぬ前に聞きたいんだがその痛みは持病か?内臓は健康か?」

さ い て い か !

「ぼくの死後何する気だ!
 残念ながら健康ですよ、すこしアバラが痛むだけで」
「健康ならそれが二番さ!よかったな
 生きるならオレの村に来い、そして金を落とせ!
 魔界一の観光地、勇者クレアシオンの故郷オリジニアにな!」
「っ!」

勇者クレアシオンの、故郷…?
それってつまりロスの…

牛、ハセガワラくんとおじーさんについて森の中を歩く

「クレアシオンの故郷がこの先に…?」
「そんな質問するってことはやはり観光目的で来たんじゃなかったか」
「エ?ソウナノ?」
「まだまだだなハセガワラくん、彼の格好を見ればわかるだろ?」
「サスガ探偵小説好キ!」

それって何か関係あるのか…?

「ふふ、オレの推理だと
 彼は意気揚揚とサッカーにいったが混ぜてもらえず泣いて帰って迷子になってるのさ!」
「ちがう!」
「ソウダヨソレダトアバラ折レテル理由ガ」

そういわれおじいさんは気付いたようだった。
仲間に!?と言われたがそんな仲間はいない…!

「まぁいいさ、どんな理由であれオレの村に来いよ、うまくないけど酒もあるぜ」
「お酒まだ飲めませんよ、オレの村ってオジイサンはそこの村長とか、ですか?」
「いいや、オレは旅してたら偶然村を見つけただけさ
 その時にはもう誰も住んでなかった…
 これは金儲けできるかも!と観光地にしてみたが、場所が秘境すぎて誰も来やしねぇ
 ほら、着いたぜ





 クレアシオンランドだ!」
(うっわー!!!!!!)

これはひどい!これは行くらなんでもひどい!
こんなのがロスに、本人に知られたらやばいことになるんじゃないだろうか…

「ほら、そこに顔はめろよ、正面の鏡で自分が見えるぜ
 土産買うか?クレアシオンまんじゅう、賞味期限過ぎてるからおまけで胃薬つけるぜ!」

そう進められながらまんじゅうを手渡しで渡される。
正直いらない。
そしてほらみろよ、とおじいさんが言うので前方を見ると
ロスの写真?をお面にしたハセガワラくんがいた

「というか彼は何者ですか?牛の方」
「ハセガワラくんか?牛紳士だよ、知らない?牛って動物が魔力の影響でああなったのさ」
「牛紳士?」
「全裸に蝶ネクタイと靴下、紳士だろ?」

魔力に影響うけた動物はみんな変態になるというジンクスでもあるのだろうか

「なんだアトラクション系はお気に召さないかコノヤロー」

じゃあこれはどうだと言いながらおじいさんが荷物から出したのは
クレアシオンの日記帳だった
ロスの日記帳、本当にそうだとしたら彼の過去がわかるかもしれない…

「それ借りられますか?」
「2000マドル」

いきなり謎の単位を出された、魔界の通貨だろうか…?
金をもってないと素直にいうと唾を吐かれた

「お前のカーちゃんでべそ」
(低レベルな罵りうけた!!)

人の顔面に唾を吐きだした本人は金がないならようはないと背中を向けて歩き出してしまった

「さっさと帰りな、ただし!
 もうすぐ日が暮れるから奥の小屋で一泊してからな!」
(いい人だ!)

おじいさんがさって、一人残されたぼく

「そうかしまった…お金か……でも、お金を払えば手がかりを得られるんだ」

あの場にいたほかのみんなの状況も気になるけど、やっとこれたロスの故郷
ぼくはぼくにできることをやるしかない、とりあえず着替えよう

戦うつもりだったので通常装備しかなく、どうしようかと思いながら、おじいさんに言われた小屋へと入る
どうせ誰もいないのだと思い、タンクトップ一枚で寝ることにした。
パンツでも問題ないだろ。うん。
どうやら一応住める環境にはなっているようで、シャワーを浴びることができるようだ
胸部を締め付けていたさらしをはずし、浴室に入る

この一年で身体には切り傷が増えた、自分の身体ながら痛々しい
彼に散々小さい小さいと言われた胸も、戦闘するには少々邪魔になるくらいには大きくなったはず
だから日中はさらしで潰しているわけだが…

浴槽から出てタンクトップを着る
そして小屋の中にあるベッドに入り込み、目をつぶる
だんだんと意識が遠のいて行き、一日の疲れを取るために眠りに入る





気が付くと見覚えのあるような内容な街の中にいた
これは夢、だろうか
しばらく悩んでいると、背後からカラカラと何か軽いものを引きずる音が聞こえた
黒髪の少年がこちらに向かって歩いてきていた
もしかしてあれは…

そこで不意に目が覚める
夢…?そう独り言をつぶやくと横から答えが返ってきた

「む。起きたか」
「へ……うわぁぁぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

思わず色気の無い悲鳴をあげてしまった…
だか仕方ないでしょ!誰も来ないと思って寝て起きたらさっきのおじいさんが添い寝してたら
驚くでしょ!正直本当に怖かった時にキャアなんて悲鳴がでるわけないじゃない!!!!!!

ベッドから転げ落ちて壁まで後退する

「なに!?なんで!!?何してるの!!!!????」
「オレの魔法は土地の人や過去を見ることができる」
「なんの説明だよ!」
「オレがこの村の過去を知ったのも、この魔法の力だ
 過去を写真にうつしだしたりもできる」
「ぼっぼくになにかした!?」
「お前の過去を見せてもらった
 ユニフォームで1人墓場にたってるとか、怪しさのバーゲンセールだからな…
 それにしてもお前さん…女だったのか」
「うるさいな!!どこみるのさ!!」
「過去を見せてもらって、お前がクレアシオンの過去を知りたがってることと」
「無視すんなよ!!」
「その訳も理解した、まさか伝説の勇者が生きててお前さんと両想いとは…」
「そんなこと今はどうでもいいでしょ…!!!!」

まさかこのおじいさんにまでロスとのことを言われるとは思わなかった…うぅ…

「だからお前に過去を見せてやろうと思ったのさ」
「まさか、さっきの夢…?」
「そうだ、オレと夢を共有させた
 知りたいんだろ?クレアシオンの過去を」
「で、でもぼくお金が…」

さっきお金がないと言ったら唾を吐いてきた相手である。
なぜないとわかってるのにそんなことをしてくれるのだろうか

「バカヤロウ!困ってる人は助けるもんだろうが!!」

良い人だ!

するとおじいさんが布団をめくり、こいというのだが、正直行きたくない
流石にパンツで一緒にねるつもりにもならず、服を着り、少し距離を開けて布団にはいる

「うう…目がさえて寝れない…」
「そうか…」

そこから記憶がないが頭がガンガンするのでたぶん何かに殴られたようだ





再び先ほどの街並みにやってきた

「夢に入ったのか…頭痛い…こぶできてるじゃん…」

その時、一人の村人がぼくをすり抜けて行った
そうか…夢の中の人にはぼくは見えないし触れないのか

すると背後からざっくざくと何かを掘っている音が聞こえてきた
振り向くと先ほど何かを引きずっていた少年が穴を掘っていた

「ロス…」

扉の前で

「なんであいつあんなトコに穴掘ってるの?」
「おい、なにしてんだよお前…」

そんなロスに声をかける人物がいた
茶髪で肩に黒いジャージをかけている青年だ

「オレの家の玄関前で」

どうやらあの家は彼の家だったようだ

「何してるって――穴ほってんだよ、そんなこともわからないの?」
「それはわかるでしょ!WhatじゃなくてWhyだよ!」
「あー穴掘ってたのかーなるほどなー」
「わかってなかった!?」
「でもなぜオレの家の前に穴を」
「そりゃお前を落とすため…」

そこまでいってロスが少し考えるように口を閉ざしたかと思うと
一度も見たこともないぐらいの笑顔で

「君のためだよ」

とさも慈善行為のような顔で言いなおした

「そうかー悪いなー」
「何!?あなたバカなの!!??」
「で、お前はどこにいってたんだよ
 オレがわざわざ穴ほってやったのに」
「ん?何処に?気になるかいシーたん…いや!レオミチャル・クロスフィールド!!」
「誰だよ」
「残念だが親友のお前の頼みでも教えられないな…
 これは偉大なる計画の第一歩であり、世界の分岐点といえる
 オレたちの歩みは止め」

かっこつけながら歩いていた青年は、落とし穴の存在を忘れていたらしく、見事にはまっていた

「くそ!会話でオレの気をひき穴の存在を忘れさせるとは…
 しかしレオミッシェル・クロスフィールド!残念だったな!オレにはまだ秘策がある!!」
「残念なのはお前の頭だ」

するとポケットからだろうか、小さい笛を取り出しプピー!と吹く
何かくるのだろうかと思っていると
アールマンと叫ばれた人が青年の家の屋根に登場していた
なんだあれ

「ひとつ、人の優しさ併せ持ち…
 ふたつ、ふた…ふた…ふーんふふーん!」
(二つ目でつまってる!)
「みっつ!高所恐怖症!!」
「じゃあそこのぼるなよ!」

聞こえないとわかっているのに思わずつっこんでしまう
すると素直に待っていたロスがジャンプをしながらアールマンとやらをしたからスコップでぺちぺちと叩いている

「アールマンさんじょっ!やめて!下からつかないで!やめてよぉ!!」
「おのれ卑怯なり!ミーガン・クロスフィールド!」
(あ、さっきより埋まってる)
「くそー!バーカ!バーカ!お前、それが親に対する態度か!」

親、じゃああのアールマンとかいうのがロスの親?
この親からなんであんなクールな息子が生まれるのかが不思議でならない





親を屋根から下して青年の家に入ると、ロスが青年と父親を正座させていた

「はいそうです、ボクがお使いを頼んだだけです」
「重要な任務を任されてるって思われたかっただけです」
「お使いって?」
「研究の材料をちょっと…」
「最近いないと思ったらまたお前は変な研究をはじめたのか」
「変とは失礼な!今回は魔法の研究をしているんだ!」
「魔法?」

そうロスが聞くと、父親は嬉しそうに説明を初めた

「けがや病気を治したり、炎や水を生み出す不思議な力さ!」
「なんだそりゃ?そんな変なちからあるわけないだろ」

このときはまだ魔法はないのか…と思っているといきなりおじいさんの声が聞こえてきた

「よくみておけ」
「何その姿…」
「あぁ、これか…人の夢に入るとこうなってしまうんだ…そんなに見るなよ」
「照れるな頬を染めるな」
「それよりあっちだ」

そういうとおじいさんがロス父親を指さす

「あいつの魔法の研究が、この村を終わらせすべてを始める原因になる」
「え?それってどういう…」
「生み出してしまうんだよ――魔王ルキメデスをな」
「魔王が…いったいどういう…こ…」

再びおじいさんの方を見ると金髪の美少女がそこにいた

「誰だ!?」
「くっもう時間か…人の夢に長くいると姿が美少女になってしまうんだ…!」
「なんで!?」
「この先は自分の目で確かめてくれ…美少女に…なって…しま…う……
 なるわけには…いかぬ…」
「美少女になるとどんな弊害が!?」

しずかに消えていく美少女になりかけたおじいさん
再びロス達の方に目を向けると、少し話が進んでいたようだ

「まったく…お前は仕事もせず毎日変な研究ばかり」
「うぅ…」
「オレが稼いだ金で食ってるくせに」
「申し訳ない申し訳ない!
 しかしこの研究もあと一個材料があれば終わるんだよ!
 頼むよこれで最後にするからさ!」

そういう父親にグーパンを入れる小さいロス

「しょうがないな…いいよ」
「いいの!?」





その材料を取りに行くというので青年の家からでて森の中を歩く

「最後の材料はこの先の神殿にあるんだって」
「…いつも材料探しは1人でいってたのか?」
「そうだよ。ふふ、あれでしょ?さっき怒ってたのはこっそり研究してたことに対してじゃなくて
 仲間外れにされててさみしかったんでしょ?」

するとロスはすごくいい笑顔で
左手にナイフを、右手に石をもって

「刺殺or撲殺?」
「ノーセンキュー!




 でも仲間外れにしたかったわけではなくて、最初シーたんも誘っていいかって聞いたんだけど
 パパさんが、怒られるの怖いからいやです!っていうから
 だからしかたなく1人で行ってたのさ」
「ほかのヤツ誘えばよかっただろ」
「一番の親友を誘わずほかのヤツとこそこそしてたら、シーたん泣いちゃうだろ?」
「撲殺!」
「断定!?……そうだ、これをやろう。最近焼き物にもこっててね!」

そういってロスに何かを手渡す青年

「なんだこれ?なんのマークだ?」
「ラブ&ピースだバカヤロウ。オレが考えたマークで、仲間の証さ!カッコイイだろ
 オレもホントはシーたんと一緒に探検したかったんだよ」

するとロスは有難うと言いながら渡された丸いものをぺっと捨てる

「ほら、もうすぐ神殿だぞ」
「う、うん?」

青年が考えたマークをやらを見ると、見覚えのあるマークだった
これは、勇者証…?

二人に置いて行かれないように付いていくと、ゆいしょあるしんでんの入口にたどり着いた

「よーし!この奥に最後の材料があるぞー!」
「ところでさ、最後の材料って具体的になんなの?」
「え?わかんない。けど行けばわかるってパパさん言って――」

神殿に近づく、すると突然柱の向こうからナイフが出てきて青年の体を貫いた
口から血を吐く青年をよそに刺されたナイフが青年の左側へと引き抜かれる

「材料はこれさ」

聞き覚えのある声が聞こえる
柱から現れたのは

「ご苦労だったな、シオン」
「っお前!何してやがる!!ルキメデス!!!!」
「おいおい、親を呼び捨てかよ」

ギロリという効果音が付きそうなぐらいの眼光で父親、ルキメデスをにらむロス

「おっいいぞその目だ!魔とは憎悪の感情!負の力!!友達が殺されて悲しいだろ?
 もっと恨めよ!憎めよ!お前の魔の感情をこの「魔力ツクール君」が魔力に変換してくれる!

 …もっとかっこいい名前のほうがいいか…魔力暗黒…堕天使…」

とんだ厨二病である

「とにかくお前が最後の材料集め手伝ってくれて助かったよ
 理想的な形で魔の感情を作ることができた」

するとさきほどもっていたナイフをルキメデスに向けるロス

「なんだ?どうした殺すか?パパを殺すのかい?
 無理だよなーしってるよ、パパ知ってる。お前がやさしい子だって
 いつものケンカならお前はチョー怖いけど、命の取り合いなら怖くない」

そういいながら自らロスが向けているナイフに近寄っていく

「普段強がってるけど、ここぞを決められない優しい子だ
 晩御飯の鳥をさばけず逃がしちゃったこともあったなー」
「うるさい!オレは!!」

するといきなりロスの左半身が吹き飛んだ

「えっ」
「すごいぞシーたん!軽く魔法を使ってみたけどすごい威力だ!!
 あ





 死んでる
 まーいいか、きっかけはできた
 後は村のやつらをつかうか…この力があれば夢にまでみた世界征服も可能かもしれない
 …いや、むしろ世界を0から作り出すことも可能だ
 そうだ!そうしよう!!そしてその世界を魔界と名付けよう!!

 俺が魔界の王!魔王ルキメデスだ!!」

まるで子供の用に両手を上にあげて喜ぶルキメデス
そしてひとしきり喜んだかと思うと村へと戻っていく

ぼくは左半身を飛ばされたロスのそばに立つ

ロスが死んだ…?いや…この子はロスじゃなかったの…?
じゃあいったい…誰なの?ぼくが一緒に旅をしていたあいつは…

「勇者クレアシオンは誰、なんだ?」
「ぐっ……」
「!?」

うめき声が聞こえそちらを振り向くと、ルキメデスにナイフで身体を貫かれた青年が意識を取り戻したようだ

「シー…たん?」




―いまのが 魔法?パパさん なんで…?シーたん…

あ れ?さっきまで 血が たくさん 出て…痛くて 寒かった の に

いま は むしろ 暖か  い

なんだ これ…力があふれて くる

す ごい…いまなら なんでもできそう だ





じゃあ――



 

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