求めて

 

ある日、世界に異変がおきた
この異変は魔王ルキメデスが復活したに違いないと判断した国王は
勇者の子孫と思わしき75人を魔王討伐に向かわせた
各勇者には王宮兵士が1人づつ派遣された

まだ幼さを残した王宮兵士、エルマ・トリュウと
彼と共に旅している勇者、ライマン・オズ・ボーム(かなりヘタレ)
二人が平野を歩いている時の話だ

「旅に出て約1年…ライマンさんが戦ってるの見たことありませんよ、逃げてばかりじゃないですか」
「だからさトリュウ君、逃げてるんじゃなくて戦ってないだけだよ
 勇者の仕事ってなんだと思ってる?モンスターを倒すこと?違うでしょ?
 みんなの笑顔を守ること、でしょ?
 通りすがりの無害なモンスター殺してまわるなんて、勇者じゃないね!」
「はいはい、もう何回も聞いてますよ、そんなこといいながらライマンさんが
 誰かの笑顔守ってるの見たことないですけどね。





 レッドフォックスの噂、知ってます?赤いしっぽがはえてるそうで、いろんな村や町で
 人助けしてるらしいですよ」










「へっくしゅん!!」
「ニゲルさん、大丈夫?風邪?」
「ううん、たぶん違う…噂されてるのかなぁ…」
「最近人気ものだもんね!」

ルキと二人、ロスを助ける手がかりを探し旅をしだして約1年。
何も見つけられないまま、彼と別れてもう1年もたとうとしている。

そろそろ定期連絡の時期なので、今は城に向かって進んでいるのだが前方に緑の恐竜みたいなモンスターが居る

「なんだろう、あの色、懐かしいね」
「もう1年もたつもんねぇ」

そのモンスターの傍らに、一人の少年と、岩の上でおびえている子供が目に入った
ルキのゲートを使い、少年の元までワープする
間一髪、モンスターに潰される直前に少年を安全な場所へ突き飛ばすことに成功した

「うぅ…アバラが…痛い…」
「あ……有難うございます、その…大丈夫ですか?」

突き飛ばしてしまった少年がぼくの様子に気づいたのか声をかけてくれる
慣れているから、と返し、モンスターと対峙すべく立ち上がり、服に付いた砂を払う

この一年で、彼の手掛かりは何もつかめなかったけど、ぼくだっていろいろ成長した
モンスターにだって勝てるようになったし、よく男と間違えられるから服装だって変えた
といってもズボンがスカートになったぐらいなのだが…
後はニーハイのソックスと、腰にロスがつけていた赤いスカーフを付けているというぐらいだ

「ニゲルさん!子供たちは助けたよ!」
「ルキ、子供たちは無事?」
「けがはないけど、ゲートでおろしたからあばらにヒビは入ってるよ」
「なんてことしてんだ!!」

そう突っ込むと、だって岩の上からおろすの大変なんだもん!とぷんすこと怒られてしまった
そしてなぜか少年にサインを求められたのでそれに応じる。
するとぼくたちが助ける前にモンスターに潰されていた男性がヨロリと起き上がる

「トリュウくん!こどもたちを連れて遠くに逃げるんだ!」
「ライマンさん…忘れてた」
「さっきは油断したが…今度はそうもいかないぜ!モンスター!!」

そうかっこよく言い放った男性はなぜか左頬だけはれ上がっていた。
寝てた方がいいのではという少年、トリュウくんの言葉を無視して、単独でモンスターへと突っ込んでいく

「人には!!戦わねばならぬ!時がある!!!」

剣をモンスターに振り下ろす、だが皮膚が固いのか弾き飛ばされていた
そして再び殴り飛ばされるライマンさん
そんな彼の様子を見ていると、背中を叩かれ振り返ると、トリュウくんがあのモンスターについて教えてくれた

「あのモンスターは硬い皮膚に守られてます、狙うのは唯一もろい頭部です!」
「え…わかった、ありがとう…」
「なるほど!頭部か!!」

タフだなあの人
岩にめり込んだとおもったのだが、案外平気そうだった

「弱点がわかればこっちのもの!くらええー!!!!!!!」

といいながらブンブン剣を振り回すが、相手は2M超えのモンスター。届くわけもない。
三度繰り出されるモンスターの攻撃とライマンさんの間に入りそれを防ぐ

「もっと考えて行動しろぉおお!!!!!!!」
「なに!あの距離を一瞬で移動してライマンさんを助けた!?
 しかもツッコミながら!」
「解説はいいから君も手伝ってよ!!」

振りきれないとわかったモンスターが、ぼくを押し込もうと力を入れてくる
抑えてるだけで結構精一杯なんだけど…!

「いいぞ少女、そこなら届く」

ぼくに攻撃しているせいで頭部が比較的低い位置に来ていたモンスター、それに気づいたライマンさんが
弱点を攻撃しようと剣を構える。

「さっきはよくもやってくれたな!くらいやがれええ!!」

勢いをつけてモンスターとの間を詰め、剣をふるう
だがまだ届かない。

「もうちょっと屈ませて」
「無茶いうな!!」

無茶な注文に対してツッコミをいれると、力が緩んでしまったのか、剣がはじかれる
そして非難させた子供たちとルキの方へと向かっていくモンスター

(しまった!今から走っても間に合わない…!)

どうしたらいいかと考える暇もなく、子供たちを襲おうとしていたモンスターに何かが当たる
その衝撃で多大なダメージを受けたのか、魔界に戻されていった

「皮膚の上からあのモンスターが一撃で!?」

驚くライマンさんとは対照的な女性の声が聞こえてきた

「ふふふ、どうだい我が王国の科学力…近くまで来てるというから迎えに来てあげたよニゲルくん」
「この声は…アレ――」
「そう!我こそは!謎の天才科学者!エックス!」

ちっとも似合わないサングラスのブリッジをいじりながらそう高々と宣言したのは城のメイド長、アレスさんだった

「……アレスさん?」
「違う!謎の天才科学者エックスだ!
 そしてあそこで倒れてるのが最終兵器、ヒメンダムだ!」
「ヒメンダム!?」

エックスと言い張るアレスさんの後方に、見覚えのある銀色の物体が横たわっている
あれってもしかしなくても…ヒメちゃんの鎧?

「ヒメンダムって…というかなぜ倒れて…」
「うむ。ヒメンダムは国家の最高技術により神経接続を可能にしたんだ」
「神経、接続?」
「搭乗者の神経とCPUをリンクさせることにより、自由度の高い操作性を実現したのだ!
 しかし先ほどのようにロケットパンチを撃つと腕をもがれるのと同等の痛みが搭乗員にかかる」
「撃つなよ!お姫様に何させてんの!?」






瀕死状態のヒメちゃんをヒメンダムとやらから救いだし、一息つく

「ヒメちゃん大丈夫?」
「うん…ありがとう」
「もう無理して姫様が直接でてこなくてもいいんじゃない?」
「ううん…私の父が世界をむちゃくちゃにしちゃったから…少しでも力になりたいの」

けなげとはまさに彼女のためにある言葉ではないのだろうか
本来ならお城の中で戦いとは無縁の生活を送っていたはずの彼女なのに

「そんなこと言って、ホントはあの後勇者より給料いいってフォイフォイ君が執事になったから
 お城にいるのが恥ずかしいんだよねー」
「!?ななななっ!そんなわけ!ないでしょぉおおおおおお!!!!!」

相変わらずの激しい照れ隠し、先ほどのモンスターを一撃で沈めた攻撃で今度はアレスさんが攻撃されている





「さてと、じゃあオレらも子供を送っていくか…あれ?トリュウくんなにそれ」
「ふふふサインもらったんです!レッドフォックスの!」

レッドフォックスとはどうやら、ロスのスカーフが風によってはためいていたせいで付けられたニゲルの通り名だったらしい

「ニゲルって…ニゲル・フリューリングか?」






 

[ 15/24 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



 
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -