消失

 

「そんな…あっちが本体だったなんて…!」
「それは微妙に違うほが、俺たちは2人で1人、ただの双頭だ
 人間界で言うとおすぴーとぴーぴみたいなもんだ」
「それは違う!」

なぜか人間界事情に詳しいツヴァイにツッコミを入れていると
深刻そうな顔で戦士が話しかけてきた

「勇者さん…ちょっとこれはつっこんでる場合じゃ
 ないかもしれませんよ」
「おい!ヤヌアさんに何をした!?」

ヤヌアさんを心配したルドルフさんの顔面に膝蹴りが炸裂する
勢いがよすぎたのか、先ほど入ってきた穴へと叩きつけられた

「何をした?そうだな…わかりやすく言えば洗脳だな」
「そんな………やっくん…?」

心配するミーちゃんの声に反応したのかは定かではないが
こちらをゆっくりと振り向きながらヤヌアさんの口がゆがむ

「ふふ…ククク……
 ふははー!ごーざるざるざるざる!ごーざるざるざるー!」
「笑い声キモイ!」
「やっくんは ござる をちょい悪ワードだと思ってるんだ…」
「なんで…?」
「まったく…のんびりドッジボールなんてやってるから」
「え!?ぼくが悪いみたいな言い草!?」

まざってなかったのに…!
すると先ほど鎧の…ヒメちゃん?にぼこぼこに殴られていた女性がため息をつく
自身の得物であるハンマー…?をぐるりと回し肩に担ぐさまは様になっていてうらやましいぐらいだ

「まぁ手間が増えたが結局6対2だ、お前らが不利なのは変わってないだろ?ロリババア」
「待てよ!やっくんは操られてるだけなんだ!」
「そうか、そりゃ運が悪かったな」

友を守ろうと知るミーちゃんとそんなことは知らないと言わんばかりの女性
操られていようとヤヌアさんも魔族、十分やられる理由はあるのだが、なぜか釈然としない

「クキャ!ヤヌアさえいれば何人相手でも関係ないさ!」
「ヤヌアの魔法さえあればね」

ヤヌアさんの魔法?何か問題があるのだろうか、ルキも焦っている
それを合図に一斉にヤヌアさんとツヴァイのもとに走り出す戦士とミーちゃん
続くようにルキと女性とヒメちゃんも地面を蹴る
そんなことは気にしないとばかりにのんきに少しふらふらとしているヤヌアさんに話しかけるツヴァイ

「はぁ…今日ムリしたから腰がいたいんだ、帰りオンブしてくれよ」
「オンブよりもっと、楽にしてやるよ」

走っている戦士の左手のひらに黄色い球体が現れた、魔法、だろうか
ツヴァイはそんな戦士を視界にとらえたかと思うとうっすらと笑う、
もう少しで相手に手が届く、そうおもった矢先に、低い音と共に地面に小さなクレーターを作りだし

「「え」」

ツヴァイ、ヤヌアさん、ミーちゃん、ルキと戦士、5人が消えてしまった

「ルキたああああああああああああああああああ!!!!!」

壁に激突して気を失っているとばかり思っているルドルフさんがいきなり叫びだした

「そんな!バカな!ルキたんが!ルキたんが消え!ルキた!
 おええええええええええええ」
「ど、どういうこと…?」

壁に手を付きゲロを吐いているルドルフさんの背中をさすっていると
悔しそうな舌打ちが聞こえる

「転送魔法か!?どこに言った!どうせ城だろうなぁ!!畜生!
 ヒメちゃん!追う準備だ!」
「え?はい!」
「ちょっ!ちょっと!これは何が起きてるの!?」


自分を置いて進みだす物語に驚きつつも、このままでいられるわけもなく思い切って城に戻るという二人に声をかける

「城に向かうって?王が黒幕って…」
「千年前…」

予想外の方向から返答が帰ってきた
そちらの方を向くと民家の壁に持たれ、座っていたフォイフォイさんだった

「千年前勇者クレアシオンが己の身体を犠牲にし、魔王ルキメデスを次元の狭間に封印した
 あのバカな王はさ……それに憧れちまったんだ」
「え?……憧れるって…」
「魔王を封印する伝説の勇者を産んだ王…にさ
 王は魔族と手を組んでルキメデスを復活させようとしている、自分で封印するためにな」
「どういう、ことなの?魔族はルキが呼んだんじゃ…」
「考えてみろよお前は、ポップコーンを作ろうとして間違えて召喚用の鍋を使った?
 なんで千年間使ってなかったそんな鍋が、うっかり間違えるところに出てるんだよ
 考えるとするとだ理由を、誰かが使って、片づけなかったからじゃねぇか?
 あのちびっこが召喚したのは、たぶん雑魚モンスターくらいだろうな
 そうさ、オレたちは仕組――」

状況説明をしてくれていたフォイフォイさんだったが、今まで座っていたのに立ち上がったせいで
どうやら足がしびれたらしく盛大に顔からこけた

「仕組まれたのさ、オレたちは」
「めげないな!お前!!
 そんな唐突な話、証拠もなく信じられるわけないでしょ!?」
「はぁ?証拠?そりゃヒメ様さ」
「ヒメ、さま?」
「そこにいるだろ、あの王の娘」

フォイフォイさんが示す方に顔を向けると、女性と鎧の人がいる
鎧から白い煙が上がり、何やら機械音が聞こえる、しばらく見ていると、胴体部分が
モーター音と共に開いていくと中から金髪碧眼の少女が現れた

「お姫様が」

女性のと少しだけ話をしているようで、見守っていると、なぜか鎧の頭部が花瓶の上に乗っている
何してるの!?と少女が突っ込むと、申し訳なさそうに

「いや…ツヴァイたち追うためにさ、ヒメちゃんを移動特化フォームに変形させようとしたらさ…
 なんか途中からわからなくなって…」
「ちゃんと説明書よみました!?」
「いや…説明書とかなかったし…」
「あったでしょ!?ほら!ここにあるじゃないですか!裏の収納のところに!」
「しらんし、そんな収納知らなかったし」
「知らないことないでしょ!?勇者様の食べかけのクリームパンも入ってますよ!」
「ちゃうねん、それ私のちゃうねん」
「何が違うんです!?私クリームパン食べないですよ!?」
「ちゃうねん…ヒメちゃんが…気付かんうちに産んでんよ…」
「産むかぁ!!!!!!!」

何やってるんだあの二人。そう思っていると
腕の傷もいつの間にか回復していたフォイフォイさんが、お姫様と女性の間に割り込む

「おいおい、言い争ってる場合じゃないだろ」

するとお姫様は大きな目に涙をためだしてしまった。
なんで泣くの!?と思っていると鎧からとれた腕の部分の行動を手に取り
力いっぱいフォイフォイさんに向けて振り回す

「なっなんで勇者様をかばうのよぉ!」

顔面にクリーンヒット
一度では収まりきらないのか、なんどもなんどもガンガンと殴られるフォイフォイさん

「私だって!私だって!一生懸命!!一生懸命!!」

ガンガンと殴られ続けるフォイフォイさんと殴り続けるお姫様を見ながら
なんでぼくはここに居るのだろう。と疑問が襲い掛かる。
岩に座っていると、ちょうど近くに居たルドルフさんが何かをしているようだ
何をしてるのかと声をかけると至極真面目な声で

「ルキたんのローラ(ロリの放つオーラ)を探ってるのだが…
 ぷっつりと途絶えたままなんじゃ…」
「そこまで道を極めてたんですか」
「よし!」

いきなり女性が何かを決意したようなのでそちらに顔を向ける。
…今日は忙しい日だな

「こっから東に行ったところにある、機械都市タートルに向かうぞ!
 そこでヒメちゃんの修理用パーツを調達する!」
「機械都市…タートル?」
「名前の通り、機械のパーツとかが豊富にある町だ!一緒に行く?」
「え、あはい」

思わず首を縦に振ると、フォイフォイさんを殴っていたお姫様がこちらに来る

「あ、あのすみませんこんなことに巻き込んでしまって…」
「えっううん、ぼくの方こそ…一緒に行っても大丈夫、なんですか?」

相手は一応王族、本来ならこんなに気楽に話せない相手なのだ、無意識に緊張しているのがつたわったのか
そっと右手が彼女の両手で包まれる

「そんなにかしこまらないでください、えっと…」
「あっニゲル、です」
「ニゲルさん!私のことはヒメちゃんって呼んでください、みんなそう呼んでるので」
「はい、あっ…うん。よろしくねヒメちゃん」

お姫様と言えど普通の女の子、そう思いにこりと笑うと、なぜかキラキラした瞳でこちらを見ている

「あのっお聞きしたいことがあるんですけど!」
「え、な、に?」
「ニゲルさんは女性ですよね?」

そう聞かれて少し気分が重くなる
……そんなに女に見えないのだろうか
と思っていたら何やら違うようで

「あの、その…あなたの戦士さん…」
「?戦士が何か…」
「その戦士さんとその…お、お付き合いしてるんですか?」

少し興奮気味にそう聞かれて面食らう。
ぼくと、戦士が……なんだって?

「長い事お二人だけで旅されてたんですよね!?やっぱりそういう関係だったりするんですか?」
「そういうって…ぼくと戦士は別に何も…」
「またまた!そんな恥ずかしがらなくてもいいですよ!」

何やら一人で盛り上がっているみたいである。
どうしようかと思っているとフォイフォイさんが近寄ってきた

「あーヒメさんの悪い癖が始まったな」
「フォイフォイさん」
「あーまぁなんだその…気にしなくてもいいと思うぞ?女ってのはそういうのが好きなんだろ」

いまだに一人ではしゃいでいるヒメさんを見ていると、なんとなくうらやましい
自分には今までそんな話ができる相手がいなかったのもあるが
お姫様でもそういうのに憧れるのだろうか

「えっと、ヒメちゃん?あのね」
「はい!」
「ぼ、ぼくと戦士はただの仲間、だよ?」
「え…そう、なんですか?」

あれ、案外話分かってくれる…

「つまりニゲルさんの片思い!?」
「なんでそうなるの!?」

意味が解らない!と叫ぶと、やはりきょとんとされる

「えっ、でもでも…好き、なんですよね?」
「好きって…そりゃあ仲間としては好きだけど…」
「何々ー楽しそうな話してるじゃーん」

いきなり女性が話に入ってきた。…タートルに行く準備はもういいのだろうか
今までのヒメちゃんとの会話の流れと、戦士の関係を話していくと納得したのが一人うなっている

「うむうむなるほどなるほど…じゃあちょうどいい実験体がいるじゃない」

そういい、じと目でこちらを見ていたフォイフォイさんをこちらに押し込んでくる

「えっ何」
「なんだよ」
「たとえばだよ?フォイフォイがあの戦士さんと同じ事したらどう思う?」

フォイフォイさんが?イマイチイメージができないけど…

「その答えが、君の答えだよ」

答え…戦士にセクハラされるのがいいというわけではない、そういうわけではないのだけど
フォイフォイさんが同じことをしてくると思うと鳥肌が立つ

「何?気持ち悪い?」
「えっ!?ちが」
「いや、気持ち悪いだろ、セクハラは」
「そ、そりゃあ気持ちいいわけはないけど…」

戦士にセクハラされるとしても、鳥肌が立つことほどではない
女性の発言の意味を考えるとつまり…

「あ」
「「「あ?」」」
「あんな…セクハラ魔なんてどうでも!いいです!!」

絶対に認めない!認めたく、ない!

「は、早くタートルに行きましょうよ!ね!!」




「どうしたんです?勇者様」
「いや……いいおもちゃを発見したと…」
「お前本当に性質悪いな」




 

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