ロリ○○○

 

「ところで勇者さん、先ほどから静かですがどうかしたんですか?」

不意に戦士がこちらに声をかけてきた

「ん…ちょっと喉、痛めたみたいで…」

少しかすれた声でそう伝えると目を見張るスピードでこちらに駆け寄ってくる戦士

「それは大変です!すぐ直します!!!」
「どうしてこういう時だけ!?」

ぼくののどに手をあてて、ルキを治療したときと同じ淡い光を出す

(…あったかい)

喉の痛みが引き、戦士の手がのどから離れるのがどこがさみしい

(ってぼくは何を…)

自分で自分の気持ちが理解できずに戸惑っていて、戦士がぼくを見ていることに気づかなかった

「…つっこみのできない勇者さんなんて、目玉焼きのない卵焼きみたいなもんですもんね」
「無!?」

顔を上げると思ったより近くに戦士の顔があって思わず息をのむ
それに気づいた戦士の口がゆがんだと思うと、耳元に寄せられる

「戦っ」
「この間の事、思い出したんですか?」

心地よい低音が鼓膜を揺らす、それに思わず悲鳴が上がりそうになるのを必死にこらえると

「ひぁ…っ」

変な声がでた。
戦士も驚いたのかこちらを凝視してくる
羞恥から顔に熱が集まるのがわかる、どうしものかと思っていると
がれきに突っ込んだヤヌアさんが復活したようだった

「オレを無視して…拙者を無視して話してんじゃねぇよ…でござるよ
 最初は穏便に話をしようと思っていたが…これはちょっと…」

ゆらゆらと動く彼の額には血管が浮かんでいる

「痛い目、見てみるか?」

本体はいまだにがれきに突っ伏すしたままだが。
俗にいう幽体離脱である
自分の状態に気付いたのか息を吸い込んで

「分身の術っ!!」
「違う!戻ってきて!」

なんとか分身の術ができて喜んでいるヤヌアさんを倒れてる本体に戻して、ふと気づいたことがある

「そういえば…戦士、喉が治せるってことは、アバラも治せるんじゃないの?」
「え?治せますよ」
「治せるの!?じゃあ治してよ!!」
「というか勇者さん、まだアバラアバラ言ってるんですか?
 新しい単語覚えたての中学生ですか?言いたいんですか?」
「痛いんだよ!」
「じゃあ上目使いで涙目になって
 な、治してくれないとゆるさないんだからぁ!
 って言ってください」
「なんで!?嫌だよ!……戦士はそういうのが好みなの?」
「違いますよ?勇者さんだけです」

何も考えずに好みなのかと聞くとあっけらかんと何やらすごいことを言われた

「じゃなん…え?」
「……あぁ、勘違いしないでください、勇者さんがやるのを見…て笑いたいんですよ」
「勘、違いしないよ!どうせそうだと思ったよ!!」

全力疾走した後みたいに大きく鳴りやまない鼓動を鎮めようと胸元の服をぎゅっと握る
顔、赤くないといいな…

「そんなことより今問題なのはルキがあの魔族に捕まって人質にとられている事でしょう」
「へ?いつの間に!」
「さっきは取り乱したが安心しろ、もう危害を加える気は無いナリ
 お前たちが拙者の話を聞いてくれればそれでいいんだナリ…でござる
 でも、もし下手な抵抗をござったら…」

怪しい口調で話終わったかと思ったら胸の前に掲げていたルキを頭上へと上げる
あまり高くもないと思うのだが

「わぁぁあああああああ!高いー!!こわいー!!」
「こうなります」

泣き叫ぶルキ。可哀想でならないけど変に近づくと何をされるかわからない
ごめん……ルキ
隣に居る戦士がおもむろに両手を頭上あげ、片足も上げる

「わりとどうでもいい!」
「ひどい!!」
(なんだアイツ…悪魔か!)

びゃーと泣いているルキをなでて謝るヤヌアさんを見ると、いい人なのか悪い人なのかわからなくなってくる

(アルバは知ってるみたいだし…悪い人じゃないんだろうけど…)
「と、とりあえず話を聞こうよ…何か要求があるの?」
「さすが勇者様良識がある…実は先ほども言った通りお願いがあるのですよ
 私はもともと召喚されただけで、来たくて来たわけじゃないので
 魔界に帰ることには何の問題もないのですが…この世界に居た数日間で
 友人ができてしまいましてね」

その友人に別れを言いたい、とかだろうかと思っているとルキがとたとたと戻ってきてぼくの足に抱き着く

「ルキ」
「うぅ〜…怖かったよぉニゲルさん…」

よしよしと頭をなでるとヤヌアさんの後ろから小さな影が出てきた
…え、今までどこにいたのか…

「ネコ?」
「そう、ネコです。この世界に一人だった私の心を癒してくれたのですが
 さすがに魔界に連れて行くわけにはいきませんからね…
 というわけで私のお願いはコレです。私の代わりにミーちゃんの世話をしてほしい
 ほらミーちゃん、みなさんに挨拶して」
「ミー!」

可愛い泣き声である。ネコは嫌いじゃないし、可愛いからいいか、なんて考えていると
スッといきなり二本足で立ち、バリトンボイスで

「我が名はミケランジェウル・ローテルテリア!以後よろしくお願いする!」

ね……ネコ!?

「なんです…あのキモイのは」
「!…オイ貴様!いまニャンと言った!?」

ぼそりと戦士がつぶやいた声が聞こえたのか、ネコ、ミーちゃんが憤慨そうに声をかけてくる

「あぁ…悪い聞こえてたか」
「貴様キモイと言ったな!もう一度言ってみろ!…否!










 もう一度罵ってください!ご主人様!」
「ド変態だ!!」

ルキがミーちゃんに近寄りもふもふと頭をなでている

「ど、どういうこと?なんでネコがしゃべって?」
「おいおいお嬢ちゃん、なでなでよりスネを蹴ってくれたまえ」

ドM全開のネコだ…
ふと誰かに見られている気がしてそちらを向くと、戦士がこちらを凝視していた

「どうかしたの?」
「いえ…ただ――さっきのセリフ勇者さんも言わないかなと」
「どの台詞!?どれにしてもいやだけど!!」

戦士はいったいぼくにどうしろというのか

「ミーちゃんは」
「え、無視ですかヤヌアさん」
「もともと普通のネコだったんだ、しかし私の影響のせいかござるか
 少しずつ喋ったり二足歩行したりしはじめたんざる」
「ござるキャラ作るのやめろよ」
「ミーちゃん、ミーちゃん?」

ゴスゴスとルキに脛を蹴られているミーちゃんに声をかけるヤヌアさん
正直無視したいところだがそうもいかず

「ミーちゃん!?」
「オーイエス!」
「聞いて!ミーちゃん!!」

すごく気持ちよさそうである

「それじゃあここでお別れだ…いままでありがとうね」

その言葉で気づいたのかミーちゃんがこちらを向く

「急にこの世界に飛ばされて心細かった私と一緒に居てくれて、すごくうれしかった…
 魔界に帰ったら、たぶんもう会えないけど…ミーちゃんと過ごした日々は絶対に忘れないよ
 私のせいで普通のネコじゃなくなっちゃって…ごめ――」
「やっくん!
 なにを、謝ろうとしてるんだい…たしかに俺は普通のネコじゃなくなった…けどな
 やっくんの友達になることができたじゃないか」
「ミーちゃん…」

ほほえましい、これが男の友情、というものなのか女のぼくにはわからないけど
出会いはどうあれ、どういう経緯であれ、そう言い合える友がいるというのはすごくうらやましい
二人の友情に感動していると、何かを思いついたようにミーちゃんが口を開く

「そうだ!別れのあいさつのかわりにカカトでふんでくれないか?」

台 無 し だ !

「ハハ…冗談だよ」

冗談じゃなければ先ほどの感動を返してほしいぐらいだ。
スッとヤヌアさんに向けて拳を差し出すミーちゃん
ヤヌアさんもそれにこたえるように拳を握りお互いの拳を突き合わせる

「「またな」」

感動のシーン
見入っていると、不意にぼくの手と骨ばった手がぶつかる
そちらを見ると戦士もミーちゃんとヤヌアさんの方を見ている
戦士の手に視線を落とし、そっと触ろうとすると、少年のような女の子のような声が聞こえてきた
そう思ったらヤヌアさんの背後から黒い鋭い何かが彼の体を貫いた

「え!?ヤヌアさん!」

彼を貫いた黒い何が無数に出てきて人形のようにうなだれているヤヌアさんに絡みつく

「ダメだぜヤヌア・アイン…お前はよぉ、まだ帰っちゃダメなんだよ
 なんたってお前は―――」

声のする方に視線をそらすと
黒い丸い物体を肩に付けた幼女が笑顔で立っていた

「――選ばれた12人なんだからネ!」

この場にそぐわない明るい声が牢屋に響き渡った





 

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