まさか童貞喪失が兄貴相手になるとは。世の中ってわけわかんねー。
世の中の男子が羨むエロい姉ならぬエロい兄を持ってしまった俺は、もうその身体から離れられなくなっている。とにかくやばい。女とかと比べものにならない。いや女は知らないから比べられないけど。でもたぶん比べものにならないと思う。そのくらいやばい。

「なに、もっかいすんの?」

だからと言って俺たちの関係が変わったわけではない。気持ちがいいからとノリノリになった兄貴への複雑な思いはもちろん隠しているし、今まで通りの生活にセックスらしき何かが加わっただけだ。だけというには少し大きい変化だけど、その程度のもの。

「しねーよ淫乱」
「ワードセンスがオタクなんだよな」

間違っても彼女には言うなよ、なんて言葉に、今更作るつもりもないとかは言わない。

「まーでもしばらくつくんなよ。できないだろうけど」
「うるせ。俺の勝手だろ」
「俺さすがに彼女いる相手に抱かれんのやだから」

今はいいのかよ。何を考えてんだか全然わからない。たぶん何にも考えてないんだろうけど、図らずも心を読まれたみたいで気持ち悪い。

「俺に飽きるまで俺にしとけ」

昔からこいつは、俺が適当に乗っかればいいだけの欲しい言葉をよこしてくる。兄貴に従ってるようで、俺の意思が通っていることばかりだ。
だから、嫌いになれない。そういうところを好きになってしまう。

「ばっかじゃねーの」

せめて口先でくらい否定しないと、俺たちの関係は完全におかしくなってしまいそうだ。


(終)