「んっ、ふ、あ、やめ、ろよ」

持ちかけたのは俺だけど、これは予想外の展開だ。

「なに、こんなとこ気持ちいいの?」
「ひ、ぁ、それっ、だめ、っ……!」

場所はいつもの弟のベッド。ちょっとでも気分を盛り上げようかと持ち込んだバイブで、何故か弟に犯されていた。
なんでこんなことになったんだ。

いつも通り呼び出されて、そこにローションとバイブを持って行った。一人でやってもそれなりに気持ちいいし、ちょっと無理やり気分を味わってみるのも楽しそうかなという軽い気持ちで。
ベッドの下でさて慣らすかと動いていると、最近はほとんど目も合わせなかった弟がそれをガン見しているのに気づいて、なぜだかそこで興奮して勃たせてしまった。これがよくなかったのだろう。
俺は弟に引き上げられ、ベッドに寝かされ、ローションでぐちゃぐちゃになったそこを晒して完全に勃起させていた。かち合った弟の目も、情欲に染まる。やばい、と思ったあとは、なし崩し的に進んでいった。

「考えごととか、余裕ぶんなよ」
「あっ、は、よゆ、とか、ねーよ」

弟は突っ込んだバイブで的確に気持ちのいいところを抉る。自分でしてた時とは比べものにならない快感。

「っに、おま、上手すぎ……から、」
「……っ、んだよ、てめーがエロい身体なだけだろ」

奥を突かれる度に身体が跳ねる。やばい。きもちいい。

「スイッチ、いれるぞ」
「やっ、ちょっ、待って」
「いやだ」

息が止まる。振動とうねりが自分の中で響いて、わけのわからない快感を生み出す。

「あっ、はっ、だめ、これ、おかしくなる」
「なにやってんだよ、早くしろって」
「なに、って、なにが」

俺の咥えにきたんだろ、と低く囁かれ、それが腰に響く。こいつ、こんな声だせたのかよ。促されるままに弟にすがり付いて、震える手でズボンをまさぐる。俺を見て興奮したのか、弟のものも完全に勃ちあがっていた。

「おま、も、勃ってんじゃん」
「……兄貴が、エロすぎんだよ」

充血した粘膜が唇に触れる。いつにもましてどろどろになったそこから溢れる先走りを丁寧に舐めると、弟の太ももが震える。

「そ、ゆうの、いいから」

頭をぐっと押さえられ、そのまま唾液を溜めた口内にそれを迎えいれる。苦しいしマズいのに俺のも勃ったまんまで、それどころか快感を煽られる。やばい。なんだこれ。

「俺の、咥えて興奮してんの?」
「ん、ふぁ、ひが……」
「違わねーじゃん。咥えながら犯されて、興奮してんだろ」

熱に浮いたような弟の声に揶揄されて、思わず腰が揺れる。中も口も全部気持ちいい。それを弟に見られるのが、責められるのが、たまらなく気持ちいい。どろどろに溶けた脳みそは、快楽を受け入れることしかできなくなる。

「まじで、エロ過ぎ」

弟は好きに腰を動かして、俺の口内を犯す。わけがわからなくてめちゃめちゃに舌を動かすだけの俺の口の中で、弟のそれが弾けた。
広がる青臭さと、途中で引き抜かれて唇や髪にもかかったベタつき。それに釣られるように、俺も絶頂に至る。触ってもないのに溢れる精液に、頭がおかしくなりそうだ。



「大丈夫、かよ」

とりあえず玩具を引き抜いて息を整えていた俺に、弟が珍しく弱々しい語調で話しかけてきた。
どこかに行っていたと思ったら洗面台に行っていたようで、湯気の立ったバケツとタオルを持っている。

「拭いてやるから、寝てろ」

不器用なくせに優しいところは昔から変わらない。硬く絞られた熱めのタオルが顔に触れて、かけられた精液を拭き清めていく。

「悪、いな」
「いや、俺も悪かったし」

会話は上手く続かない。沈黙は居心地が悪くて目をつむると、肌に触れる暖かさが気持ちいい。
微睡んでいると、タオルが下肢に触れた。突然の刺激に、思わず目を開ける。

「そこはいいよ」
「なに、まだ気持ちいいの?」

反応したのは逆効果だったのか、弟は殊更丁寧にそこに触れる。静まっていたはずの熱が燻りはじめて、太ももに伝ったローションを拭かれただけで後ろがヒクついた。

「もう、いいだろ」

弟の手が離れる。期待した刺激が得られなくて、俺は潤んだ目で弟を見てしまう。

「っ、なんだよ」
「まだ、」

邪魔をしていたプライドが、期待に打ち負ける。
変なところで純朴な弟は俺の言葉の意味がわからないのか、きょとんとした目でこちらを見る。

「まだ、後ろ、あるだろ」

恥ずかしいのを我慢して俺がそう言うと、一拍間を開けて弟は意味を理解する。

「後ろって、ここ?」

精一杯余裕を取り繕った弟の声。指先が触れた瞬間跳ねる身体。こくこくと頷くと進んでくる指に、全身を支配される。

「とろっとろじゃん。濡れてるみたい」

指だけじゃ足りなくなる。理性なんてとっくに切れていて、快楽に促されるままに弟を煽る。

「そっ、そ、だから! はやく、いれろ、よ」

とろけた視線を送ると、弟は一瞬目を見開いたあと息を飲む。

「馬鹿じゃねーの」

震える声でこたえた弟は、俺のことを抱き締めなおして、切っ先をあてがう。

「自分でしろよ」

素直じゃなくても俺の命令には従う。昔からそうだった。わかりにくいそういうところが好きで、弟のそんなところを察してやれるのは俺だけだとも思う。

「んっ、ふ、ぁ、あ!」
「っ、!やば、これ」

崩れそうな腰を必死に動かして、弟を受け入れる。お互い余裕もなくなって、ただ快感を拾うためだけに動く。喘ぎと水音に溢れる部屋。二回目の絶頂は、ほとんど同時に訪れた。