ついこの間、アルヴィに誘われてパーティに参加した。
恐ろしく仕立ての良い服は着心地が悪くて、だけどいつもよりも着飾って綺麗なアルヴィのとなりに立てるのが誇らしかった。

アルヴィは偉い人への挨拶も流暢で、僕のこともそつなく紹介してくれた。だけど、年頃の女性に対しては口数の増えるアルヴィを見て少し寂しくなってしまった。

いずれアルヴィに恋人ができたら、僕は必要なくなってしまうんだろうか。今が楽しいからこそ、これからのことを考えると憂鬱になる。

「カイト、何か悩んでるの?」
「あっ、ごめん。ちょっとぼーっとしてただけ」
「そう?何かあったらぼくに言ってよ」

アルヴィは優しく微笑む。こんな笑顔を向けてくれるのは僕にだけ、なんて、歪んだ優越感を覚えてしまうのはいけないことだろうか。
そんなことを考える僕に、アルヴィは思い出したように話し出した。

「そうだ、カイト。このあいだのパーティで挨拶したシアラー家のご令嬢がいただろ?あの子、カイトにまた会いたいって」
「僕に?」

名前を言われてもピンとこず、僕は首をかしげる。
アルヴィが説明してくれた特徴を聞いても思い出せない相手が、どうして僕にまた会いたいなんて言うのだろう。

「彼女は次女だから特に家柄には関心がないらしくてね。それよりエルフである僕との繋がりが欲しいらしいんだけど……」
「ちょっとまって、アルヴィ、何言ってるの?」
「だから、彼女と付き合ってみたらと思ったんだよ」

言葉だけがすり抜けて、遅れて意味を理解する。
アルヴィが、僕に女の子を紹介している。それは、親切からきたことだとわかるのに、頭が理解するのを拒絶した。

「……カイト?」

僕を案じるようなアルヴィの声。

「アルヴィ、僕が、ほんとにその子のことを好きになると思ったの?」

言おうとしていなかった言葉が、口をついて出た。

「それは……綺麗な子だったし、たぶんいい子だろうから」
「君より?」

しどろもどろなアルヴィの言葉に、僕は反射的に聞き返した。

「あんな子が、アルヴィより綺麗? 優しい? そんなわけない! 君より、一緒にいたい相手がいるわけないだろ?」

僕の言葉に、アルヴィは首を振る。

「それは、ぼくと長い間一緒にいたからそう思うだけだよ。君を拾ったとき、まだ君は幼かった。刷り込みみたいなものだ」
「だとしたらそれの何が間違ってる? こんな綺麗な人と一緒にいて、好きになることの何がおかしいの」

そう言う僕に、アルヴィは虚をつかれたように黙り込んだあと、じっとこちらを睨んできた。

「それって、ぼくの見た目が好きってこと?」

何か言い返す前に、アルヴィは首を振って俯く。

「なんだよ、結局きみも他の人間と同じだ」

アルヴィはそう呟くと、くるりと踵を返して部屋を出て行ってしまった。
追いかけないと、と思うのに、僕の足は鉛のように重くてうまく動けない。