肉弾頭は気付く
「最近少し気になってる事があるんだけどよ」


練習の休憩中、オレは補給のゼリーを片手に切り出した。
大の男が3人、しかも黄色い目立つサイジャ姿で原っぱで並んで座り込んでる図は側から見たら実に異様な光景だろうよ。

両隣でボトルを口につけていた巻島と金城も「なんだ」、「なんショ」とオレに視線を向ける。


「最近、手嶋の様子がおかしい気がすんだよな」
「…あァ、田所っちから見てもそう見えるっつーことは…やっぱそうか」
「オレも、手嶋の様子は少し気になっていた」


この2人から見てもやっぱそうなのか。

オレがアイツの異変に気付いたのは先週くらいだ。
別に気温が高い訳でもねぇのに顔を赤くしてたり、変に慌てていたり、練習中急に焦ったみてーに速度を上げる事もある。
まさか体調でもわりぃのかと思って心配してたけど…どうやらそうじゃ無いと分かったのは、ほんの数日前の事。

偶然マネージャーの一花と手嶋が話しているのが見えた。
何を話してたのかはわかんねぇけど、2人とも笑いながら随分楽しそうに話していた。
手嶋は一花の面倒をよく見ている。一花もアイツの事を慕ってるし、自分が育てた後輩がちゃんと一年の面倒を見てる姿はオレも誇らしい。いい先輩してんじゃねーかよってその時オレは思わず口元を緩ませた。

けど一花が手嶋の元から離れた後、アイツはじっと一花の姿を目で追っていた。それも随分と穏やかな顔して。
手嶋と青八木が一年の頃から二人を見ているが、あんな顔をする手嶋は初めて見た。
思えば手嶋の様子がおかしくなる時は、決まって側に一花がいた。

ぶっちゃけオレは男女の恋だとか愛だとかそういうのには疎い自覚がある。悔しいからあの赤頭にだけはぜってー言わねえが。

…けど、手嶋の事は一年の時から見ている。そのアイツの姿を見て思った訳だ。
アイツは多分、一花に恋してんじゃねーかって。
 
それを巻島と金城にも話すと同じ答えが返ってきた。


「やっぱお前らもそう思うか」
「よくわかんねぇけど…多分間違いねぇッショ」
「オレもそういうのには疎いが……きっとそうだろうな」
「そうか」


それ以降、なかなか誰も口を開かなかった。
ロードとかパンの事ならわかんのに、こういう事はホントによくわかんねぇ。わかんねぇ…けどよ。


「オレァ、どうにかアイツらをくっつけてやりてぇって思ってる」


手嶋はオレが面倒見た可愛い後輩だ。そんなアイツに好きな女子がいるっつーなら応援してやりてぇ。その女子が一生懸命マネージャーやってる一花だってんなら余計にだ。


「いいのかよ、ンな事して手嶋の練習に支障が出たらどーすんショ」
「そうなったらまた根性入れ直してやるよ!けどよ、手嶋はそんくらいで練習の脚を緩めるヤツじゃねーよ」
「ああ。オレも田所と同じ意見だ」
「クハッ…甘いねぇお前ら。…まあ、オレも同じだけどよ」



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