ワイの気分は今、これ程になく絶好調や。
今なんて事あらへんて顔を繕って、いつものようにフツーに歩いとるこの廊下をスキップでもして渡れそな気分や。まあせんけどな。そら今ここ歩いとる生徒たちの注目も浴びて目立つやろけど目立つんやったら自転車とかカッコエエんで目立ちたいわ。しかしこんなに気分がええと周りの風景もなんやキラキラ輝いて見えるわ。こりゃ今日の部活も絶好調やろな、あんの嫌味なスカシ泉もムカつく田所のおっさんもブチ抜けそな気がする。目に浮かぶようや、ワイの速さに圧倒されて2人の悔し泣く姿が!

今朝のニュース番組の最後でやっとった星座占いのランキング最下位やったけど、ありゃきっとなんかの間違いやな。やっぱ占いなんてアテにならんわ、そもそもそんなもんワイは信じとらんのや。運なんて自分で掴み取ってなんぼやろ。
なんやったっけ、確か今日は期待通りの結果にはならず?期待しすぎはNG?みたいな事をアナウンサーの姉ちゃんが言っとった気ィすんな。ま、信じとらんけど。

つーか!期待せん方が無理やで!あんなん、男なら誰だって期待するやろ!

あれは今朝、朝練終えて教室に来てすぐの事やった。


「あの…鳴子くん」

そうモジモジしながら声かけてきよったんは同じクラスの三郷穂花っちゅー女子やった。入学してから話した事はあんまあらへん。軽い挨拶とか、そんなん位や。
三郷は大人しゅうてクラスでも目立たん方の女子や。けど顔とかはなかなか可愛い方で、男子がよく「三郷は意外と可愛い」て話してんの聞こえるし、ワイも正直なかなかかわええと思っとった。
そんな三郷が、なんや恥ずかしそうに顔赤くしてワイの前に立っとった。「どした?」と声かければこれまた恥ずかしそうに「あのね」と小さく言って、

「…ちょっと、話したい事があるの…。ここじゃ恥ずかしいから……お昼休み、校庭の外れの花壇にきてくれないかな?」

そう言うと三郷のほんのり赤かった柔らかそーなほっぺは一層赤みを増した。

ワイは思った。あ、こりゃ告白や、て。漫画とかドラマでよう見るようなシチュエーションや。女子が顔赤くしながらいじらしくモジモジしながら男に「話がある」なんて、これが告白と違かったらなんや、バカ高い絵かツボでも買わされる位しか思い浮かばへん。けど三郷はそんなんする女子やない、なんとなくそう思た。
何よりワイは超絶カッコええからな!三郷みたいにワイに惚れとる女子は隠れとるだけできっといっぱいおるはずや。せや、ワイはシャイで控えめな子にモテるんや。……多分

今朝の事を思い出しながら校舎の外へ出て、いつも飯食ってる中庭を突っ切ってしばらく歩くと三郷に指定された校庭の外れにある小ちゃい花壇が見えてきた。こんな端っこの方まで来る奴はおらん。ワイも入学してからここまで来た事は多分無い。今もここにおるんはワイだけで、遠くに校庭ではしゃぐ生徒の声が聞こえるだけで静かな場所や。なるほど告白すんのにはピッタリな場所やな。

しかしここの花壇は手入れがしっかりされとる。この小さい花壇に丁度ええサイズの小ぶりな花が色んな色を咲かせてなかなか綺麗やった。一体ここは誰が手入れしとんのかな、と思ったすぐ矢先にワイの疑問は解決した。

「あ、来てくれたんだ」
「おう。お待たせやで!」

ひょこっと花壇の奥から三郷が顔を覗かせた。その手には随分大きなじょうろがある。けど中身は入っとらんのか軽そうやった。

「今花壇の水やり終わった所なの。少し待ってて」

またパタパタ走って三郷は花壇の奥へ行ってしもうた。けどすぐにまたパタパタ足音立てて「おまたせ」ってワイの側に駆け寄ってくる。

「えっと…あのね、話したい事っていうのはね……」

いよいよやな、三郷はどんな告白してくれんやろなー、あ、肝心な返事考えてなかったわ!三郷の事は可愛いしええ子や思うとるけど好きかは正直わからん。そんな曖昧な感じで付き合うのは女子に対して失礼やし…何よりワイは今自転車の事でいっぱいや。
…三郷には可哀想やけど、正直にこの事を伝えよう。

「鳴子くん、田所先輩とよく話してるよね…?」

は?
なんでオッサンの名前が出てくんのや?三郷はワイが好きなんやろ?
動揺しつつもまあなと答えると三郷のほっぺが赤うなった。

「あ…あのね、私、好き…なんだ」

おー、キタキタ!真っ赤な顔して切なそうな顔して、正に女子の告白やな。
オッサンの名前が出たとかどうでもエエわ。緊張してついついうっかり言い間違えただけやろ、そうに決まっとる!
いやぁモテる男は辛いで…こんな緊張して顔真っ赤にして勇気振り絞って告白してくれたんに、断らなアカンのやからな……
「すまん」、そう言おうと口を微かに開いた。

「その……田所先輩の、こと」

思わず、「ハァ!?」ってデッカい声が出てもうた。ついでにウンコちびりそうになったわ。

「田所…て、オッサンか!?あの熊みたいなオッサンの事か!?」
「うん…」

ぽっと三郷のほっぺがまた色付く。ぽってなんや、ぽって!!オッサン相手にぽって!!
よりによってオッサンて!スカシ泉ならまだともかく…いや、アイツでも嫌や!
しかも三郷が好きなんはワイやなくてオッサンで、しかもわざわざこんな紛らわしい事して伝えてくるってなんやねん!朝の占い大当たりやんか!!

「それでね、田所先輩の練習、見たいなって……鳴子くんに相談してみようって思って」

これの相手が小野田くんやったら協力したろ思うたかも知れん、「小野田くんはアニメのことばっかやからなーしゃーない協力したろ」ってモヤモヤしながらも言うたかも知れん。けどオッサンはアカン。ワイが嫌や!

「嫌や」
「え、なんで…?」
「嫌なモンは嫌や!オッサンはアカン!!」



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