御伽噺U
【ある雪の降る季節のことでした。
余所者は今日もウサギと遊ぼうと思い、待ち合わせの丘の上へやってきました。
けれどそこにウサギの姿はありませんでした。
何度も太陽と月が現れたり、隠れたりしても、ウサギはやって来ませんでした。
余所者は悲しくなって泣きました。ウサギに嫌われたのかもしれないと。
少年は何度もウサギに会いたいと願いました。
余所者が目を覚ました時、目の前には鞭を持ったお兄さんが立っていました。
鞭のお兄さんが言うには、ここは『牢獄』と呼ばれる場所。
ウサギのいる場所を教えて欲しいと頼むと、鞭のお兄さんは一つの『牢屋』まで連れて行ってくれました。
そこにはあのウサギがいました。
ウサギは何度も帰れと余所者に言いましたが、余所者は何度も首を横に振りました。
でも結局は鞭のお兄さんに牢獄から出されてしまいます。
余所者は何度もこの牢屋を訪れました。訪れては楽しい話を、ウサギにいっぱいしてくれました。
暗い牢屋でも、ウサギにとって余所者の話は唯一の楽しみでした。余所者が来てくれるのが楽しみでした。
しかし、ある時から余所者は来なくなってしまいました。
ウサギは心配で鞭のお兄さんに尋ねてみるも、笑顔で何も答えてくれはしませんでした。
そしてやっとこの牢屋を訪れたのは、余所者ではなく、『帽子』が特徴的な男でした。
帽子の男は暗い牢屋から、ウサギを助けてくれたのです。ウサギは帽子の男に感謝をして一生彼のために生きると誓いました。
そしてやっとのことで地上に出ると、そこにはウサギが会いたかった『余所者』がいました。
そうしてウサギは帽子の男と一緒に働き、余所者と一緒に過ごす事が出来るようになりました。
ウサギはもうひとりぼっちではなくなったのです】