迷宮U


【ビバルディの部屋】



「あ、あの....女王陛下....」


「ふむ...ピンクも似合うな」


「私はさっきの黒の方がいいと思うんだけど....ねえ!次はメイド服なんてどうかしら?」


「アリア....あの、そろそろ....」


「「お前/あなた は黙って ろ/て !」」


「....はい」



運び屋は女性二人に圧倒されるように、反論の言葉を呑み込んだ。そしてアリスと一緒にビバルディの元へ来たことを(少しだけ)後悔した。

あちらこちらに置かれた大小様々な人形に、レースの天蓋つきのベット。ハートが装飾されたこの部屋は、冷酷なことでも知られているあのハートの女王ビバルディの部屋だ。
仕事で依頼されていたものを届けに来たのだが、部屋に通されると二人に着せ替え人形のように、次々と女性用の洋服やらドレスやらを着せられた。(そして現在進行形でもそれは行われている)



「ほら、次はアリスの案でメイド服だ」



ビバルディが胸の前で掲げたメイド服を見て、顔が引き攣ったのが自分でも分かった。メイド服というよりは、ゴスロリに近い。その上丈も短い。



「とても、可愛らしい....ですね」



笑おうと努力はしてみたものの、絶対に声が震えていたと思う。
しかしビバルディは満足げに頷くと、早速運び屋の服を脱がしにかかる。



「そうであろう?ほら脱いだ脱いだ!」


「ぁぁ....」



抵抗も虚しく脱がされていくドレス。



(........そろそろ開放してくれませんかね........)



窓の外を見て思う。既に2回時間帯が変わっている。そろそろ眠たくなってきたのだ。



「眠そうじゃのう、名前」


「え...?」



ビバルディは気がついていたのか、目を細めて笑った。



「今はこの位で勘弁してやる。客間を貸してやるから少し休むと良い」



今“は”ということは、いつかはまたこの着せ替え人形ごっこに付き合わなければいけなくなるということか。運び屋は苦笑いを浮かべた。



「それでは、お言葉に甘えて」


「ああ。その間に妾たちはお前の次の衣装を考えておくとする」


「....楽しみに、シテマス....」



出来れば懲りごりなんですが。



(....というか、俺の服返していただけませんか?)






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