お茶会W
「ところで、お前たちも早く結婚しないのか?」
ブラッドの言葉に、唖然とするアリス。
「名前もエリオットも男でしょう?恋人ならまだしも結婚なんて....」
アリスのいた世界でも同性愛者は存在していた。しかし世間の目を気にしてか、結婚までいく人々はひと握りほどだった。
その上エリオットはマフィアのNo.2で,運び屋も領主という立場だ。そういった立場上世間の目などを更に気にするのではないか。
だがさすが不思議の国。そんな常識は簡単に破られる。
「何言ってんだよアリス。確かに子供は出来ないけど、結婚は出来るぜ?」
な?とエリオットが問いかけると、隣からはそうですね、との返事。
「なのに名前ときたら、婚約すらしてくれないんだぜ?」
「俺とエリオットは領土が違いますから....結婚しても引越しをしたら、もう二度と会えなくなる可能性もありますし....そう考えると結婚なんて....」
「別に帽子屋の領地に運び屋の領地を合体させればいいじゃねぇか」
「嫌です。それは格下の運び屋が格上の帽子屋の傘下に入ることを意味するんですよ?....そんなの、俺のプライドが許せません」
運び屋が不満げに唇を尖らせると、エリオットは悪かったと謝る。
「運び屋って、そんな大きな組織なの?」
「ああ、一応私達と同業者扱いされて、同業者(私達)の中では二番目に大きな組織だ」
アリスの問いにブラッドが答える。
「だから一番大きな帽子屋よりは俺たちは格下扱いになってしまうんです。まあマフィアではないので安心してください」
「そんな謙遜せずとも、業績で見れば私は同等だと思っているんだがね」
「勿体無いお言葉です。....さて、」
カチャリと小さな音を立ててカップがソーサーに戻される。
「もう行くのか....?」
「すみません、エリオット。今日は仕事でここにお邪魔したんです。次にクローバーの塔に行かなくてはいけないんです。会合用の資料を届けなくてはいけなくて」
「そっか....じゃあ次に会えるのは会合の時だな!」
「ええ。会合が終わったら遊びに行きましょう。どこに行きたいか考えててください」
席を立ちブラッドと一言二言言葉をかわして、運び屋は屋敷から出ていった。