お茶会V


「本当に仲がいいのね」



アリスは運び屋からべっとりとくっ付いて離れないエリオットを見て苦笑を浮かべる。
ウサギ(エリオットは否定するだろうが)は懐くと人から離れなくなる動物なのだろうか。ストーカー紛いの白ウサギが頭に浮かんだ。



「当たり前だろ!何ていったって名前は俺の恋人だからな!」



あっさりと暴露された衝撃の発言にアリスはティーカップを落としかけた。運び屋はエリオットの言葉に微かに眉を動かしたが、いつもの微笑は変わらず。



「え....名前、あなたって性別は....?」


「男ですよ」



エリオットの頭を撫でながら答える。それにあわせてひょこひょこと動く耳に興味をそそられるが、こらえるべきだとアリスは心の中で念じる。



「どれだけ仲良しかっていうと、アリスとブラッド、俺とブラッド並に仲がいいんだぜ!スゲー仲良しだろ!」


「「....」」



全く二人の話を無視して話題を突っ込んできたエリオットだったが、意外にもこの話題に食いついてきたのは、ブラッドの方だった。
紅茶好きの彼が雑音を立ててカップをソーサーに置いたことにより、ご乱心であることが見てとれた。



「なぜ私とお前の親密度が、私とアリスの親密度と同じにされる?ふざけるのはその味覚だけにしろ」



ピリピリと刺すような殺気が痛い。エリオットもやっと自分の失言に気がついたのか、フォローの言葉を見つけようとしていた。



「エリオット、比べる対象が違うでしょう?あなたがブレッドさんに向けているのは敬愛であって、アリアがブレッドさんに向けてるのは別のものでしょう?つまりブレッドさんが二人に向ける情の種類も変わってくるんですよ」



運び屋はニコニコと笑いながらエリオットの頭を撫でる。ブラッドに怒られて垂れ下がった耳も半立ちになった。



「そっか....アリスはブラッドに愛情向けてるもんな!だからブラッドもアリスに愛情向けるんだな!それに俺は名前に愛情向けてるから、ブラッドには敬愛を向けてるんだな!」



何故か感動したように目を輝かせるエリオット。



「ということは...アリアもブレッドさんも恋人同士何ですか?」



「あ、ブラッドとアリスは結婚してるぜ? ちょうど引越しのあった時間帯より300時間帯前に挙げたばっかりだ!」



何故かエリオットが自分の事のように自慢する。突然のカミングアウトに、アリスはまたもやティーカップを落としかけた。
すると運び屋はキョトンとした表情になる。



「え?俺呼ばれてません。というか招待状すら....」


「名前はハートの国にいなかっただろ?」


「ああ、なるほど」



エリオットの説明に運び屋はポンッ、と手を打った。




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