若さ短しじゃれあえよ青年

 昔から、掴みどころのない友だとは思っていた。そんな星雨が、満面の笑顔とは言い難い、だが決して不機嫌ではない、何か企んでいるような表情で、諸葛誕に抱きついてきた。
「公休、チョコをくれ」
「空腹なのでしたら、食堂にでも行ってください」
 星雨が唇を尖らせ、明らかに拗ねた顔をする。
「何を言っているんだ、今日はバレンタインだぞ。友チョコを用意してしかるべきだ!」
 そう言い、星雨はカバンからチョコを取り出した。デパートの催事場ででも買ってきたのだろうか? 諸葛誕が聞いたこともない、おしゃれなブランド名が書いてある。
「ほら、公休が用意してくれた友チョコと俺の友チョコ、一緒に半分こしようじゃないか」
 その提案を聞き、諸葛誕は固まってしまう。諸葛誕は、チョコレートを用意していなかったのだ。
「いや、その……申し訳ないのですが、チョコを、用意していないのです」
 星雨は再び笑顔になる。そして諸葛誕の手を取り、更なる笑顔になる。
「じゃあ、食堂で何か買ってくれ。豪華な放課後だな!」
 元々、諸葛誕は星雨を友人の中でも特に強引だと思っていた。そして、今日はその感想を痛いほどに噛みしめている。
 結局、諸葛誕が飲み物を奢り、星雨が買ってきたチョコを二人で分ける。随分と良いもののようで、量も多く味も良い。何より、箱が洒落ている。
 諸葛誕からしてみれば、なぜ星雨が突然こんな事をしてきたのかわからない。確かに今日はバレンタインだが、バレンタインに男二人でチョコを食べる意味が分からない。その疑問が諸葛誕の顔に出てしまったらしく、星雨は愉快そうに笑う。
「理由なんて、俺が公休の事を気に入っているからに決まっているだろう」
 小さなチョコクランチを一つまみ、星雨が諸葛誕の口に押し込む。その瞬間、諸葛誕の顔が首から耳まで真っ赤に染まった。


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