憧れの友

 先ほどまでは顔を赤らめた女生徒にそわそわと浮つく男子生徒で一杯だった教室も、今は私と甄姫様の二人きりだった。生徒会長の曹丕様と帰られるらしいが、生徒会会議が長引いているらしく、待ちぼうけとなっているらしい。私はそんな夕方の教室で、うっとりとしながら甄姫様の横顔を眺めていた。青色が似合う甄姫様の横顔にかかる夕焼けの光は、甄姫様のお美しさをなお引き出している。
「……先ほどから、なぜ貴女は帰られないのかしら? 意中の相手でも待っていますの? 先ほどから同級生の私の顔をみるばかりで……」
「バレンタインの夕日に照らされる甄姫様の顔など、滅多にみられるものではありませんわ。それに、甄姫様はお時間を持て余しているように見えますので」
 恐れることなく、本音で答える。その美しさゆえにともすれば冷酷にも見える甄姫様だが、意味もなく他者を虐げないことを私は知っている。だから、今日という日に私はこうしていられるのだ。
「はぁ……お好きになさい。我が君が戻ってくるまで暇であることは事実ですし、話し相手にしてあげてもいいわ」
 必死にほほえむ。甄姫様の気品に気圧されないように、自分の思いを真っ直ぐに伝える為に、私はほほえむ。
「では、私たちは友ですね」
 そう伝えて、甄姫様に相応しいものをと必死に考え、用意していたチョコを差し出す。一瞬だけ虚をつけたようだが、すでに普段の表情に戻ってしまった甄姫様は、そのチョコを受け取り妖艶に笑いだした。
「友で、満足なの?」
「曹丕様には叶いませんから」
「そう、聡明なのね。じゃあ認めてあげるわ。星雨を我が友として」
 私を飲み込むかのように妖しく光ったように見えた、甄姫様の瞳。私は、世界一幸せです。


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