小春日和の涙雨

 悲しんで慌てている諸葛誕を見て喜んでいる星雨は、その状況だけを抜き出して考えるのならば、ずいぶんとひどい人間なのかもしれない。だが、例え誰かに己の行いがひどいと指摘されても、星雨は思わずはにかんでしまうのだろう。
 突然の雨に濡れ、服に染みが出来てしまうと慌て、軒先で雨宿りをする諸葛誕を見つめ、同じ軒先で雨宿りをしていた先客の星雨は手巾を差し出してほほえんでしまった。礼を伝えて手巾を受け取るやいなや、慌てて服を拭う諸葛誕は髪が濡れて乱れることに気を払う余裕もないようだ。そのような諸葛誕の様を、星雨は幸せそうに笑って眺めている。自らも突然の雨に降られ、慌てて雨宿りをしているところだと
いうのに。自らが置かれた状況すら忘れているかのように、幸せそうに諸葛誕を見つめて、惚けている。
「もう、雨は止んでしまいましたよ。諸葛将軍」
 星雨の声に諸葛誕が空を見る。暗雲は既に去り、小春日和の到来を告げるように穏やかな陽射しが差し始めていた。
「すまない、助かった。手巾は、洗ってから返す」
 濡れた手巾を慌てて仕舞おうとする諸葛誕の手を星雨が掴む。このままで構わないと穏やかに伝える星雨とは対照的に、諸葛誕は思わず顔を真っ赤にしてしまったようだ。


4/40

*prevnext#
Back to Contents
しおりを挟む



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -